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バゲットにチャパタにクロワッサン……。百貨店やオンラインショップで購入した冷凍パンを焼き上げた! 
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             冷凍パン。 
          
             聞きなれない名前だが、実は今これ、百貨店や高級スーパーの冷凍食品売り場を静かに席巻中というもの。多くは欧米からの輸入品で、完全に焼き上げたものではなく、九割方焼いて冷凍した半焼成パン"パートべイク・ブレッド"と呼ばれるタイプだ。焼き途中なわけだから、色は妙になまっちろい。これを、オーブンで焼き上げれば、自宅で焼きたてのほやほやが楽しめる、というのがウリ。しかも、フランスやドイツの、本場の味を焼きたてで味わえるのだから、パン好きにはたまらない。それでは早速、いただきま......と、その前に、この新顔パンの出自について勉強してみようではないか。 
          
             まずは、外国人御用達の高級スーパー「ナショナル麻布」、食品担当の徳永章さんにお話を伺った。「冷凍パンは20年ほど前から扱っています。日本人には、冷凍はレベルダウンしたもの、という印象がありますが、欧米人は常備食として重宝し抵抗がないようです。大量購入する方もいます」とかで、欧米人には定着しているよう。パン大国のフランス現地の人にとっては、2、3日前に買ったパンよりも冷凍=フレッシュという感覚をもっているという話も小耳に挟んだ。 
          
            
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| 焼く前、色白のパートベイク・ブレッド。 | 
 
 
          
             日本での売れ行きはどうなのだろう。流行の発信地、プランタン銀座では、「3年ほど前から取り扱っていますが、半年前から売り上げが上昇。種類も増やして今は5種類あり、人気のプチパンは、売り切れになることも」と、広報担当の村上薫さん。また、冷凍パン人気の一端を担ったドイツ製の"メグレ・バゲット"は、高級スーパーでの展開から、昨年秋にジャスコでの販売にも乗り出した。切り目を入れたバゲットに、ガーリックやハーブ入り発酵バターを挟んだ商品で、1本420円。決して安くはない値段にもかかわらず幅広い客層に受け入れられ、4月からは何とコンビニ進出! と、かなりの好調ぶりを見せている。 
          
        
 
      
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業務用冷凍パンの出現により、 焼きたてパンが全国に普及 | 
 
          
          
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| 最近、「冷凍パン」が気になります | 
 
          
 
 
        
          
            
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ナショナル麻布 プチパンやクロワッサン、独自ルートで入手した完全焼成タイプのベーグルやスプラウトパンなど、豊富に冷凍パンを揃えている。 ●東京都港区南麻布4-5-2 TEL03-3442-3181 営/9:30〜20:00 休/無休 
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             さて、冷凍パンはすべてこのパートべイク・ブレッドなのかというとそうではなく、他にも種類がある。焼く前の、生地の状態で冷凍した業務用の冷凍パンもそのひとつだ。日本では30年も前にその技術開発に成功し、以来、業務用冷凍パンは欠かせない存在に。ホテルやレストランや待角のパン屋で何気なく食べているパン。焼きたてと銘打っていても、店内で粉からつくるのではなく、実は焼きたての"冷凍パン"を食べていることも多いのである。 
          
             業務用の冷凍パン出現のおかげで、あらゆるところに焼きたてパンが普及したわけだが、日本でその源を築いたのはベーカリーの大御所「アンデルセン」。創始者・高木俊介氏のもとで研究が始まり、アメリカより技術を導入、7年がかりで成果を挙げ、1972年に冷凍パン技術の特許を取得。さらに業界の活性化を目指し、それを一般に公開したというから太っ腹である。 
          
             パン生地を予備発酵、低温発酵そして冷凍するという技術。この一大発明により、冷凍パンを導入した小売店「リトル・マーメイド」は誕生。工場で生地をつくり、成形後に冷凍したものを、各店舗にて解凍→発酵→焼成する。店舗に必要なパン職人や設備は省力化、誰でも比較的容易に店を持てるようになった。 
          
