このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(244文字)
恋多き平安貴族の前に現れたモノ。その顛末を質そうと、彼は我が娘の住まう館を訪れます。 娘が語り始めたのは、ある夜の出来事。軽妙でありながら薄刃の上を渡る様な父娘の会話は、宵闇の不穏に形を与え……。 次第に明かされる顛末に絡み取られる恐ろしさ、文体から立ち上る仄かな色香。 美しく、怖ろしい物語です。是非浸ってみてください。
時は平安。娘との引き継ぎを頼まれた父親が、娘を心配して駆けつけてみれば……娘を心配している父親に対し、チクチクと淡々と嫌味を交えて展開する様は、一瞬これはホラーだったっけ? と思い直したくなるほど軽妙です。が、そこはダークファンタジーとタグにあるように、締めまで読めば思わず唸る。客観的に見れば面白く、父親目線で見れば確実にホラーな物語、是非、ご一読を
平安の世は暗闇に閉ざされる。魑魅魍魎の跳梁跋扈は夜の四十万にのみは在らず。 怨みの念は膾炙して伝播する。呪詛、怨念の矛先は。 其処にある。人の心は世に随いて移ろう。情けも無ければ、誠も無い。愚かな者を嘲笑う。 それは娘の姿をしていた。 鬼からの礼物は如何なる品か。恨み辛みを黒々と塗り固めた 闇 また闇 闇から闇へ、又、闇の中。黒い櫃が、鳴っている。
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