2012年12月、サンフランシスコ・テンダーロイン地区の狭苦しいアパートで、ある若者たちがテック系のスタートアップを立ち上げようとしていた。彼らはYコンビネーターから17万ドルの投資を受けたが、安価な携帯電話中継塔を開発するという当初の計画はすでに失敗に終わっていた。
7万ドルにまで減った資金が尽きるまでに、彼らはなんとか新しいソフトウェアを開発しようと懸命になっていた。資金を持続させるには、どうすればいいのだろう? 家賃もサンクコストだ。必死に働き続ける彼らには、もはや普通の社会生活すらない。残った資金を見直した彼らは、大きな問題に直面していた。日々の食べ物をどうするか、という問題だ。
彼らは、インスタントラーメン、コーンドッグ、コストコで買った冷凍ケサディージャなどを食べ、壊血病を免れようとヴィタミンCのサプリメントを飲んで、食いつないでいた。それでも食費はかかり続ける。起業メンバーのひとり、ロブ・ラインハートは、何も食べられないという状況が我慢できなかった。「食事は、わたしたちにとって大きな負担でした」。いま、彼はこう語る。「食事には時間も労力もかかります。(当時は)小さなキッチンしかなく、食器洗い機なんてものとは無縁でした」
彼は、映画『スーパーサイズ・ミー』を地で行く決心をした。マクドナルドの1ドルメニューと、リトルシーザーズの5ドルピザだけで生活しようとしたのだ。しかし、そんな生活は1週間も続かなかった。「このままだと死ぬんじゃないかと思いました」と彼は言う。次に試したのは、そのころ流行していたケールダイエットだ。ケールなら安価で手に入る。しかし、それもうまくいかなかった。「ほとんど餓死しそうでした」
ジョージア工科大学で電気工学を学んだ25歳の若者、ラインハートは、食べ物をエンジニアリング的な視点で考えるようになっていった。「必要なのはアミノ酸で、牛乳そのものではありません。炭水化物は大事ですが、パンは不要です」と彼は言う。果物や野菜は、必須ヴィタミンやミネラルの供給源だが、「ほとんど水でできて」いる。彼は次第に、人が生存するうえで、現在の食事は非効率な方法なのではないか、と考えるようになった。「複雑で、高価で、不安定な方法。わたしにはそう思えたのです」
化学成分を調合して、直接摂取してはどうだろう? ラインハートは、ソフトウェア開発を少しの間中断し、栄養生化学の教科書や、FDA(米国食品医薬品局)、USDA(米国農務省)、医学研究所などのウェブサイトを調べて、生存するために必要な35種類の栄養素リストを書き上げた。そして食料品店に行く代わりに、その栄養素を粉末や錠剤というかたちで、インターネットを使って購入した。それらをブレンダーに入れ、少量の水を加えてできたのが、ネバネバしたレモネードのような、化学物質の塊だった。
「わたしはこれを食べて生きていこうと思いました」と、ラインハートは言う。彼はそれを、「ソイレント」と名づけた。その名前から、チャールトン・ヘストン主演で制作された1973年のSF映画『ソイレント・グリーン』を連想する人も多いだろう。人口増加と環境汚染による、ディストピアな未来を描いたその映画のなかで、人々はソイレント・グリーンと呼ばれる奇妙な食べ物を食べて生きていた。映画の結末で、ソイレント・グリーンが実は人間の肉体からつくられていた、というおぞましい事実があきらかになる。
ラインハートは、この粉末で起業できることに気づいたと言う。「ほかのどんなアプリより、わたしの人生にとって価値があるものに思えました」
ラインハートのパートナーたちは懐疑的だった。そのひとりは「とても奇妙だったよ」と言う。彼らはコストコでの買い物を続けた。1カ月後、ラインハートは自身の実験結果を「わたしはいかにして食べるのをやめたか(How I Stopped Eating Food)」というタイトルのブログ記事で公開した。
記事は「ユリイカ(われ、見出せり!)」的なトーンにあふれていた。ラインハートは、これらの化学物質を「おいしい。いままで食べたなかで最高の朝食だ」と投稿した。ソイレントを飲むことで、時間的にも金銭的にも節約できた。食費は月470ドルから50ドルに激減し、身体的にも「まるで“600万ドルの男”(米テレビドラマの登場人物でサイボーグになった宇宙飛行士)にでもなったような気分でした。体質はあきらかに改善し、肌は美しく歯は白く、髪は太く、頭のふけは消えていました」と言う。
ブログでは、「わたしはこの1カ月、まったく食事をとらなかった。それがわたしの人生を変えた」と書いた。数週間後、ブログ記事は「ハッカーニュース」(テック系の人々が集まる井戸端会議的サイト)のトップに掲載された。その反応は大きく2つに分かれ、「ボブよ、安らかに眠れ」というコメントが寄せられた一方で、調合法を尋ねる者も出てきた。「オープンソース」の潮流に乗って、彼は調合法をブログにアップした。