             そうして、現在は500店舗にのぼるフランチャイズチェーンに成長しているが、開発の苦労は絶えなかったと、商品開発部長の児玉正治さんは言う。 
          
            
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冷凍パンは、風味の落ちるのが早い。焼きたてが命なので、熱々のうちに食べよう! 
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            「最も苦労したのは、冷凍することでいかにイーストの細胞を殺さないようにするかという点でした。イーストが凍ることで活動しなくなってはパンになりませんから」。霜が降りて倒れたネギが、陽に当たるにつれピンと立ち直るのを見て、もしや! と、ネギのエキスをパンに練り込んでみたこともあるというから、苦労の程がしのばれる。今では、イーストも改良され昔ほど難しくはなくなったが、それでも今なお、更なる品質向上を目指し、研究中とか。その成果を示すべく今年2月、埼玉県武蔵浦和に、より手間をかけ冷凍パンのおいしさを追究した「マーメイド・ベーカリー」をオープンさせている。 
          
             華やかな表舞台に踊り出たパートベイク・ブレッドがある一方で、裏方では業務用の冷凍パンが健気な努力で進歩を遂げているのだ。 
          
        
 
      
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オンラインショップで、 冷凍パンワールドを楽しもう | 
 
          
          
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| 最近、「冷凍パン」が気になります | 
 
          
 
 
        
          
             パートベイク・ブレッドに話を戻すとしよう。冒頭では、店頭市場について触れたが、インターネット上ではより盛り上がりを見せていて「冷凍パン」の文字を入力するとかなりの件数がヒットする。 
          
            
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「今後、さらに冷凍パンをアピールしていきます!」と、「セレクトパンヤ」の田中明子さん。 
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             2001年9月、海外の冷凍パンにいち早く目をつけてサイトを立ち上げたのは、東京・三宿のパン店「ルセット」を経営する田中明子さん。 
          
            「ヨーロッパ現地の味を日本で味わえたら、パン好きの選択肢が広がるなあと思って。冷凍パンを知ってから、いろいろ試してみましたが味はピンキリでした」 
          
             そこで、「セレクトパンヤ」のサイト名通り、田中さんの眼鏡にかなったものをセレクトして販売。フランスで大人気のムーラン・ブルー社のBIOパン(ビオパン。有機パン)のような高級冷凍パンも扱い、無類のパン好きから多大な支持を得ているという。 
          
             ほかにも、飲食店に卸している輸入冷凍パンを小売り扱いにした「ダイニングプラス」や、スペインものを扱う「パン・デ・ユーロ」など、この1〜2年で開設されたオンラインショップが目白押し。パンの種類も、パートベイク・ブレッドのバゲットやチャパタなどに加え、発酵前の生地を冷凍したクロワッサンなど。バラエティー豊かな冷凍パンの写真が、サイトを開くたび目に飛び込んでくる。 
          
        
 
      
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焼きたてをすぐに食べよう。 焼き方ひとつで味に差が出る | 
 
          
          
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| 最近、「冷凍パン」が気になります | 
 
          
 
 
        
          
             肝心の味はどうかと、さまざまな冷凍パンを買ってお待ちかねの試食会を行なった。温めたオーブンに入れて、パンによって違うが待つこと10〜20分。香ばしいパンの焼ける匂いはかなりいい感じ。そして熱々のうちは、表面がカリッ、中はふっくら。焼きたてならではの風合いも楽しめた。が、「セレクトパンヤ」の田中さんが言っていたように、味そのものはピンキリ。ものによっては、わずか数分でパサついて風味の落ちてしまうものもあった。やはり、冷凍することで味はレベルダウンしてしまうのだろうか。 
          
            
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トースターで焼く場合は、アルミホイルで巻いてから焼き、仕上げにホイルを外して表面にこんがり焼き色をつける。 
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            「アンデルセン」の児玉さん曰く「パンの風味というのは、生地を発酵させるときに生まれるもの。ところが、パートベイク製法のように発酵が終わって半焼成して冷凍したものは、解凍するときに風味や香りが水分と一緒にとんでしまう。自宅で焼き上げる最中は、カラメル反応でいい香りが出ますけれどもね。また、技術は進化していますが、冷凍パンは水分がとぶのが早いので劣化、味の落ちが早いというのも否めません」とのこと。 
          
