第30話 金髪美少女と水族館デート

 振り返ってみると、そこにはいつも以上に可愛らしい愛夏が立っていた。

 いつもポニーテールにしている鮮やかな金髪はハーフアップにされており、普段は元気で可愛いイメージが強いけど、今はおしとやかな雰囲気を醸し出している。

 可愛いというよりも美しいという印象を強く受ける。

 服装もいつも見ている学校の制服姿ではなく、白いカーディガンを着ていて下には紺色のジーパン。

 制服姿も可愛くていいんだけど、この私服姿はとても清楚という印象になる。


「全然待ってないよ。その服装すっごく似合ってるね」


「えへへ。そ、そうかな?」


「うん。いつも可愛いけど、今日は特に可愛いって感じる。本当に」


 この時ばかりは愛夏の可愛さを全力で表現することのできない自分の語彙力の無さを呪った。


「瑠衣君に褒めてもらえてうれしい! 瑠衣君も今日の服装似合ってるね! いつも見てる制服とは違ってなんだか大人っぽく見える」


「そうか? 愛夏に褒められるとなんだか照れるな……」


 普段から服装を褒められるっていう経験が無かったからどうしても照れてしまう。

 褒めてくれるのが、恋人の愛夏というのも影響しているのかもしれない。

 でも、照れる以上に嬉しくて仕方がなかった。

 昨日の夜からどんな服を着ていくか悩みに悩んだ努力が実を結んで本当に良かった。


「本当に似合ってるから。なんか、いつも瑠衣君と居るときは落ち着くって感じだったんだけど今日は凄くドキドキする。えへへ」


「それは俺もだよ。いつもの愛夏と一緒に居ると元気をもらえる感じなんだけど、今は愛夏が綺麗すぎてなんだか緊張してくる」


「なんで緊張するの~まあ、私も凄くドキドキしてるんだけどね」


 待ち合わせ場所から動かずにイチャついていると流石に目立つようで複数の視線を感じる。

 そろそろ移動したほうがいいだろうな。


「じゃあ、そろそろ移動するか」


「うん! 水族館なんて本当に久しぶりだからすごく楽しみ!」


「俺もだな。本当に小さいころに数回くらいしか行ったことが無いような気がする。だから、何があったとか何を見たとかは全く覚えてないから感覚的には初めて行くような感覚だ」


 家族としか行ったことが無いから、こうやって誰かと行くのは初めてといってもいい。

 その相手が愛夏なのが嬉しいし、心が躍る。

 本当に楽しみで仕方がない。

 この時ばかりは学校でのことなんて忘れて愛夏との水族館デートを楽しみたかった。


 ◇


「ねぇ瑠衣君見てよ! すっごく綺麗なクラゲだよ!」


「最近の水族館ってこんな感じなんだな。なんか、すごい」


 俺たちが最初に見ていたのはクラゲだった。

 暗い水槽にクラゲが泳いでいるのだが、その水槽がライトアップされていてイルミネーションみたいですごく綺麗だった。

 今まで印象では魚が泳いでいるだけかと思っていたけど、こんな工夫がなされているとは知らなかった。


「だね。本当に久しぶりに来たけど、私が来たときにはこういうのなかったと思うよ。私も歳をとったんだな~」


「水族館で年齢を感じないでくれよ。それに、愛夏はまだまだ若いだろ? 可愛いし」


「ちょ、いきなりそう言うこと言うのやめてよ。めっちゃ照れるから」


 そう言う愛夏は口元を押さえてそっぽ向いてしまった。

 今いる場所がそれなりに暗いから愛夏の顔色はわからなかったけど、見えていたらきっと耳まで真っ赤になっていることだろう。

 本当に可愛くて愛しい彼女だ。


「だって、事実だから。愛夏は可愛いよ」


「も、もう。撫でないでよ」


 撫でているとそう言ってくるけど、本気で嫌がっているわけではないようなので撫で続ける。

 いつもみたいにサラサラとした髪で撫で心地が本当にいい。

 普段と雰囲気が違う愛夏を撫でていると、やはりドキドキする。


「愛夏はさ……なんで俺のことを好きになってくれたんだ?」


 こんな暗い空間で愛夏を撫でているから、いつもは聞けないことを聞いてしまう。

 ずっと、気になっていたんだけどなかなか聞けなかったこと。

 愛夏とは前からも何度か話してたりはしてたけど、それだけで好きになるとは考えずらい。

 愛夏が俺を好きになったきっかけがわからないんだ。


「いきなりだね。答えないとダメ?」


「ダメではないけど、答えてくれたら嬉しいな」


「そっか。まあ、言えないことじゃないし。そうだなぁ~ご飯でも食べながら話そう。ちょっとおなかすいちゃったし」


 お腹をさすりながら愛夏はえへへ~とはにかんでいた。

 一体何で愛夏が俺のことを好きになったのかが聞けると思うと少しだけ緊張してきた。

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