コメディとシリアス、宇宙にロボットという浪漫、古き良きと新しさ……この作品には、全ての面白さが詰まっています。
主人公は「人型機動兵器の超高性能AIに転生した」存在。そして青臭いところのある少年パイロット・ジンと出会い、彼をサポートしながら広大にして過酷な宇宙戦を切り抜けていく……本気で面白いです。
とにかく人型機動兵器〈レイダス〉に転生した主人公の、地の文でも表現される心の声が秀逸すぎる。ボケとツッコミを面白おかしくこなしつつ、それでいて転生前の「現代人の感覚」を保っているので共感がしやすく、かつ据え置きの効率重視AIに逆らう人間味を持ち合わせている。
笑いと格好良さを兼ね備える魅力、そんな主人公の一人称視点で進んでいく物語、最高なのですよ……!
最初は青臭さや未熟さのあったパイロット・ジンくんも、主人公のサポートに促されるようにどんどん成長していくのも快感。機動兵器の高性能AIというポジション、特等席すぎる……めっちゃ楽しい……!
そしてストーリーに華を添えるヒロインの存在、本当に流石と思わせられる魅力。
太ももが眩しい少女アビーさんや、大人の魅力のエメルさん、ミステリアスな魅力の(強火な自爆願望★)ネイさん。誰もが多種多様かつ個性的で、その魅力を〈レイダス〉INの主人公が癖たっぷりに面白く語ってくれて楽しいです。
そんな中、個人的な推しは艦長(代理)のサミーナ・リム少尉。ポンコツさが逆に愛らしく、良すぎるビジュアルも相まって、際立って光り輝いていると感じます……一見、一見の価値アリと、強く主張します……!
古き良き宇宙ロボットものに、転生という新しい要素も見事に合致させ、きっとどの世代にも広く合致し得ると思う見事な構成。
コメディもシリアスも、浪漫を感じる宇宙戦闘も見応え抜群。
心からおすすめ致します……是非ともご一読を――!
異世界転生ものと聞いて、「ああ、JRPGを思わせる世界観で繰り広げられるファンタジーものだろう」と答える人が多いだろう。
しかし、そこは『フルメタル・パニック!』シリーズの作者の腕の見せどころだ。
はっきり言おう。これはごくありふれた異世界転生ファンタジーではない。
現代を生きていたサラリーマンが交通事故に遭って、目が覚めた先は遠い未来世界だった。
しかも、そのサラリーマンは機動兵器に転生していた!
その機動兵器に14~15歳の少年が乗り込んで……、となると、あとは1970年代後半から1980年代に流行したロボットアニメのお約束の展開が待ち受けている。
えっ? どこかで見たかな? それは言わないお約束だぞ!
テンプレバリバリの話だけど、面白いからいつの間にか読むのがやめられなくなる。
ベテラン作家の犯行を是非ともご賞味あれ!
「一見すると」使い古されたシチュエーションで手が伸びづらいかもしれない。
「今のところ」設定も目新しいとは言いづらく、展開もありきたりと言っていい。
しかし、それならつまらないかというとまるで違う。
転生した主人公が内心で入れるボケ・突っ込み・ロマンティズムが適度かつ適切なタイミングで入ってくるので、読んでいて非常にテンポがいい。
また、先ほど目新しくないと言ったシチュエーションや設定も含みある書き方がされており、なにがしかの仕掛けが感じさせられる。
つまり、今(9話時点)であっても読んでいて楽しいし、この先も楽しいであろうことが十分に期待できる。
願わくば古きロボットアニメの悪しき点(=打ち切りで伏線未回収のまま完結)まで踏襲されませぬよう・・・。