概要
十年前に消えた兄の歳に、私は今日、追いついた。
海辺の家で二十歳になった朝、
私は兄の部屋で十年前に自分が書いた手紙を見つける。
兄は二十歳のとき、ふいに家を出て戻らなかった。
晴れた日にだけ頭の靄が晴れる私のそばで、
兄はいつも静かに本を読み、寄り添ってくれていた。
書きかけのまま残された一行のことば。
止まったままの部屋の気配。
揺れる光の中で、十年前の兄にそっと触れる短編。
私は兄の部屋で十年前に自分が書いた手紙を見つける。
兄は二十歳のとき、ふいに家を出て戻らなかった。
晴れた日にだけ頭の靄が晴れる私のそばで、
兄はいつも静かに本を読み、寄り添ってくれていた。
書きかけのまま残された一行のことば。
止まったままの部屋の気配。
揺れる光の中で、十年前の兄にそっと触れる短編。