どこにでもいる女の子が些細なきっかけで狂気にとらわれ、自らの意思で甘美な沼に沈んでいく。それが仕組まれた破滅だとしたら?
主人公はどこにでもいる女子高生。同性愛者である奈緒はクラスメイトの早耶香に恋愛感情を抱くものの、高嶺の花であると諦めていた。
だがある日、冴えない教師とともにホテル街に消えていく彼女を見かけたことで、自分の中に潜む狂気が目覚めてしまう。この事実を突きつければ憧れの早耶香が自分のものになるかもしれない――――。
こうしてついに高嶺の花を手に入れた奈緒ちゃん、全てを捧げて早耶香をむさぼり尽くすために一計を案じる。それは誤算を生んで取り返しのつかない事態を招き、いつしか脅迫していたはずの自分が依存する側に。このシナリオを描いたのは、本当の狂気を飼っていたのは誰だ――――?
これは確かに二人の愛の物語です。しかしその愛たるや重く苦しく湿って毒の蜜を垂らし、周りの人々どころか自身をも蝕む甘美なものでした。
行き過ぎた愛憎が狂気を生んで堕ちていく二人、そして最後に明かされる真実。是非ともお手に取って最後までお読みください。
狂気、破滅、絶望。ひりひりとした緊張感に満ちた、すごい作品でした。
主人公の奈緒は、同じ学校に通っている早耶香に対してひそかな想いを抱いていた。同性である彼女への気持ちは少しずつ狂気に変わって行く。
やがて、品行方正な優等生だと思っていた早耶香が、実は学校教師の桂木という男と付き合っていることを知ってしまう。その時に、奈緒の中で何かが確実に歪んでいく。
絶望と失望。でも、同時にチャンスであることにも気づく。奈緒は桂木と密会している『証拠』を押さえることで、それをネタに早耶香を脅迫することに決める。
「大好きな桂木先生を守りたかったら、わたしの言うことを聞くように」
困惑し、絶望する早耶香を支配し、確かな満足感を得る奈緒。そこからの展開は、まさに「綱渡り」と表現したくなるものでした。
狂気が引き起こす、取り返しのつかない事態。奈緒と早耶香の関係性は、やがて大きな事件を引き起こしていくことになります。
支配していたと思っていた側が、逆に支配される側にも回る。度を過ぎた依存心や執着心、強い恋慕。表面的なイメージとは異なる裏の顔。
それらが次々と噴出し、奈緒が予想できなかった形へとどんどん状況が転がって行きます。
果たして、彼女たちの行きつく先は?
人間精神の極限というか、「善」や「悪」、「正常」や「異常」というものを掘り下げた作品となっていました。
本当の意味での「幸せ」や「不幸」とはなんなのか。普通の人間の物差しでは測れない境地へと足を踏み出していく二人。そんな彼女たちの幸や不幸は、傍から見ている人間が判定できないものになっていく。
二転三転するサスペンスと、破滅さえも救いとなるような圧迫感と絶望感。
読む人の心に強烈に迫ってくる、第一級のサイコサスペンス作品です。
まだ一話目なのに・・・レビューコメントを書いてしまいたくなる。
短編になるのか中編になるのか、それとも長編なの?
そんなことすら分からないのに、この私がレビューコメントを今書いている。たった一読しただけで・・・
京野薫・・・なに、この子。
最近、次々と新作上げて多彩なジャンルを書いている京野薫という作者。コメディー、ホラー、ファンタジー、次々に傑作を生みだしては、私はレビューコメントを書くのを控えていた。
全部に書きたくなってしまうからだ。
私は本当に控えていたんだ。一人の作者だけに何本もレビューコメントを書くのを!
しかしだ!
たった一話目を読んだだけで、その思いが崩れ去った。
何だこの作品!
リアタイ・・・リアタイでみんなに読んで欲しい。この作品はそんな思いに駆らせる、圧倒的な文章力とポテンシャルを秘めた作品。
絶対傑作になる!
それだけの予感で、レビューコメントを書いている。
私の予感は外れるかもしれない。でも、今読むべき第一話がここにある。
京野薫の才能に嫉妬すらできない・・・
第一話だけ。なのに、ここまで心を囚われてしまいました。