第2話
「はぁ、、どこにいるんだろう、、」
大きなため息をつく。
(護衛対象は皇族、、早く見つけ出さないと刺客は待ってくれないし、)
「んぁぁぁぁぁぁぁ…どうしようぅぅぅぅぅ」
周りの視線が痛い。
「何あの子。」
「庶民からの成り上がりなんじゃない?」
「変な子。」
「周りの方が見ていないとでも思っているのかしら。」
「うちの学園の恥さらしだわ。」
美人の三人組が私の方を見て何か言っている。
(もういいかな。帰ろうかな。すんごい言われようじゃん。帰りたい。)
☆☆☆
—キーンコーンカーンコーン
チャイムだ。
(さっさと帰ろう。皇太子探しは明日でいいや。それまでに刺客にやられても私のせいじゃないでしょ。)
☆☆☆
「つかれたぁぁぁぁぁぁぁぁ、一日長いよぉぉぉぉ明日も行きたくないよぉぉぉ」
—ぼふっつふわっ
布団の羽毛が空中に舞う。
「皇太子ってどこにいるんだよ!!!っていうか!あんな広い校舎の中と庭の中から一人の人間探すのそんなに簡単じゃないんだぞ!!!」
魔法使いなら魔法を使えばいい、と思うだろうけれど、実際魔法を発動するときには詠唱が必要である。基本的には。
歴代の魔法使いの中で、詠唱なしに魔法を使った精鋭は日本と英国に一人ずつ。
どちらも第二次世界大戦時に生きた魔法使いだ。
第二次世界大戦が長引いた理由はこの二人が居たからとも言われている。
日本と英国、かつては同盟国だったものの、その後対立。
政府が戦争に動員させた魔法使いの中で二人の魔法使いは対立した。
地を削り、兵を虐殺。爆弾を作り出し、各国に投下。
それだけ、詠唱なしで魔法を使うことは強力であり、悲惨な過去を生み出したと、戦後80年たった今でもその歴史は語られ続けている。
「魔法使っちゃえば一発で見つかるんだけど、、詠唱なしに魔法使ったことがばれたらえらいこっちゃなんだよなぁ」
そう、ルナは世界大戦後、生き残った八人の中で唯一詠唱なしに魔法を使える異次元の魔法使いだ。
歴代の魔法使いとルナが違うのはそれを習得した年齢。
ルナはまだ15歳だ。
魔法使いは牢獄行き。詠唱なしで魔法を使えるとなれば最悪死刑だ。
「最悪死刑~やだやだ。歴史書に載っちゃうよ。」
要は、魔法使いとは核兵器一万発を持っているのと同じということだ。
☆☆☆
—ゴンゴンゴン
「んなぁに?こんな夜中に。」
ルナが戸を開ける。
「やっ!元気にやってる?」
☆☆☆
「んで、何しにきたの?夜中だけれど。」
「いや、夜中って、まだ19時過ぎだよ…依頼進んでるかなと思って来たんだよ、、」
彼は、七崩剣と呼ばれる皇族直属護衛の魔法使い、
ロイ・ジョリス
八人の魔法使いの中でも上位の魔法を使うことのできる魔法使いだ。
「この間ニアが家に来て”皇族の護衛をしろ~”とか言ったんでしょ?」
ロイの得意技は読心術。これは魔法でも何でもないただの技術だ。
「ほんとジョリスさんってもの好きだよね。そうだよ。」
ルナがため息交じりに言う。
「それで、今日初めて学校に行ったけど、持ち前の考えすぎな性格と、引っ込み思案で、周りの貴族やらなんやらに馬鹿にされたんでしょう。」
「…そうだよ!!もぉ!じれったいなぁ、早く言いなよ要件!」
「探している皇太子の写真を秘密裏に入手したんだ~いる?」
ロイがニヤニヤしながら見ている。
「…いる。」
☆☆☆
皇帝の息子―皇太子は
アウル・フェリックス=ライアン
私は、本当に聞いたことがない名前だった。
ライアン家が皇族なことは知っているけれど、アウル・フェリックスという名は初耳だ。
「そらぁ、秘密裏に取ってきた情報だし~」
とジョリスさんはのんきに言う。
「勝手に心読まないでね。」
「それで、私が世間知らずなだけかと思ったんだけど、なんで皇帝の跡継ぎである皇太子の名前が世間に明かされてないの?」
不思議に思った。
そもそもなんで皇帝の跡継ぎなのにその存在が明かされていないのか。
なぜ明かされていないにも関わらず、刺客がその命を狙っているのか。
そもそもその刺客がアウル・フェリックス皇太子の命を狙っているのか。
疑問点が多々ある。
ジョリスさんは少し考えこむようにして言った。
「わからない。ただ、皇帝からの命令としては”護衛をしろ”とだけ…」
沈黙の時間が流れる。
「わかった。取り敢えず護衛はする。」
「頼んだよ。皇帝からの命令だ。この任務が失敗すれば…」
ジョリスさんと目が合う。
「魔法使い八人全員処刑される…」
「わかってるじゃん。それじゃあね。」
そう言ってジョリスさんは私の家を後にした。
(私の勘ではジョリスさんはなぜ存在を世に明かしていないか知っているはず。それをあえて私に教えないのは、私が護衛するにあたって必要でない情報であるから。)
「…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
(面倒くさい。)
★★★
人物紹介
ルナ・イリス 15歳
世間知らずでいつもおさげをしている引っ込み思案の少女。
打ち解ければ何でも話す無邪気な一面も。
歴代最強魔法使いである故、それだけ魔法への愛が強く、数学と魔法史が得意。
詠唱なしで魔法を使える世界で三人目の魔女。
ニア・ロザリア 20歳
無茶ぶりが多く口が少し悪い青年。
社交的な性格ではあるが、対抗心も人一倍強く扱いが難しい。(ロイ談)
七崩剣の一人。4番目。
皇帝からの信頼は厚く、任務を任されることが多々ある。
(1話でルナに護衛しろと言ったのはこいつ)
ロイ・ジョリス 20歳
明るくにこやかな青年。
血筋をたどると元は皇帝一族の末裔だそう。
本心は誰にも打ち明けないが、読心術が得意で、相手の心はなんでも読んでしまう。
七崩剣の一人。2番目。
エマ・キーパーソン 14歳
誰にでも話しかけられる明るい性格。
最近大きくなった財閥のご令嬢。
周りの人からは「金だけで入った虫けら」と言われているが、文武両道で今後の国内政治に大きな影響を与える人物になるだろうと期待されている、割とすごい少女。
★★★
1909年 魔導書から抜粋
1 攻撃魔法
単純攻撃魔法
火、水、土などの基本物質から形を作り、攻撃する魔法。
基礎魔法であるが故に使われることは少ない。
単純攻撃魔法を使えないものは、他の魔法を使うことはできない。
複雑攻撃魔法
基礎魔法を組み合わせ、強化した攻撃魔法。
単純攻撃魔法の数百倍の威力を持つ。
基礎魔法をすべて理解していなければ複雑攻撃魔法を使うことはできない。
この魔法は、使う人間によって組み合わせ方が無限にある。
空間魔法と組み合わせて使うものを別名「空間攻撃魔法」とも言う。
創作系攻撃魔法
字のごとく想像して作る魔法。
爆弾などの火薬兵器や、核爆弾などの化学反応を起こす物を作ることができる。
但し、その構造や原理を正確に理解していなければ、創作することはできない。
これらの魔法で一般人を殺傷することは国際法で禁じられている。
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