木島にとって、自分の勤める会社は最高のパラダイスであった。
「社員の成果」を尊重し、制約がほぼ存在しないこの会社の枠組みを、彼は文字通り使い倒していたのだ。
糾弾しようにも、彼は「黒」を外に曝け出すヘマはしない。何より「成果」の後ろ盾を得た彼は無敵そのものだった。
手段を問わない栄光は、ずっと続くものと思われたのだが……
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社会の基本を教えてくれる短編作品。
技術の発展は私達に「出来ること」を沢山もたらした。
その中には傷害や窃盗といった「いけないこと」も含まれている。
では、「いけないこと」以外はすべて「いいこと」なのか。
この境界すれすれの手段を「裏技」として得意気に話す人もいる。効率的な行為に走らない人々を「愚鈍」と評する人もいる。
……出来ないのではない。やらないだけだ。
なぜ、やらないのか。
その答えはこの作品に書かれている。