色が出てこない。あえて言えば、テレビの中だけは色がついた世界なのだろう。友達のなっちゃんは不思議な透明感を持って現れ、主人公を肯定し、褒める。そしてラストシーンでは――そんななっちゃんの存在は、ほんの少しの安心感と抉られるような心の痛みを私にもたらした。降りしきる雪、母親のシーツ、温かなうどん、ラストの湖畔の雪。全ての舞台装置が噛み合い、美しさを増幅させ、主人公の心情を見せつけてくる。お題に沿わせたストーリーとは思えない上質さを味わい、震えてみるのもいいかもしれない。
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