近年問題になっている化学物質過敏症について，原因と考えられている化合物の分子モデルや参考資料などを掲載していきたいと思います。
　なお，化学物質過敏症の名称や定義についてはまだ不明確な面があり，シックハウス，シックビルディングも関連用語です。英語ではmultiple chemical sensitivity（MCS）がよく用いられます（環境庁報告書（2000/02/02）参照）。
　1998年10月に発行された「室内空気汚染の低減のための設計・施工ガイドライン」と「同ユーザーズ・マニュアル」（健康住宅研究会）では，多数の空気汚染物質の中から優先的に取り組むものとして３物質（ホルムアルデヒド，トルエン，キシレン）・３薬剤（木材保存剤，可塑剤，防蟻剤）を選定しています（農林水産消費技術センター資料参照）。
　さらに，シックハウス〔室内空気汚染問題〕に関する検討会第２回議事録（厚生省，2000/04/27），同検討会中間報告書−第１回〜第３回のまとめ（2000/07/10）において，トルエン，キシレン，p-ジクロロベンゼンについても室内濃度指針案が出されました。

●原因化合物の例　　　《以下の分子モデルはアニメ画像です．ChimeがプラグインされていればChime版表示可 → Chime版の分子モデル表示》

分　類	分子モデル
ホルムアルデヒド	ホルムアルデヒド
トルエン	トルエン 参考：ICSCデータ
キシレン	o-キシレン 参考：ICSCデータ	m-キシレン 参考：ICSCデータ	p-キシレン 参考：ICSCデータ
p-ジクロロベンゼン （防虫剤）	p-ジクロロベンゼン 参考：ICSCデータ
可塑剤	可塑剤の例：フタル酸ジ-n-ブチル（DBP） 参考：「環境ホルモンリスト／可塑剤」，ICSCデータ
防蟻剤	防蟻剤の例：クロルピリホス 参考：農薬事典，ICSCデータ

【参考】
• NHK，朝のニュースの小特集「化学物質過敏症」，2000/02/08（7:49頃〜）
  番組で取り上げられた化学物質（※ICSCデータは国立医薬品食品衛生研究所へ）

  発生場所	使用目的	化合物（クリックでChime版分子表示）	室内濃度指針値*	化合物データ （ICSCデータへ）
  床	接着剤	ホルムアルデヒド	30分平均値0.1mg/m3（0.08ppm）以下 　〔厚生省・1997年，資料〕	−
  畳	防虫シート	フェニトロチオン	−	データ
  		フェンチオン	−	データ
  	畳床	ホルムアルデヒド	30分平均値0.1mg/m3（0.08ppm）以下	−
  		スチレン（C8H8）	−	データ
  土台	防蟻剤	ペンタクロロフェノール（C6HCl5O）	−	データ
  	木材保存剤	トリクロロエチレン（C2HCl3）	−	データ
  壁	溶剤	メチルイソブチルケトン（4-メチル-2-ペンタノン，C6H12O）	−	データ
  	塗料	トルエン	0.07ppm以下〔厚生省案・2000年〕	データ
  		キシレン（o-，m-，p-）	0.2ppm以下 〔厚生省案・2000年〕	o-，m-，p-
  クローゼット	接着剤	ホルムアルデヒド	30分平均値0.1mg/m3（0.08ppm）以下	−
  	防虫剤	p-ジクロロベンゼン（C6H4Cl2）	0.04ppm以下〔厚生省案・2000年〕	データ

  *　トルエン，キシレン，p-ジクロロベンゼンの室内濃度指針案は，シックハウス〔室内空気汚染問題〕に関する検討会第２回議事録（厚生省2000/04/27），同検討会中間報告書−第１回〜第３回のまとめ（厚生省，2000/07/10）参照．東京都立衛生研究所の提言も参考されたい．

• 『化学と工業』2000年9号のニュース欄p.1046に，“米国環境庁（EPA）が殺虫剤の使用を制限”の記事．上表のクロルピリホスについて家庭内での使用中止にするほか農産物への使用も制限し，生産量を半減させるとのこと．胎児・小児のときに低濃度のクロルピリホスに曝されると脳の発育に悪影響を及ぼすと結論づけている．　→　US EPA Organophosphate Pesticides: Documents for Chlorpyrifos（またはEPAサーチページで“chlorpyrifos”により検索）
• 朝日新聞記事　『シックハウス／原因物質を総量規制／厚生省新指針・業界の抜け道を防ぐ』（2000/06/24），『シックハウス対策／塩ビ手袋に含有「フタル酸エステル」／規制対象に追加』（2000/06/25）
  　※後者の記事では，室内空気中の濃度規制対象化合物約20種が2000/06/26開催の厚生省の検討会で提示されるが，このうちフタル酸エステル類（「環境ホルモンリスト／可塑剤」参照），エチルベンゼン（接着剤などに含有，ICSCデータ），スチレン，クロルピリホス（上図）の4種類が明らかになったとされる．　→　シックハウス〔室内空気汚染問題〕に関する検討会中間報告書−第１回〜第３回のまとめ（厚生省，2000/07/10）参照　《“個別のVOC指針値の補完的指標として、TVOCの指針値の策定方法を検討する”》