この10年間にシリコンヴァレーから拡がったカルチャーのひとつに「ライフハッキング」がある。日常生活を合理化・効率化し、本来やらなければならないことのために、日々の負担を減らしてくれるような工夫や知恵のことだ。
ラインハートの「未来の食品」を優れたアイデアだと感じた数多くのライフハッカーたちは、それを自分自身で試し、独自のヴァージョンを開発していった。やがてReddit上で、カルシウムやマグネシウム粉末はどれくらいが適量かといったコメントの応酬が始まった。ブログ投稿から3カ月ほどが経って、ラインハートは、この粉末で起業できることに気づいたと言う。「ほかのどんなアプリより、わたしの人生にとって価値があるものに思えました」。彼と彼の同僚たちはソフトウェア開発を中止し、合成食品ビジネスに着手した。
新しいソイレントは「ドリンク版」:Soylent 2.0、予約受付開始
クラウドファンディングによって2時間で20万ドルを調達したソイレントは、その後も成長を続けている。2015年には2,000万ドルを追加調達し、生産を50倍に拡大。同年10月には「ドリンク版」である「Soylent 2.0」の販売も開始した。
投資家たちの関心を引くため、ラインハートたちはインターネットを活用した。クラウドファンディング上で、1週間分のソイレントを65ドルで入手できるキャンペーンを立ち上げたのだ。公募の目標額10万ドルを1カ月で集められればいい、と彼らは考えていた。しかし、実際にキャンペーンが始まると、「2時間で目標に達しました」とラインハートは言う。そして2014年4月、製品版ソイレントの最初の3万ユニットが、アメリカ全国の出資者に向けて出荷された。製品化のために、クラウドファンディングの資金に加えて、Yコンビネーターや大手投資機関のアンドリーセン・ホロウィッツをはじめとするシリコンヴァレーのヴェンチャーキャピタルから、100万ドルの出資を受けた。
ソイレントは「食品の終焉」といった、どちらかというと暗い未来予測とともにメディアにとりあげられてきた。ピザパーラーやタコススタンドのない世界、バナナブレッドの代わりにただベージュ色の粉末が置いてあるキッチン、スパゲッティナイトやアイスクリームソーシャルはなくなり、どろどろした液体をすするだけの夕食、といった情景だ。
しかし、ラインハートが目指しているのは、そういうものとはまったく違う。「多くの人が本来の食事を忘れてしまっています」と言う彼は、将来の食事は「効用や機能のための食事と、体験や社交のための食事のふたつに分かれていくだろう」と予想する。ソイレントは、日曜日のポットラックパーティ(参加者が食べ物を持ち寄るホームパーティ)のためのものではなく、冷凍ケサディージャを置き換えるものなのだ。
2014年4月、製品版ソイレントの初回生産分が出荷されてほどないころ、わたしはラインハートとその仲間が働く新しい本社を訪ねた。
ロサンゼルスのスタジオシティ地区にある、大きな家屋だ(彼らはその半年前、家賃を浮かそうとサンフランシスコから移転していた)。エントランスで会ったラインハートは、ジーンズに黒のVネックTシャツ、テニスシューズといった出で立ちだった。彼が健康そうに見えたのは、心強く思えた。というのも彼はこの1年半ほど、食事の90%はソイレントを飲むだけという、ほとんどソイレントだけの生活を送っていたからだ。
鋭い風貌、優しい声、背筋をぴんと伸ばした毅然とした歩き方。ラインハートは、まるで若い宣教師のようだ。実際、彼はキリスト教徒だが、どこか世代を超越した感じがする。そうした印象は、ソイレントが、Instagramでランチの写真をシェアするような同世代の流行とはまったく真逆にあることと関連しているように思えた。
彼には、ポップカルチャーやゴシップは似合わない。あらゆる消費文化と無縁なように見える。彼らへのこの長いインタヴューの最中も、彼と彼の同僚たちは「マイクロ流体は診断に使う以外の応用があると思うかい?」などという質問を次から次へとわたしに浴びせてきた。なおラインハートには生来のユーモアセンスも備わっていて、ブログで、空想の発明をテーマにしたコメディのドラフトを公開している(遺伝子組み換え子猫:「未来とは、にゃんだ(The future is meow)」)。
ソイレントの本社に向かう途中、わたしは、とある高級カリフォルニア・ジュースバーに立ち寄り、9ドルの生搾りジュースを買った。ガラス製の牛乳瓶に満たされたそのジュースを、ラインハートはまるで石槍でも見るようして「これはある意味、古代の品物ですね」と言った。そして、その成分はほとんど砂糖だ、と指摘した。「見かけは素朴で自然で心地いいものですが、実際はかなり体に悪いものですよ」
