第6話



「ふふっ♪」



私のベッドの上で、すーーすーーっと寝息を立てている憂太の寝顔を見て…


私は嬉しくなってしまう。



浮気させちゃったのに…



彼と一つになって…幸せだったな。



結局…あのあと…もう1回しちゃったし…


し終わったあと…同じベッドの上で、憂太が泣きながら本当の気持ちを話してくれて…


公園で相談された時…彼は泣くのを我慢していたんだなって。

ずっと愛していた人間に裏切られて、悲しくないワケがないよね。


それを抱き締めながら聞いてあげて、慰めて…

いつの間にか泣き疲れた彼と一緒に眠りに落ちてしまっていた。



まだ幼馴染のコト…キミは好きなんだよね。




私は…彼が幼馴染を黙って赦すための…

浮気相手だから。


彼とは今日だけの関係で…



ヤダな…

「真夜…先輩…好きです。」


思い出すだけで…

胸が熱くなって…苦しくなる。


キミのその言葉もホントなんだろうなー。


でも私は…ヤリマンだからなぁ…



私は憂太に好きって…口に出して伝えてない。

自分のバカな過去が足を引っ張る。



先輩と後輩。


この一線を超えたら…私に向いている悪意が彼にも向いちゃう気がするから。


だからダメ。


そう…自分に言い聞かせる。


彼の寝顔を見ながら…頬を撫でて…

「私もだよ…」


そう呟いて…しばらくの間、そのままずっと憂太の顔を見続けていた。





時計の針が夜の10時を回って…

「ねぇ…憂太、そろそろ起きよっか?」


そう言いながら、彼の肩を揺さぶると

「うぅうん……えっ…あっ、先輩っ!?あっ…僕寝ちゃって…」


慌てて、バッっと飛び起きて…そう口にして…

「あははっー、焦んなくて大丈夫だって。」


「えっと…でも…」


「とりあえずさー、服着よっか?ウチの両親…あと1時間くらいしたら帰って来るからさー」


私がそう言うと、憂太は時計を見て、



「あっ…はい。あの…先輩の両親って、いつも帰って来るの…こんな遅いんですか…?」


そう尋ねてきた。

「うーん。まぁ、大体そうだねー。」


中学くらいから少しずつ両親が帰って来るのが遅くなり、高校に入ってからは…平日はこのくらいがザラになった。


別に慣れてしまえば、どうってコトはないし。


だけど、憂太が心配そうな顔をするから…

「別に寂しくないから、大丈夫だよー。ほら、バイト終わって帰ってきたら…大体こんくらいの時間じゃん。それに土日は親居るしねー。」


安心させるために…そう言ったつもりだった。





「・・・そうですか。」


「何ー?ちょっと不満そうだねー?」



あれ…



「いえ…そんなコト無いですけど…。」


「もしかして…私のコト可哀想とか思った?」



この流れはマズいのに…

ヤバ…止まんない…



「えっ?」


「彼氏じゃないのに、心配してくれるんだー。キミ…そういうのズルイんだよ?何も出来ないなら…見て見ないフリしなきゃダメじゃん。」



あっ・・・だめだ…

口が先走っていっちゃう。






「先輩…僕…」



キミが困ってる顔を見て…胸がズキっとする…


でも…キミのその顔…

私と幼馴染を天秤にかけてくれてるんだよね。


キミの''好き''を確かめてしまった。



「でも…嬉しいなー。キミに心配されるの。

じゃあさ…これからは友達ね?」




もう…だめ…私…


沼った。



「友達…ですか…?」



キミの少し安心したような…でもガッカリしたような…複雑な顔。


背中がゾクゾクってした。



「そーだよ?私達は学校の先輩と後輩でー、バイト仲間でー、私にとって…おウチにあげちゃうくらいに仲の良い友達。キミは私が寂しいと思って…おウチに来てくれるの・・・」


そっと…

まだ裸のままの身体をキミに寄せていく。


「っ…!?・・・」



彼の肌に…私の肌が触れて…身体をビクッとさせた。

私は下から…彼の瞳の奥を覗くようにして…



「それでね…私はヤリマンだからー、そのお礼に…いっつもエッチさせちゃうんだー…」



キミの喉がゴクッて鳴ったのが聞こえて、


「んっ…」



私は彼の唇を奪った。もう一線は超えてる。舌は簡単に憂太の唇の中に呑み込まれていった。


じゅるじゅるって…息をするのも忘れちゃうような激しくてえっちなキス。


もう…止まれない。


やっぱり…私はバカだ。


息が続かなくなって、ぷはっ…って唇を離して



「ふふっ。これからは…そういう関係だよ?

えっちしちゃうくらいに仲の良い友達。」



キミの瞳が潤んでる。


それは…情欲?愛情?慈愛?


キミが幼馴染に付けられたキズは…私が癒してあげる。


だけど…私は新しくキミに爪痕残しちゃうね。




「だから…浮気は今日だけだよ?」



そう言って、彼の首に手を回して耳元で囁いた。



キミも苦しいだろうけど…


それは…


女の子2人を好きになっちゃった罰だよ?





ーーーーーーーーーー





「真夜先輩…おやすみなさい。」


「うん。憂太、気をつけて帰るんだよー。おやすみー。」

玄関を出て、門のところで憂太を見送る。


結局…あのあと、

そのままもう1回しちゃって…時間がかなり遅くなってしまった。


ウチの親と鉢合わせするかもなーって思ってたけど、ギリギリセーフだった。


私的には…会ってくれても良かったけど。

小さくなっていく彼の背中を見送りながら、

罪悪感と嬉しさが両方いっぺんに襲ってきて…

「あーあ…やっちゃったな…」



そう呟いて…ウチに入った。






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