あなたをこの腕にひきよぢて

万葉集からインスピレーションを得て生まれたこの物語の魅力は、なんといっても主人公の心理描写の深さです。

鎮兵（蝦夷を警戒するための兵）として遠い陸奥国へ旅立つ運命を背負い、愛する小古根（ここね）への想いを断ち切ろうとする伊留加（いるか）。

あと数年待てば妻にできるはずだった小古根がまだ「うら若み」（あまりに若い）がゆえに、自らの欲望を抑え、手を引くしかない苦悩が丁寧に描かれています。

純粋な恋心と、どうにもならない運命。この二つの間で揺れ動く伊留加の姿は、読者の胸を強く打ちます。

ぜひ読んでいただきたい一作です。

千年前の恋が、今も胸に響く――🌸✨

『あなたをこの腕にひきよぢて』は、奈良時代を舞台に、郷長の次男・伊留加（いるか）が義妹への秘めた想いを胸に、鎮兵として郷を離れる決意を描いた切ない片思いの掌編です📜💞

触れたいけれど触れてはいけない距離感📖💔

和歌に託された秘めた想いを、あなたもそっと味わってみませんか🕊️🌙

　若芽折り
　花開かせて己《おの》が手で
　摘《つ》み
　眺《なが》みたし
　囲《かこ》いたし
　娘《こ》の

………………

スピンオフではありますが、これだけで　じゅうぶんに浸れます。
味わえます。

本文冒頭の和歌が　すべて。

和歌に込められた思いの

あぁ……
なんと　せつないことよ！


　愛しさに　乱れし心　告げず行く
　松　青々と　在りしを願い


……思わず、感想を短歌で綴ってしまいたくなるほどに。


古《いにしえ》の恋心、
ちょっと覗いてみませんか。
(*^^*)

万葉集の和歌に寄せた掌編です。

語られるのは、物語の主人公になるような特別な人物でもなく、大きな事件があるわけでもない、日常の一場面。
けれどもそこには確かに生きている人がいて、心震わせる想いがあって、それらは誰に知られるでもなく世に溶けていく…。
今に残されている和歌と共に、多くの人々の知られざる生が存在したのだと教えてくれます。

そしてそれは、きっと昔も今も同じなのでしょうね…。

千文字弱で切ない余韻を感じられます。
おすすめです。