「食べ物より“純粋”なもの」からより効率的に栄養を摂取しようという考えは、古くから人類共通の夢だった。古代ギリシャ人は、神の食べ物とされるアムブロシアを食べた者は永遠の生命を授かる、と書き残した。
宇宙時代の幕開けにいるわたしたちが夢見てきたのは「錠剤食」だ。レイ・ブラッドベリの小説『火星年代記』では、主人公のもつマッチ箱の中には、数週間分の食事に相当する錠剤食が入っていた。TVアニメ「宇宙家族ジェットソン」には、美味な錠剤食が人々の人気を得るが消化不良を引き起こしてしまう、というエピソードがある。
実際のところ、ソイレントという名前は、映画『ソイレント・グリーン』の原作小説である『人間がいっぱい』(1966)から取ったのだ、とラインハートは言う。小説では、大豆とレンズ豆を組み合わせた食物が、人口増加による滅亡から人類を救う鍵になる。
しかし食べ物への夢は、悪夢にもなる。ウィリー・ウォンカの『チャーリーとチョコレート工場』は悲惨な3コースのディナー・チューインガムを発明し、映画『マトリックス』では、ポッドの中に閉じ込められた人間は、ほかの人間の体を液状化したものをチューブ越しに供給されることで生き続けていた。
昨今のテクノロジーの発展によって、人々の間には食べ物への懸念が広がり、食品大手のロビー活動や遺伝子組み換え作物、工業化された農場やラウンドアップ(除草剤)などがまだなかった時代を懐かしむ声が日々強くなっている。
ソイレントが生まれたサンフランシスコの湾をはさんだ向かいには、この国のブルジョア的な食事の聖地といえる高級レストラン、シェパニーズがある。アリス・ウォーターズが開いたこのカリフォルニアの産地直送レストランは、青銅器時代の農家と変わらないようなやり方でディナーの食材を提供している。
しかし、この「農場から食卓まで」という考え方は、労働者階級とは無縁だ。取り残された彼らは、低価格食品に頼っている。その結果、肥満や糖尿病、そして皮肉にも栄養失調に陥っているのだ。
食糧問題で注目を集める「昆虫食ビジネス」
食糧不足を解消するカギとして、国連も注目する昆虫食。今年3月には、コオロギ粉末を使用したプロテインバーのメーカー、Exo社が400万ドルの資金調達に成功するなど、投資家もその可能性に期待をかけている。
最近発表された国連の報告書は、気候変動が世界的な食料供給を脅かし始め、その影響は貧困層以外にも広がり始めている、と警告している(レストランチェーン、チポトレは最近、気候変動を理由に、やむなくワカモレ〈アボカドのディップ〉の販売を中止すると告知した)。
オックスファム社で食料政策と気候変動調査を担当するティム・ゴアは、「人々は気候変動を、食べ物の種類、その価格、入手の難しさや選択肢の数といった、食料への影響というかたちで知ることになるだろう」と述べている。食料自体も気候変動の主因のひとつだ。温室効果ガスの約15%は家畜からもたらされ、史上最悪の干ばつに襲われたカリフォルニアでは、水資源の約8割が農業に使用されている。
ラインハートは農業の支持者ではない。彼は、農場のことを「とても非効率な工場」だと言い、農業はもっと産業化されるべきだと考えている。「問題は労働です。農業は最も危険で汚い仕事のひとつで、伝統的に下層階級が担ってきました」と彼は言う。「肉体を使う仕事や、ものを数えたり測ったりする手仕事が数多く残っています。それらは自動化されるべきです」
ラインハートが案内してくれたソイレント本社は、従業員の住居も兼ねている。黒光りする床、白色の組み立て式家具、巨大な窓、裏庭のプール。やや古びた感じの家屋は「マイアミ・バイス」に出てくる麻薬密売人の家のようだ。しかし、地下室で計量器に載せられた大きな袋の中にある白い粉末は、コカインではなく、タンパク質やカリウムといった栄養素やキサンタンガム(増粘剤)だった。キッチンにはブレンダーしかない。
ラインハートは冷蔵庫を開け、「未来の大学生の冷蔵庫です」と言った。そこには、ミラーライトと調味料、そしてピッチャーに入ったソイレントがあった。ベビーキャロットの袋も目に入った。食べ物だ! ソイレント以外の食品はすべて「楽しみを得るためのもの」と語るラインハートは、そのベビーキャロットは同僚がおやつ用に買ったものだ、と説明した。
ラインハートはソイレントを取り出した。彼らがたどり着いた調合法は、主要な食品群をすべて考慮している。脂質はキャノーラオイルから、炭水化物はマルトデキストリンとオーツ麦の粉から、タンパク質は米から、それぞれ抽出される。これに、オメガ3脂肪酸を得るための魚油(菜食主義者は亜麻仁油で代用してもいい)と、マグネシウム、カルシウム、電解質などのさまざまなヴィタミンやミネラルが加えられる。
