雨ふる晩のことでした

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（52文字）

これがホラーだ！ という気持ちで読了しました。
いやあ、良いです。好きです。
ホラーって怖いだけじゃなくて、こんなにも豊かなんだということを声を大にして訴えたい！ です。

てるてる坊主たちの醜さと、主人公の心の奥にあるどうしようもない闇。今日の雨音はいつもと違って聞こえます。

ざあざあと降る雨の夜。軒下で揺れる、白い紙で作られた、いくつもの坊主たち。それを見つめる少女の冷たい目。

首を絞めあげられた坊主たちは、つぎつぎに口をひらき、少女の心を読んだかのような言葉を吐き出し始めます。口すらない真っ白な頭から、おぼつかない言葉を、てんでんばらばらに。

帰ってこないお父さん。ひとりっきりの無口な少女。彼女の想いも彼女の存在も、すべて塗りつぶしていくかのような、雨、雨、雨。

童謡を思わせるようなタイトルが素敵。
怖くて美しいです。

外では雨が降っていて、女の子がぶら下がっているてるてる坊主を眺めています。

「人を呪わば穴二つ」なんて言葉がありますが、抑制になるのか謎に思っています。
恨みに満ちているとき、相手に報復したい時、自分の身の不幸なんて軽いものに思えてしまうから。

自分の幸せより、自分にとっての正義が為されることの方が大事な時もあるから。

相手の因果を収束し、自分もきっちり因果を終わらせた彼女は好きです。

雨音の中、閉じられていくひとつの世界が残酷で怖いけど、とても美しかったです。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（316文字）

　てるてる坊主と形はそっくりながら、呪詛のために作られた「雨坊主」たち。

　行方の知れなくなったたった一人の家族、父親のことを雨坊主に聞き出そうとする主人公の少女。
　真相を知りたい気持ち。父を苦しめたものたちへ復讐したい気持ち。それらが描かれていました。
　けれど最後まで読むと……もしかしたら、最大の目的は「旅立ち」だったのかもしれない。

　新たに読まれる方は、ぜひ少女の心のなかにあったものを見つけてみてください。