概要
「知ってる?」恋人の骨壺の中で青い金魚が跳ねた「人類は魚だったんだよ」
「わたし、青い金魚を造りたいの」
そう語っていた私の恋人は肺から水媒花を咲かせて死んだ。
火葬のあと、骨壺を確かめると恋人の骨は青い金魚に変わっていた。死んだはずの恋人との奇妙な日々。水たまりで溺れるような怠惰な幸福。頽廃の愛。だが、四十九日が経とうかというころ、金魚は段々と衰弱していく。
愛するひとを二度も失う恐怖のなかで私は、恋人がいつだったか「死んだら故郷の湖に還るの」と話していたことを想いだし、恋人の故郷である四国へとむかう。
だが、そこで彼女の恋人を名乗る男と逢って――――
「ねえ、人類は元々魚だったんだよ」「だったらどうして、私たちの祖先は海を捨てたんだろう」「それはね」
死んで金魚になった恋人と青き葬送の現代幻想
カクヨムコンテスト10【短編】
現代ドラマ・文芸・ホラー
そう語っていた私の恋人は肺から水媒花を咲かせて死んだ。
火葬のあと、骨壺を確かめると恋人の骨は青い金魚に変わっていた。死んだはずの恋人との奇妙な日々。水たまりで溺れるような怠惰な幸福。頽廃の愛。だが、四十九日が経とうかというころ、金魚は段々と衰弱していく。
愛するひとを二度も失う恐怖のなかで私は、恋人がいつだったか「死んだら故郷の湖に還るの」と話していたことを想いだし、恋人の故郷である四国へとむかう。
だが、そこで彼女の恋人を名乗る男と逢って――――
「ねえ、人類は元々魚だったんだよ」「だったらどうして、私たちの祖先は海を捨てたんだろう」「それはね」
死んで金魚になった恋人と青き葬送の現代幻想
カクヨムコンテスト10【短編】
現代ドラマ・文芸・ホラー
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「青」を見送る日に、永遠に忘れられない「青」を知る
こちらの幻想文学を拝読したとき、静謐で力強い没入感を覚えました。
主人公は、最愛の恋人を病で亡くしています。そして、死んだ恋人である彼女は、火葬後に収まった骨壺の中で、青い金魚へと姿を変えていました。
彼女の死後も、共に時を過ごせる……甘やかな切なさと退廃がないまぜになった耽溺に、主人公はゆるゆると沈んでいきますが、蜜月は長く続きませんでした。四十九日が過ぎた頃を境にして、青い金魚は徐々に衰弱していったのです。
再び失われようとしている彼女の魂を繋ぎ止めるように、あらゆる手を尽くした主人公は、恋人の遺言を思い出します。
「わたし、故郷はきらいだけど、あの湖だけは好き。静かで底なんかなくてど…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文学のお手本の様な作品
この作品を読んで感じたのは、品です。文章とはここまで美しく書けるのかと、ため息を漏らしました。まるで青を基調とした硝子細工の様な文章は、幼い頃に初めて万華鏡を見た時の様な心持ちにさせてくれました。
また、その構成には思わず膝を打ちました。清涼な湧水の様に染み渡り、気がつくと読み終えておりました。昨今溢れかえっている作品群の中でも一線を画し、コンテスト受賞もさもありなん、と思いました。
特に私がこの作品で好きな要素は、色の情景です。見たことがない色を、想像できてしまう。イデアから取り出してきた様な色彩の言語化。ここまでの語彙を取り込み、この文章を作り上げた貴方を心より尊敬申し上げます。
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