ラインハートはソイレントに味を付けることには乗り気ではなく、いまのところ、ヴィタミンの苦味を和らげるために少量のスクラロース(人工甘味料)を加えているだけだ。これは、ソイレントはあくまでも効用のための食品だ、という彼の考えに合致しているように思える。
ソイレント以外の食品はすべて「楽しみを得るためのもの」と語るラインハートは、そのベビーキャロットは同僚がおやつ用に買ったものだ、と説明した。
「最高のテクノロジーは表面からは見えないものです」と彼は言う。「水には味も風味もほとんどありません。でも、水は世界で最も普及した飲み物です」。彼は、黄みがかったベージュ色の液体が入ったピッチャーを手で持ち上げた。「ここに体に必要なものすべてがあります。もう少しいかがですか?」
ソイレントに、慣れ親しんだ味覚を感じる人は多いようだ。支配的な感覚のひとつは、パン生地のような感触だ。液体は滑らかだがザラッとした触感で、酵母臭と心地よい清涼感がある。クリーム・オブ・ウィートや「祖父の時代のメタムシル」にたとえる人もいるようだ。
わたしも少しすすってみた。水で薄めたホットケーキ生地のような感触で、不快な味とは思わなかった。まずくはない。もう少しすすってみる。すると突然、急激な満腹感に襲われ、手が止まった。「どれくらい飲んだんでしょうか?」とわたしが尋ねると、ラインハートはグラスを調べ、「150~200kcalですね。グラノーラバーとほぼ同じです」と言った。
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ラインハートの寝室には、飾り気がほとんどない。ただ、スティーヴン・ピンカー、アイザック・アシモフ、バックミンスター・フラーといった、「科学技術ユートピアニズム」の書籍が並んでいた。そのなかでもラインハートは、ジオデシック・ドームを発明した未来学者、バックミンスター・フラーの大胆な創造性と実践性を賞賛していた(彼は、フラーのことを「バッキー」というニックネームで呼ぶ)。彼は壁に貼られた、人間の代謝経路を表したポスターを指さし、こう言った。「これが生命。歩く化学反応です。バッキーは、人体を水力発電機だと考えていました」
ラインハートは自身を「落ちぶれた自由主義者」だと評している。自由を最大化することが最善だと信じる一方で、資本主義の無駄については嫌悪感をもっている。
「もの自体には価値はありません」と言う彼は、〈服を着る〉という行為を最適化するために、2本のジーンズを交互にはき、Amazonで購入したナイロン製、あるいは、ポリエステル製のTシャツを数週間着たあと、寄付する。衣服が臭ってくると冷蔵庫に入れ、臭気を取り除く。「数時間かかることもあります。将来はタオルを着たいですね」と彼は言った。
以前はマスター・ベッドルームだった部屋で、ソイレントのメンバーがラップトップに向かっていた。彼らは、オタク系のボーイバンドのようだ。
サーファー風のマット・コーブル、ハーヴァード大ラグビー部の元主将で筋骨隆々としたデイヴィッド・レンテルン、細身で温厚そうなジョン・クーガン、南北戦争時代のようなあごひげを生やしたジュリオ・マイルス。ラインハート同様、この若い面々もソイレントだけの生活を実践していた。レンテルンは大学院時代に増えた体重を元に戻すことができたという(「カロリー制限も加えた実験をしているんです」と彼は教えてくれた)。クーガンは、ソイレントだけで生活するようになってから「健康的な減量」ができているそうだ。身長2mを超える彼は、かつてのインスタントラーメンの日々は、十分なカロリーを摂取できていなかったという。
はじめからこの製品をソイレントと名づけるつもりだったのか、と尋ねてみた。わたしの非公式なフィールド調査によれば、控えめに言っても「大豆(ソイ)」や「土(ソイル)」といった不快なイメージがあるし、なによりその名は、「ソイレント・グリーンは人間だ!」という、ぞっとする映画のセリフを思い出させる。
「投資家、メディア、わたしの母、誰もが名前を変えるようアドヴァイスをくれました」とラインハートは言った。「ぼくのお母さんもね」と、レンテルンはつけ加える。ラインハートは、その名前のもっている自虐的な趣きと、グルメ志向をからかう感じが好きなのだと言う。「自然、新鮮、有機的。そんな一般的な価値観とは、正反対の名前です」
いずれにせよほとんどの若者は、ソイレント・グリーンが人間だ、という情報を手に入れることはないだろう、と彼は言う。「『ソイレント』でググれば、わたしたちのほうが映画より先に出てきますから。考えてみてください、スターバックスだって『白鯨』に出てくる男の名前なんです」と彼はつけ加えた。