             しかし、自宅で焼きたてを味わえるという醍醐味は大きい。加えて、粉や水も違う、本場の味わいそのものが新鮮なので、ぜひ試してみてほしい。 
          
             また、焼き方によっても味は左右されるので、コツを覚えておこう。商品によって焼き方は異なるが、「デニッシュ以外は半解凍に。冷凍庫から出してすぐ焼くとおいしい焦げ目はつきません。そして、全体に水滴がつくぐらい霧吹きをたっぷりして、指定の温度で焼くといい」と「セレクトパンヤ」の田中さん。多少、指定時間をオーバーしても、焼き色がつくまで焼いたほうが美味。焼くには、オーブンが好ましいが、ものによってはアルミホイルで包めばトースターでも焼ける。 
          
        
 
      
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国内では名店のパン屋から 急速冷凍パンを全国に発信 | 
 
          
          
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| 最近、「冷凍パン」が気になります | 
 
          
 
 
        
          
            
 
ブランジェリー コム・シノワ アンド オネスト カフェ | 
 
 
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ハード系を中心に13種3000円、18種5000円のセットがある。バゲット3本、などの細かい注文にも対応してくれる。2〜3週間冷凍保存可。注文は電話かFAXで。 
●兵庫県神戸市中央区御幸通7-1-16 三宮ビル南館地階 
TEL078-242-1506(FAX兼用) 営/8:00〜20:00 休/水曜
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| デュヌ・ラルテ | 
 
 
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ブリオッシュやセーグルなど3000円セットを宅配。1週間冷凍保存可。注文は電話、FAX(03-5464-2474)か、ホームページ(www.dune-rarete.com)より。 
●東京都港区南青山6-13-9 2階 
TEL03-5464-2604 営/11:45〜20:00 休/水曜
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             一方、国内の街場のパン屋の中には、完全に焼き上げたパンを冷凍して宅配する店が出現してきた。 
          
             東京・青山の「デュヌ・ラルテ」は、開店当初から冷凍発送を視野に入れ店舗設備を整えていたという。シェフの柴田知実さんによると、「うちのパンは、添加物や保存料を一切使っていないので冷蔵発送はできません。模索した結果、店に来られない遠方の方にも一番いい状態で送れる手段が、パンを焼いてから15分以内にマイナス45℃で急速冷凍をかけるという方法でした」。 
          
             理想の形に焼き上げ、そのおいしさを封じ込めた冷凍パン。本来、保存食ではないパンの焼きたての風味を、保ち味わえるという意味で、このような冷凍パン技術には大きな可能性が秘められているように思う。 
          
             本場の味を焼きたてで楽しめるパートベイク・ブレッドの流通発展。焼きたてパンを全国に広げた業務用冷凍パンの知られざる業績と進化。そして、名店のパン屋の焼きたての味を届ける急速冷凍パンの可能性。今後、冷凍パンはもっと面白いことになりそうで、日本のパン好きと、より密な関係になってゆくだろう。 
          
            
 
          
            
 
          
            
 
          
            
 
| 冷凍パンの取り扱いサイト | 
 
	
        セレクトパンヤ
         
        www.selectpanya.com
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おいしい冷凍パンだけをセレクトして、現在20ほどのブランドの輸入冷凍パンを販売。BIOパン(有機パン)セット、ガーリックセットなど8種の定番セットがある。冷凍保持期限は6カ月。現在は、常温のカンパーニュなども扱う。
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        ダイニングプラス
         
        www.dining-plus.com
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世界各国の食材を扱う輸入食品専門商社が運営するオンラインショップ。小売り用の冷凍パンは、フランス産の減農薬小麦を原料にしたバゲットに田舎パン、ドイツのカイザーやクロワッサンなど20種ほど取り揃えている。
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        パン・デ・ユーロ
         
        www.style-i.net/spain/top.html
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スペインはBellsola社の半焼成タイプの冷凍パン、チャパタやバゲットなど16種類を扱う。ほかにも、地中海沿岸の国々から輸入したパテやオリーブオイル、ジャムなど、パン関連の食材を揃えている。サイトは、2003年8月に開設。
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