ロボットの死とはどのタイミングで発生するのか?
代替のないワンオフなものなら、その機体が破壊された場合には死んだと言っていいだろう。だが、そのロボットのAIがバックアップを取っていた場合は? 客観的には同じものが残るのであれば、本体が破壊されたとしても、それは「死」とは呼べないのではないか?
SFファンなら誰しも考えたことのあるテーマだが、本作はメイドロボのホタルさんと、彼女の主人であるシュウジのやり取りを通じて、こうしたロボットやAI人格ならではの「死生観」を考察する短編集となっている。
本作で面白いのは、ホタルさんとシュウジの関係性は変わらないが、それ以外の設定は各話ごとに微妙に異なっているところ。「ハードウェアに不備はなくともソフトウェアがリセットされたら?」「内部では稼働していても、外部からそれが確認できない場合は?」など毎話様々な形でAIの死を描かれていくのだが、その数はなんと25パターン! 非常に細かい形でAIの「死」が分類されている。
SF好きは当然必見として、様々な形で描かれるホタルさんの死は、ホラーのような書かれ方をするものもあれば、時には人間賛歌というべき内容になっているものもあって、SFファン以外も楽しめるアイデアに満ちた短編集に仕上がっている。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)