『香港夢中人 香港なんじゃこりゃ日記』レビュー
── あの頃の空気と、香港への旅心──
レビュアー:ひまえび
ましら 佳様の『香港夢中人 香港なんじゃこりゃ日記』は、1990年代の日本と香港の情景を、ユーモアと温かみのある筆致で描いたエッセイです。スマホもスタバもなかった時代、テレビが家族の中心にあり、本屋やCDショップが文化的な場所だった頃の日本の風景が、懐かしさと共に蘇ります。
そして、香港がイギリスから中国へ返還される前の、独特な雰囲気を持つ都市として描かれています。イギリス資本で都市化が進み、東西の文化が混ざり合った香港の姿は、まさに「今のうちに行っておこう」と思わせる魅力に溢れていました。
ましら 佳様の文章は、当時の空気感や人々の生活を生き生きと描写しており、読者をその時代へと引き込んでくれます。ユーモアを交えながらも、時代の変化や人々の心情に寄り添う視点が、作品に深みを与えています。
このエッセイは、過去の記憶を辿りながら、現在の自分を見つめ直すきっかけを与えてくれる一編です。ましら 佳様の温かな視点と軽妙な語り口が、読後に心地よい余韻を残してくれます。