• 石川哲・宮田幹夫，「あなたも化学物質過敏症？」，農文協(1993)
• 能登春男・能登あきこ，「住まいの汚染度完全チェック　子どもを病気にしない暮らし」，情報センター出版局(1997)
• 植村振作＋反農薬東京グループ 編著，「床下の毒物　シロアリ防除剤」，三省堂(1999)
• 化学物質問題市民研究会 編，「化学物質の逆襲　汚染される人体・環境・地球」，リム出版新社(1999)
• 『化学』編集部 編，別冊化学「環境ホルモン＆ダイオキシン」，化学同人(1998) ※第III部が『化学物質過敏症』
• 小浦孝次，『住宅と化学物質』，化学と教育，47(12)，819(1999)
• 本間善夫，「２時間即決　環境問題」，数研出版(2000)　※第3章『化学物質過敏症』で平易に解説
• 本間善夫・川端潤，「パソコンで見る動く分子事典」，pp.257-258，講談社ブルーバックス(1999)
  　※p.227ではホルムアルデヒドを原料とするフェノール樹脂・メラミン樹脂等について，p.247などでは可塑剤についても解説（上記分子モデル表示ソフトもCDに収録）

• 健康住宅関連基準策定専門部会化学物質小委員会報告書（厚生省，1997/6/13）
• 快適で健康的な住宅に関する検討会議報告書について（厚生省，1998/8/5）
• 厚生科学研究「母乳中のダイオキシン類に関する調査」結果概要（厚生省，1999/08/02）
• 居住環境中の揮発性有機化合物の全国実態調査について（厚生省，1999/12/14）
• 生活環境審議会生活環境部会議事録（厚生省，2000/02/09）
• シックハウス〔室内空気汚染問題〕に関する検討会（厚生省）　第１回議事録（2000/04/05）　｜　第２回議事録（2000/04/27）　｜　第３回議事録（2000/06/26）　NEW!
• シックハウス〔室内空気汚染問題〕に関する検討会中間報告書−第１回〜第３回のまとめ（厚生省，2000/07/10）　｜　トルエン、キシレン及びパラジクロロベンゼンの室内濃度に関する指針値　｜　室内空気中化学物質の採取方法と測定方法
• 室内空気汚染にかかるガイドライン（案）に対する意見の募集結果について（厚生省，2000/06/26）　室内空気中化学物質の濃度指針値，採取・測定方法など

• 「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究」報告書について（環境庁，2000/02/02）
• 平成11年度PRTRパイロット事業報告書について（環境庁，2000/08/25）

• 農林水産消費技術センター　｜　木とくらし
• シックハウス症候群に関連する科学技術文献情報（JST）
• 室内化学物質空気汚染調査研究委員会（科学技術庁 科学技術振興調整費生活者ニーズ対応研究生活・社会基盤研究）
• 国民生活センター　｜　シックハウスにならないために　｜　 急増する“シックハウス症候群”
• 室内空気中の化学物質（東京都立衛生研究所）
• 「平成11年度　室内環境中の揮発性有機化合物等の実態調査」結果について（東京都衛生局，2000/08/02）
• 感染症・疫学情報：部屋の空気（横浜市衛生局衛生研究所）

• 家の中の化学物質を考えてみよう！（情報流通市場・NACS-net）　｜　“シックハウス症候群”でのサイト検索結果
• 快適で健康的な住宅に関する検討会議専門部会報告書（日本公衆衛生協会）　｜　居住環境における揮発性有機化学物質に関するガイドライン
• 最新文献情報・ホルムアルデヒド（医学中央雑誌）
• 室内空気汚染対策について（住宅金融公庫）

• 研究論文等リスト（お茶の水女子大学・田辺研究室）
• “雑感「室内汚染」”（横浜国立大学・中西研究室）
• “環境化学物質の生体への影響とくに化学物質過敏症”（元北里大学医学部最臨床環境医学会理事長・石川 哲氏）

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• トピックス
  • “「化学物質過敏症」、日本での研究・治療ようやく本格化”（Health Media）　｜　講演要旨（1998/08/01）
  • NHKクローズアップ現代，“買った家に住めない・化学物質による室内空気汚染”，1999/11/10　　→　個人による内容紹介
  • 講演『化学物質過敏症って何』，講師：石川哲さん（北里研究所病院），2000/03/04・13:30〜・渋谷区勤労福祉会館にて〔終了〕　　→　朝日新聞・2000/02/25記事より　《参加者は香水や整髪料をつけないこと》
  • 第３回シックハウス（室内空気汚染）問題に関する検討会の開催について（厚生省），2000/06/26・13:00〜〔終了〕
  • 「第三回全国化学物質過敏症患者会」，柳沢幸雄さん（東京大学）の講演ほか，2000/10/04・13:00〜・国民生活センター会議室にて（予定）　《会場では整髪料・香水・煙草・服の防虫剤等はご遠慮ください》　NEW!

• 「生活環境化学の部屋」ページ内の参考情報
  • 化学物質のリスク（極めて単純な推定法の例）　｜　同・問題編
  • 環境ホルモン情報
  • 分子の学習帳　《本ページ以下は分子モデル表示用プログラムChemscapeChimeが必要です 》
  • 農薬事典

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