病院では、もう何十年も前から流動食が使われている。50年前、医師たちは、食べられないほど重症の患者に、食品を細かくすりつぶして栄養チューブで与えた。やがてエンシュアで知られるアボット・ニュートリションなどの企業が販売を行うようになり、代用食品はより一般的に、そして、より科学的になった。
1960年代の初め、NASAがタング(粉末ジュース)を宇宙飛行に利用し、粉末飲料が知られるようになった。そして「さまざまな分野に爆発的に広がった」と、ボストンにあるベス・イスラエル・メディカル・センター臨床栄養部門の主任、ブルース・ビストリアンは言う。60年代から90年代のダイエットブームを追い風に、どれくらいカロリーを摂取したかを容易に知ることができる粉末食品は、広く普及した。メトリカルやスリムファーストが飛ぶように売れ、「朝食にシェイク、昼食にシェイク、そして夕食には美味しいディナーを!」という時代だった。
現在、本格的なボディビルダーはマッスルミルクを愛用している。筋肉を増やすよう設計されたプロテインシェイクだ。ビストリアンは、ソイレントの背景にあるのは「決して宇宙工学などではなく、優秀な栄養士なら誰でも、これらの食材を適量集め、調合することができる」という考え方だと言う。
おそらく、ソイレントと、エンシュアやマッスルミルクなどの飲み物との大きな違いは、マーケティング戦略にある。ソイレント(とその栄養成分)は、ターゲットをスポーツ選手や高齢者ではなく、効率性を重視するオフィスワーカーに定めている。そして、投資家たちはこの戦略は必ず成功するとみている。
Yコンビネーターのサム・アルトマンは、グーグルとフェイスブックが登場する前からサーチエンジンやソーシャルネットワークは既に存在していた、という話を引き合いに出し、「思いつくアイデアのほとんどは新しいものではない。ただ実行されなかったか、市場が適切ではなかっただけのことだ」と言う。ラインハートは彼の製品を、少し異なった見方でとらえている。ソイレントだけで生きていけるはずだ、と考えているのだ。
マッスルミルクを製造しているCytoSport社の前CEOで現在ソイレントの顧問を務めるクリス・ランニングは、この考えは「リスクが大きい」と助言する。「人類は、いままでそんな生き方をしたことがないのだから」
わたしがインタヴューした医師も、人間がソイレントだけで生存することは可能だと言う。しかし、それはまともな考えなのだろうか? 議論の矛先はたいてい、従来の食品に含まれる物質、とりわけ植物由来の化学成分に向けられる。それらの成分は生存のために必須なものとは考えられていない。
しかし、疫学の研究は、それらがなんらかのかたちで健康に貢献していることを示唆する。トマトの赤み成分であるリコピンは、前立腺がんの発症確率を低減し、ブルーベリーの青色のもとになる(あるいはチョコレートに含まれる)物質フラボノイドは、糖尿病の発症を抑える効果があるといわれる。
わたしたちの体がこれらの物質を利用するしくみは、詳しくはわかっていない。しかし、ハーヴァード公衆衛生大学院で栄養学科の学科長を務めるウォルター・ウィレットは、それらを無視するのは賢明なことではないと言う。「どんな食事が好ましく、健康的なのかについて、わたしたちがすべてを知っていると考えるのはおこがましいことです」
植物由来の化学成分がなくても生きてはいける。「しかし、早死するかもしれないし、最適な機能が得られないかもしれません。ただ生存するだけでなく、もっと多くのことに注意を払うべきです」
ラインハートは当然のごとく、この考え方に疑問を抱いている。「歴史上いったいどれくらいの人が、ブロッコリーやトマトを食べてきたでしょうか?」彼はそう反論する。ソイレントの調合法を研究するなかで、植物性化学成分を加えたこともある。しかし、不確定で矛盾する研究が数多くあることを知り、彼には、資源を効率的に利用しているとは思えなかった。
ラインハートについて回るうちに、わたしは、彼の事業計画の潜在的な問題点が心配になってきた。調合法をインターネットで公開しながら、どうやってソイレントで金を稼ぐつもりなのか? コカ・コーラが同じことをするとは、とても思えない。
しかし、Redditの創設者で、ソイレントの出資者でもあるアレックス・オハニアンは、ラインハートのやり方を「いままでで最も素晴らしいマーケティング戦略だ。たとえ彼らがそう思ってなくてもね」と評する。ソイレントを独自に調合しているDIY愛好者たちは、ソイレントのファン層を形成し、製品を改善したり、認知度を向上してくれる。「理想的だよ」とオハニアンは言う。
ラインハートはもっと哲学的な考え方をもっている。「もし誰かほかの人がもっといいやり方を思いついたとしても、人類にとっては大きな利益なのです」
