ループ系の作品は昔から人気がありますよね、ひぐらしとかまどまぎとかシュタゲとかリゼロとか僕だけがいない街とか、他にもたくさんのループ系の作品を私は見ているので、かなり目が肥えていると思うのですが、そんな私でも本作は新鮮で面白かったですね。
本作の主人公は秋津燐帆という少年で、彼はクラスメイトの茜が好きなのですが、目の前で栄口という男と彼女が恋人になってしまうんですよね。
NTR、いやBSSと言ったほうが適しているかな。
ショックを受ける主人公ですが、ある日、田んぼから脱出させたお礼だということで、謎の男の子にタイムリープ能力をもらいます。
その能力を使って燐帆はあの茜と栄口が恋人になる前の時点に何度も戻るのですが、未来を変えようとしても毎回、あの二人は恋人になってしまいます。
どうして失敗するのだろう、なんかちょっとおかしいような……と思い始めていたら、だんだん不穏な気配がしてきて、そういえばこの作品はホラー作品だったなと思い出しました。
終盤には衝撃的なことがいろいろ判明し、そういうことだったのかと驚かされました。
ループ系としてもホラーとしても素晴らしい作品でした。おすすめです。
呪文を唱えるだけで、昨日に戻れることができたら……これは是非とも手にしたい力でありますが、本作の主人公・秋津燐帆にとっては切実な問題をはらんでおります。
なにせ六年間好きだった茜ちゃんという女の子に、頭が良くて手も足も早いモテ男子・栄口が告ってしまい、二人は恋人同士になるのだから。
燐帆は謎の少年を助けたことにより得た呪文で昨日に戻り、告白を阻止しようとするのですが……なぜかまったく上手くいかない!
この失敗の繰り返し場面、燐帆君には申しわけないですが、すごく面白いです!
もはや呪われているのではないか!?というほどに、憎き栄口の告白は成就します。
そして失敗ばかりが続き、もういい加減に明日に進もうとするのですが……。
もしも明日に向かおうとして、それができなくなってしまったら――これはもう地獄ですね。
不可解な呪文の言葉、そして幸せなのか不幸なのか分からない結末、主人公の名前にいたるまで、素晴らしくも恐ろしい仕掛けの数々が待っています!
是非とも体験してください!
小学生の燐帆(りんぼ)くんは茜ちゃんを長い間想っていた。
だのに栄口という、足が速けりゃ手も早い、おまけに頭の回転まで速いという いけ好かない男に茜ちゃんを横取りされる。
やり直したい、やり直したい、過去を、過去をやり直したい──!
燐帆くんの悔しさは奇跡を起こす。変な少年との邂逅という形で。
しかし奇跡を起こすたび、燐帆は迷宮の中で苦しみを積み重ねていく……。
……というお話なのですが、すごいんですよね、ほとんどの場面を笑って読めるんです。
もちろん実際に起こったら怖いし燐帆のように苦痛も感じることかと思うのですが、そのあたりに過剰な生々しさはありません。基本的にカラッとした、というか、滑稽さのある描写が続き、燐帆のツッコミもキレがあるので、鬱々とした気分にはなりません。
私はてっきり、燐帆はこの迷宮からリンボーダンスでもして脱するのかと思っていたのですが、違いました。だって失礼ですけど名前がリンボですよ? 期待しちゃうじゃないですか。
でも違ったんですね……これは私にとって衝撃だったのですが、物語はそれ以上の衝撃を用意してあなたを待っています。
いや、びっくりですよ。
「そこはつちなり、けものといふいぬ」そういう意味か!
しかも茜、栄口、お前……!
最終話のコメントで教えていただきましたが、燐帆の名前の由来はかなり重いものでした。リンボーダンスの方がマシじゃないかな……?
失恋というのは、大の大人でも少なからずショックを受けるものです。
それが幼い小学生ともなれば、それこそ狭い世界が終わったかのような絶望感に打ちのめされます。
だからこそ、ちょっと差し伸べられた手を藁にも縋る様な気持ちで取ってしまうわけです。
それが無間地獄の始まりとも知らずに。
失恋、失恋、相次ぐ失恋。
絶対的な因果律を前に結構早い段階で悟り、心も無になっていきます。
そしてだんだんとシチュエーションもおかしくなっていき、告白シーンもギャグじみた展開になってきます。
おい栄口、それはあんまりにもスタイリッシュ不謹慎すぎやしないかい!?
君の倫理観どこに置いてきたの!?
まぁ、そこまでやっていれば普通は「もうやめよう」ってなるとは思うのですが……。
このお話が恐ろしいのは、ここからなのです……。
その仕組みが解明された時や、最後のオチなど、構成面でも妙が冴えわたる本作、是非ともギャグとホラーの両方をお楽しみください。
ところで茜ちゃん好きです、付き合ってください!
この圧倒的な絶望感。中盤から完全にホラーと化していく感覚が圧巻でした。
主人公の燐帆くんは、ある日に「失恋」を経験してしまう。手の早い栄口という同級生により、片思いをしていた茜ちゃんを取られることに。
しかし、彼の前に謎の少年が現れ、「つちになるなり けものといふいぬ」という呪文を唱えるといいと助言してくる。それによって「時間をやり直す」ことが可能になる。
タイムリープ。それはある種の「無敵」な能力のようにも思えます。
でも、その一方で制約も多い。よくわからない「世界の法則」みたいなものが立ちふさがり、なぜか何度やり直しても同じ結果に、場合によってはどんどん事態が悪化していくことも起こりうる。
どんなに時をやり直しても、所属する「世界線」を越えられなければ最終的な結果は同じになってしまう。
果たして燐帆少年は、この「ダイバージェンス1%の壁」を超え、幸せを手に入れることが出来るのか。それとも彼の身には更なる絶望が待ち受けているのか。
タイムリープも使い方を間違えればば、悪夢のごときループへと陥る。そんな出口のない時の牢獄。その中で「彼」が知りうる真実。
最終的に明かされる真相を見ると「なるほど、そういうことか」と膝を打ちたくなりました。
時間SF、時間ホラーとしての面白さが凝縮された非常に面白い一作です。是非とも、多くの方にお勧めしたいです。