第20話 ゴブリンの野営地1

ティタニア達は僕が到着する少し前に到着していたが、とくに遅いなどと文句を言われる事もなく、僕はまた昨日と同じ道をたどり森へと進んだ


「そういえばティタニアさん、武器はどうしたんですか?大きな剣」


「あぁ、あれか。崖の上、ゴブリンの野営地にあるだろうな」


「そうですか、武器もなくて大丈夫ですか?」


「へん、私はこの体全てが武器だから安心しな。硬い体は鎧よりも堅く、振るう拳はメイスをも凌駕するからな」


そういいニカっと笑うティタニアは右腕の上腕二頭筋を盛り上げた。


ティタニアは体こそのゴツサはそこまでは感じない。確かに腹筋は割れて、筋肉も腕や足に着いているが身長が高いせいか、いいバランスを保っている。


だが、胸も大きく腰回りや太もももしっかりとした女性らしい体つきもしている。


ムチムチぐあいと、バキバキの筋肉、長身からのスマート差、全てを兼ね揃えているなとマジマジと見て、そう思った。


「体が丈夫なのはいいことだが、流石に武器はいるだろ。それに鎧は最低限はつけとけ」


「だな。こちとらただで見せてくれるなら、ありがたく見させてもらうが、服は着ないと寒いだろそれ」


そしてそこへ上半身はほぼビキニだけの装備はおかしいと正論をいう、ファロック兄弟。


「てめーらみたいに、やわな鍛え方をしてないんだよ。お前らの力量で私を推し量ろうとするのが間違ってるって事だ」


そしてしたり顔で反論するティタニアだ。


まぁ仲良くとまでは行かないが、ティタニアも兄弟も僕に対しては好印象で返事をしてくれるのが、この場の空気の悪さの唯一の救いだった。




森へと辿り着くまでは昨日と同じ、お喋りの時間となる。


「そういえばノエル、昨日のあの魔法はなんだったんだ?」


「あぁあれはディメンションポータルってやつですよ」


「は?ノエル、ディメンションポータル使えるのか!?」


ティタニアの質問に僕が答えると、驚くのはウォーロックのバトス。


「はい使えますよ」


「なんだバトス、その何たらポータルってすごい魔法なのか?」


「あぁ、使えるやつはある程度いるのは知ってるが、大体は有名なソーサラーやウィザードだぜ」


まぁ高レベにならないと覚えれない魔法だしね。そりゃ力があるということは有名だろう。


「あ?なんだお前ら、私とノエルの会話に入ってくるなよ」


「いやティタニアちょっと黙ってろよ。なぁノエル、悪いがお前そこまで凄そうに見えないんだが本当か?」


これ兵士さんとも話をしたなと、同じ説明をする。というか、その部分も盗み聞きしておいてよと思ってしまった。


「―――なので受け継がれた血筋ですね」


「はー、やっぱりエルフの血が入ってるとすごいんだな」


「だな。見た目も男の俺から見ても顔立ちが綺麗だと思えるしな」


そしてバグで手にした魔法も、魔法使いの前で言ってもつっこまれる事はない事に安心だ。


便利な魔法を隠して、コソコソなんてしたくないからね。


そしてまだ鏡という物に出会っていない為、自分の顔をしっかりと見れてはいないのだが、褒められた事でそこも大丈夫なんだろうなと安心。




そんな話をしながら、森の前までたどり着き中へと進む。


ティタニアの案内の元、森の中を進み、目印が倒された場所へとゴブリンとは一切合わずにたどり着く。


「派手に倒してるなこれは」


「なあお前、ちょっと剣貸せよ」


「ん?何する気だ?」


「武器を作んだよ、いいから貸せって」


「お前、人にものを頼む態度かそれ」


そしてヤレヤレといった表情でダグラスは2本あるうちの1本を鞘から抜いて、ティタニアへ渡す。


そしてティタニアは簡単に丸太をスパン、スパンと無駄な所を斬り落とし、こん棒・・・に見えなくもない丸太を作り上げ、肩に担いだ。


「おら、返すぜ」


「それが武器かよ。ないよりマシなのは分かるが、まぁいいか」


そしてまたティタニアは歩きだす為、みなそれに黙って着いて行った。




昨日とはまた違った道。ティタニアが辿る道を通れば、ぐちゃぐちゃにつぶれたゴブリンの体。


大剣で斬るでもなく。叩き潰したらこうなったのだとか。嬉しそうに爽快だったという様子は正しくバーバリアンだった。


そして道は登り一辺倒となり、だんだんと疲れ始める。


そもそも道を歩いていない。獣道ですらない、ただの森の坂。


草は生い茂り、木の根を隠し何度もつまずく歩きづらい地面。


休憩しようよと声を掛けたいが、ドンドン進むティタニアにそんな言葉を掛ける事も出来ず、置いて行かれまいとこっちも必死だ。


「おい、ティタニアそろそろ休息とっておいた方がよくねーか?」


「あん?」


「ほらノエルもばててるしよ、このままゴブリンと戦闘はきついぞ」


「ククク、だから私はお前らと鍛え方が違うんだよな。ノエルは魔法使うやつだから体力ないのも分かるが、てめーらは恥ずかしいやつらだぜ」


「はいはい、それでもいいからちょっと休憩だ。一度、あの丘に出ようぜ」


僕の疲れぐあいを見てか、ティタニアへと休憩を促すダグラス。良いやつだなと思いはするが、休憩できる事に助かったと思うが強かった。


そしてダグラスが指さす方へとティタニアは歩き出し、少し開けたその場所でしばしの休息となった。


「つ、疲れた。水、水」


革袋の水筒とスキットル、両方バックパックにしまっていたのは失敗だった。どちらかは直ぐに取り出せる所にしておけばと後悔だった。


バックパックを下ろし、すぐにスキットルの水筒を取り出す。


ゴクゴクゴク・・・ぷはーーー。


エールなのだが、麦茶感覚だ。流石に喉が渇いていたら美味しく感じる。


そして、ダグラスとバルトに目を向けると同じように座り、カバンから飲み物を取り出していた。


ティタニアはというと、持ち物を持ってきてなかった様子なので、当たり前に飲み物なんてなく、丸太を置くと丁度良さそうな岩の上へと座っていた。


本当に余裕そうだな。そう思うとサイコロが出現した。



頭の中でダイスが転がる。コロコロコロコロ・・・・14


~知覚判定成功。ティタニアをよく見ると、顔周りは汗をかき額に髪が引っ付いている。それにあなたが先ほど水を飲んでいる姿をティタニアは羨ましそうに見ていたのに気が付いていた~



いや気が付いてないですけど。というか、これナレーターさんティタニアを攻略しろと言ってるようなもんじゃん、いいの?優しくして落としちゃうよ僕?


そんなナレーターの助言もあり、革袋の水筒を持ちティタニアへと近づいていく。


「ティタニアさん、どうぞ」


「ん?いいのか?」


「いいですよ。もう一つ水筒持ってきてるのでこっちのどうぞ」


「そうか、わりいな貰うぜ」


僕が声を掛けると素直なもんじゃん、ちょっと可愛く見えてきたよ。


そしてゴクゴクと一気に飲み干したティタニアは、腕で口を拭った。


「ありがとよ」


そしてニっと笑って水筒を返される。もう好感度爆上がりだな、ほぼ攻略出来たようなもんだ。


そしてそのまましばらくそこで、休憩している傍ら、僕の頭は邪念で溢れていたのだった。

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