DIYソイレントの人気が熱狂的に高まるなか、わたし自身もいずれ、ソイレントをつくることになるだろう、と思っていた。市販品のソイレントは粉末状だ。1日分1,500kcalに相当するベージュ色の粉末がビニール袋に小分けされ、別のボトルに500kcal分のオイルが入っている。
ポールミッチェルのシャンプーを思いださせる、ミニマリスト風のモノクロフォントのパッケージデザインは、未来的な趣きがある。そして、金属製のスプーンと密閉式のふたがついたプラスチック製のピッチャーが付属する。粉末をスプーンですくってピッチャーに入れ、水とオイル、そして(お好みで)氷を加えて、シェイクするだけだ。パウチの表には「異臭を感じた場合は、ただちに廃棄してください」という、機械的な説明文が書かれている。
DIYソイレントはもう少し手ごわい。料理好きのわたしに、ラインハートはこう伝えた。「パイをつくるのとは違います。鉄分やカリウムを適当に放り込んで、うまくいくよう願うだけではありません」(かつてラインハートは、栄養素の過剰摂取や摂取不足の実験をしたことがある。ナトリウムが足りないと「ぼんやりした」感じに、マグネシウムを摂りすぎると「体中に鋭い痛みが走り、動くこともできない最悪の状態に」なると、彼は報告している)。
わたしは、ベイエリア在住のコンピュータープログラマー、ニック・ポールデンが立ち上げたウェブサイト「DIY Soylent」にログインした。まず最初に、身長、体重、年齢、日々の運動量を入力し、専門的・非専門的なアドヴァイスに沿って栄養面のタイプを選ぶ。例えば、「30代の肥満男性」といった具合だ。
次はレシピの調合だ。製品版のソイレントが、さまざまな栄養状態に合う汎用的なアプローチを取っているのに対し、DIY版は偏食家向きだ。わたしはウェブサイト上にある、1,400以上もの派生レシピをざっと見た。サッカー・ソイレント、クックー・フォー・ココココア・ソイ・ヘンプ、シナモン・マンリー・フード・バー、スクローニー・ホワイト・ボーイ・ミックス、ソイレント・イン・パリス……。
さまざまな味や、アレルギー、神経症向けの膨大なレシピリストをしばらく眺めたのち、わたしは、マサ(トウモロコシの粉)ベースのレシピ、バチェロレッテ・チャウを選ぶことにした。最も知られたレシピのひとつ、バチェラー・チャウの派生レシピで人気があったことと、チョコレートを使っていたことが決め手になった。自分の栄養タイプ(「デスクワークの女性」)を参考に、1日1,531kcalを目標に設定した。
とにかくすすることはできる。しかし、これだけで生きていくと考えると、ぞっとした。
栄養素は「まるでパズルのようです。組み合わせは何通りにもなります」と、ラインハートは言う。たとえ栄養面で必要なものがわかっても、それを実現するレシピは無数にある。
DIYウェブサイトには、さまざまな栄養素の計算を代わりに行ってくれる便利な機能がある。食材とその量(例えばチーアの種20gなど)を入力すれば、サイトが栄養素を計算し、カロリー、炭水化物、タンパク質、食物繊維、不飽和脂肪酸、ヴィタミンが、日々の目標値にどれだけ近づいたかを教えてくれる。それにしたがってレシピを調整していけばいい。
わたしの食材には、乳清タンパク質、オーツ麦粉、調理済みのマサ、大豆油、ブラウンシュガー、食塩が入っている。酒石酸コリン、グルコン酸カリウム、といった耳慣れない粉末状のミネラルやヴィタミンは、iHerb.comで注文した。ココアパウダーは近くの食料品店で調達し、ほかの人と同じく、ヴィタミン類はレシピに入れずに、マルチヴィタミンの錠剤を別に摂ることにした。
いよいよ「料理」の時間だ。ある日の夕食時、わたしは粉末とオイルの量を測り、それらをブレンダーに放り込んで、水を加えた。バチェロレッテ・チャウは、強烈なチョコレートの味とにおい、そして、少し酸味のある、茶色のどろっとした液体だった。同僚たちは「変てこなブラウニー・ミックス」とか「茶色いインスタント朝食」と評したが、とにかくすすることはできる。しかし、これだけで生きていくと考えると、ぞっとした。
市販のソイレントが郵便で届いたとき、わたしはほっとした。それは、ロサンゼルスで試食したラインハートのレシピとほとんど同じで、酵母臭とザラッとした食感にほのかな甘みのある、褐色の液体だ。わたしのチョコレート版と比べると、市販のソイレントはずっと飲みやすい(オフィスでの試食の反応は、さんざんなものだったが)。
とにかくわたしは週末の3日間を、この混合物で過ごすことができた。そして、これまで耳にした工夫の数々が正しいこともわかった。例えば、ソイレントは冷蔵庫に一晩入れておいたほうが美味しくなる(DIY愛好家のひとりが、これは「内容物が凝固するためだ」と教えてくれた)。運動をしたほうが、つまり空腹時ほど、より食べたくなる。
