子供たちは立派に成長し、家には夫婦だけが残された。そんな夫婦に娘から旅行をプレゼントされる。しかし、その日はあいにくの雨。 しかし、その雨音に夫婦は思いを馳せ、会話を始める。 しとしとと降雨の中に佇む一組の夫婦の情景が、豊かに脳裏に浮かんできます。 余白が雨音まで表現している一作でした。 是非、御一読ください。
長年連れ添った二人だからこそ出せる味わいがあると思います。静かに降り注ぐ雨のように、心に染み入るヒューマンドラマ。
出てくるのは、雨と1組の夫婦だけ。大半が雨をめぐる夫婦の会話で語られる。それだけなのに、温かい。グッとくる。この作者らしい作品で,会心の作と言えると思う。
子供がプレゼントしてくれた温泉旅行。久しぶりの、夫婦水入らずの時間。せっかく二人になれたのだから、新婚時代を思い出してラブラブ……とは、いきませんよね。どんなに大好きで結婚したとしても、いつのまにか空気のような存在になり、話すことは連絡や報告。甘さなんてない。雨男の夫のおかげで、雨宿り。夫婦二人ぼっちです。雨が降っているから、「ちょっと行ってきます」なんて、逃げることはできません。こういうときはやはり、思い出話になりますよね。この思い出話が優しくて。愛を感じます。あたたかい気持ちになれる思い出がある夫婦、いいですね。
悔しいくらいエモいと言わざるを得ないです。二人だった時間を忘れるくらいに過ごした、老夫婦の久しぶりの二人旅行。決して珍しいシチュエーションではないと思うんですけど、二人が過ごしてきた年月。すれ違いと忘れていた恋愛感。そんなことが想像できてしまうと、言わざるを得ないんです。エモい。
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