においは欠点だ。最初の夜、数時間ほどで、口、息、指、顔、そこらじゅうにパイ生地のようなにおいが立ち込めた。胃が流動食に慣れるには時間がかかる。最初の午後は、まるで歩く水風船のような感覚だった。
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しかし、ソイレントだけの生活には利点もある。ラインハートの言葉を借りれば、1日中「活動できる」という利点だ。コンピューターにはりついているとき、空腹に我慢できなくなっても、昼食をとるために仕事を中断しなくていい。エネルギーレヴェルは常に安定する。「午後の眠気も、昼食を食べたあとの昼寝もありません」。午後も、午前中と同じように生産的でいられる。
そしてこれは、ソイレントの欠点でもある。わたしたちの生活が、いかに食事を中心に回っているかが、次第にわかってくるのだ。食事はわたしたちの生活にリズムを与えてくれる。わたしたちは、食事で元気になり、食事を楽しみにし、食事の良し悪しで感情の起伏が起きる。机の上に置かれたソイレントのボトルは、わたしたちの時間を生産的にしてくれるだろう。
しかし、それは無味乾燥で、悲しくもある。土曜日の朝、わたしはコップに入れたソイレントをすすった。いったい何をすればいいのだろう? 朝食は必要ない。昼食もない。やるべき仕事はあるが、気が進まない。
わたしはコーヒーを飲みに出かけた。その途中、近所のベーグル屋の前で、誰かが普通の朝食を注文しているのを見かけた。バターを塗ったベーグルだ。わたしはうらやましそうにそれを見た。空腹ではないし、ベーグルよりわたしの食べているもののほうが体にいいことも知っている。ソイレントのほうが安く、無駄なカロリーもなく、はるかに優れた栄養分を含んでいる。バターを塗ったベーグルはそんなにいいものではない。きっと食べないほうがいいのだろう。しかし、「食べ物」という名のもとに、わたしたちがいかに多くの日常の無駄を許しているかを、ソイレントは気づかせてくれる。
ラインハートは、かなりの時間を費やして、ソイレントのフォーラム上で人々が彼のレシピをどのようにアレンジしているかを調べている。それが「感情的」なものではなく、科学的根拠に基づいている限り、彼は批判も受け入れる。「問題に十分目を向けることだけが、役に立つのです」と彼は言う。ロサンゼルスでタコスのフードトラックに立ち寄ったあと、わたしはラインハートを連れて、あるDIYグループに会いに行った。カルテック(カリフォルニア工科大学)の学生寮、リケッツハウスの学生たちだ。彼らはソイレントだけの生活を送っている、と聞いていた。
既に日も暮れる時間だったが、わたしもラインハートも朝からフェイクチキンのタコス以外、固形物はなにも口にしていなかった。しかし、ラインハートのメッセンジャーバッグに入ったソイレントのボトルをすすっていたわたしたちに、空腹感はなかった。
夕方、カルテックに到着し、生物学の博士課程に在籍する寮の相談役、レイチェル・ガリミディに会った。ガリミディは、学生寮には「とても忙しい工学専攻、物理学専攻の学生がたくさんいて、彼ら・彼女らは食事をする時間さえない」と説明した(その寮に住む学生は「壊血病(スカーヴィ)」をもじって、スカーヴスと呼ばれていた)。ラインハートの調合レシピがネットに公開されて以来、スカーヴスたちはほかのことを話さなくなった、とガリミディは言う。
ラインハートとわたしはガリミディのあとについていき、スペイン風の中庭に出た。音楽が大音響で鳴りひびき、たくさんの自転車が並んでいる。カウチの上で徹夜明けの学生が仮眠を取っていた。ダイニングエリアでは、スカーヴスたちが皿を並べ、夕食の準備をしている。その横で、10人ほどの学生がテーブルを囲んでいた。ラップトップと課題に囲まれた彼らには、食事の喧騒はまったく耳に入らないない様子だった。手につかんだウォーターボトルにはベージュ色のどろどろした液体が入っている。彼らはソイレントを飲んでいた。
ラインハートに気づいた学生たちは、彼の、オタクの「神」的なポジションをよく知っているようで、その発明を絶賛した。コンピューターサイエンスを専攻するアレックスは「5時間は元気でいられます。勉強にはぴったりですよ」と言った。
彼らは学期の初めからDIYソイレントの実験を行っている。「かなり試行錯誤しました」と、オイゲンという名前の学生が言った。「ぼくは初日にトウモロコシ粉を50ポンド買ったので、もうあとには引けないんです」
数学を専攻するニックは、ソイレントを飲まないとリケッツハウスにはいられない、と言う。「どこへ行っても、みんなレシピの話ばかりしていますからね」
それぞれが独自のレシピをもっている。機械工学専攻のエリンが開発したのは、ホウレン草を使ったグリーン・ソイレントだ。「3種類の栄養素を入れるのにとても苦労していたの。でも、ホウレン草の栄養素を調べて『信じられない!』って思ったわ。だって完璧なほどぴったりだったから」。大豆アレルギーのあるオイゲンは、バチェラー・チャウの大豆抜き版をつくった。アレックスは、おかゆ状にしたソイレントが好物だ。「レシピはまったく普通ですよ。マルトデキストリンにオーツ麦、それにオリーヴオイル」と、彼は言う。ラインハートはうなずき、同意を示した。
ふと、もし彼らの親が自分の子どもが合成食品だけで生活していると知ったら、心配にならないだろうか、とわたしは思った。エリンはこう言う。「ソイレントを飲む前は、ほんとうにひどいものを食べていたと思うの。チーズピザを何週間も食べ続けたこともあるわ」
ソイレントを飲むことでまわりに何か影響はあるか、とスカーヴスたちに尋ねてみた。彼らはお互いに顔を見合わせ、エリンが口を開いた。「最初の1週間は最悪。すごく臭いおならが出るのよ」
「そいつは大きな問題だよ」と、コンピューターサイエンス専攻のジョン・オーも言う。オイゲンはうなずき、「1週間ほど授業を欠席しましたね」、とつけ加えた(わたし自身のソイレント実験でも、これは大きな問題だと判明した)。ラインハートは、彼が最初にアップしたレシピはもっとひどかった、と説明した。硫黄の量を過剰に見積もりすぎたため、彼と彼の助手は、何週間にもわたって硫黄ガスをまき散らした。
(自分のいた)ジャズシアターの客を退散させたこともありますよ」。ラインハートは、昔を懐かしむように、そう語った。
1週間もすると体が適応できるようになり、問題はなくなった、と学生たちは言う。ラインハートは、余分な硫黄はレシピから取り除いた、と説明した。「その後の調査で、十分な硫黄がアミノ酸からつくられることがわかったんです。この欠点は、すでに修正済みです」
これからの2カ月間で、2万5,000人の最初の支援者たちにソイレントが出荷される予定だ。会社には、毎日1万ドルの新規注文が入り、利益も出始めた。米軍や宇宙開発計画から、ソイレントを試したいという申し出も受けている。しかし、ラインハートの目標はもっと壮大だ。彼らは、オメガ3脂肪酸を、魚油ではなく、藻から生成する実験を行っている。いずれは、炭水化物、タンパク質、脂質など、すべての素材を藻からつくる方法を見つけられるだろう、とラインハートは考えている。「そうなれば、ソイレントをつくるのに農場はいらなくなります」と彼は言う。さらに、ソイレントをつくり出す「超個体」、すなわち、毎日ソイレントをつくり出す新種の藻を開発したい、と彼は語った。そうなれば、工場さえいらなくなる。
ラインハートは、再びフラーをもち出す。「バッキーは、エフェメラリゼーションという重要な考えを提唱しました。それは、エネルギーや情報を生み出す、お化けのようなものです」。ソイレントをつくり出す藻は、この考えと似ているかもしれない。農地をめぐる戦争はなくなり、資源をめぐる競争もはるかに減るだろう。栄養失調の村人を助けるには、ソイレントを生成する藻を満たした「コンテナを送るだけでいいのです。それは、太陽エネルギーと水と空気を取り込んで、食料をつくり出してくれます」。人類の太古からの問題が、解決されるかもしれない。残るのは住居の問題だけになり、「人々は自由になれるのです」と彼はつけ加えた。
ソイレントの夢は、奇妙なものだ。食べ物への夢には、悪夢も同居する。しかし、ラインハートとしばらく一緒にいれば、その考えがわかり始めてくる。どれくらい納得するかは、おそらく、この夢想家にどれくらい関心をもつかによるだろう。
リケッツハウスで、ラインハートは学生たちに、ほかに質問がないかと聞いた。ニックは「ソイレントをたくさんの人たちが食べるようになれば、ソイレントが人間になる、と言えるわけですよね。このことをどう思いますか?」と尋ねた。
ラインハートは微笑みながら「それは素晴らしいことですね」と言った。「実際、わたしはそのことを何度も考えました」。彼は腕を突き出し、健康そうな体を見せて、こう言った。「わたしはもう1年ほどソイレントを食べてきました。いま、あなたたちが見ているもののかなりの部分は、ソイレントでできているのです」
本稿が掲載されている『WIRED』VOL.17は、「フード特集」。食の「これから」に目をむけると、アミノ酸、微生物、フードハブ、コオロギバー、人工知能といったキーワードが浮かんできた。北の果て、スヴァールバル世界種子貯蔵庫から宇宙の食卓、原始から近未来まで、古今東西をめぐる「食」の旅。
TEXT BY by LIZZIE WIDDICOMBE
ILLUSTRATION BY by KATE PRIOR
TRANSLATION BY by ATSUHIKO YASUDA @ XOOMS
