GK対決
群馬代表の真白学園。
関東屈指の強豪校で知られており、昨年も関東大会に出場して石立中学に決勝で敗れている。
今年こそは関東の頂点に立つと全国出場が決まった後も緩む事なく、準決勝の試合に各自が臨む。
「桜見は2回戦からキャプテンの赤羽が欠場している。向こうの総合力は間違いなく下がってて、総合力なら俺達が上回っているはずだ」
真白学園のキャプテン、青い帽子を深くかぶるGKの赤松圭一郎はロッカールームで自分達が有利だという事を伝える。
攻守において高レベルを誇り、予選と今回の本戦を共に安定した試合で勝ち上がった。
自分達なら新鋭と言われる桜見の勢いを止めて勝てると、キャプテンの赤松を含めた皆が自信を持つ。
「(俺達の目標は打倒石立中と関東、全国制覇。桜見で止まってる場合じゃない)」
桜見との試合は通過点に過ぎなかった。
主力でキャプテンの選手を欠いたチーム相手に負けはしないと、赤松は気合を入れて選手達と共に試合へ臨む。
『関東大会準決勝、この試合の勝者が決勝へと勝ち進む事となります桜見中学と真白学園の一戦!』
『全国出場は決まりましたが関東大会の優勝が懸かってますからね。気を抜かずに両チーム頑張ってほしいです』
スタンドからの歓声に迎えられながら、フィールドに両校が列を作って入場。
コイントスの時に輝羅、赤松とキャプテンのGK同士が対峙した。
「(実際見ると小さいな神明寺輝羅。これで無失点のゴールマウスを実際守ってるのか……)」
輝羅と赤松の身長差は20cm以上あって、輝羅が赤松を見上げる格好だ。
「GKのキャプテン同士は貴重だねー、よろしく♪」
「ああ、こちらこそ」
明るく輝羅が笑って右手を差し伸べると、赤松も同じように右手を出して握手を交わす。
「(小さく頼りない手……何故これで守れるんだ)」
身長に加えて握った手も小さく、正直な所GKとしては頼りなさそう。
ゴールを守る守護神は身長が高いだけでなく手も大きい事が重要だと、赤松はコーチから教えられてきた。
その条件に全く合わない輝羅が何故完封し続けられるのか、いくら考えても答えは見つからない。
「大きい方が絶対強い、とは限らないよねサッカーって」
すると輝羅は赤松を見上げたまま微笑んで言う。
まるで赤松の思っていた事が見えたかのように。
「GKはそうはいかないだろ。この場所は大きいに越した事はない」
ゴールを守る守護神は体格があった方が絶対に有利。
身長があるという事は手足も長く、リーチは長ければ長い程に良い。
そうやって赤松は学んでGKとしての知識と経験を積み重ねてきた。
「どうかな〜? あ、コイントス外れかぁ……」
輝羅はコイントスの予想を外し、まぁ良いかと切り替えて桜見の円陣へと戻る。
「(いくら神明寺の名前があるからって小さいGKに負けはしない。関東最強、全国最強の守護神は俺だ!)」
相手が神明寺の名を持ち、凄い相手なのは分かっていた。
それでも体格で勝り、GKとして負けていないと思っている赤松は輝羅をライバル視する。
『この試合の見どころといえば、両校のGK同士ですかね。赤松君は此処まで予選を含めて僅か失点2に抑え、神明寺輝羅君は予選からの無失点記録を更新中と、互いに優れた守護神です』
『正統派な赤松君に対して、輝羅君の方は小柄で独特なGKですからね。タイプの違う守護神達が守る試合はどうなるのか?』
輝羅、赤松の両GKがグローブを着けると互いのゴールマウスに立って、他の選手達も位置に着く。
黒と青のストライプユニフォームの桜見、GKは白。
茶色いユニフォームの真白、GKは赤。
桜見中学 フォーメーション 4ー5ー1
海東
18
室岡 鈴本 霧林
8 10 11
宮村 闇坂
5 14
新田 神明寺(与) 大橋 西村
2 6 3 4
神明寺(輝)
1
真白学園 フォーメーション 5ー3ー2
田城 沼口
9 10
田中 佐藤
7 11
山岡
8
波木 渡辺 上杉 大木 吉田
2 5 6 3 4
赤松
1
ピィ────
真白のキックオフで試合は開始され、真白の両サイドバックの波木、吉田の2人が早くも上がって仕掛ける。
「(真白学園の攻めは主に両サイドからの攻撃が中心、この試合でもスタイルを変えずに来たみたい)」
神奈はベンチからタブレット片手に試合を観察すると、相手は何時も通りの得意な攻めで来るのが分かった。
「(そう思わせて本命は──)」
「(中央突破でしょ!)中央から来るよー! 6番上がってる!」
与一、輝羅の2人は心を読んで気づいている。
真白の両サイドが注意を引きつける囮で、本命は中央から上がるボランチとCBの2人という事に。
輝羅のコーチングと共に、桜見の中央にいる選手達が動く。
『真白、開始から得意のサイド攻撃を仕掛ける!っと、中央へ折り返し……闇坂ボールを奪った!』
佐藤がボールを持って、自分を追い越した左サイドを走る吉田へ渡すと見せかけ、中央の山岡へ折り返す。
そのパスを影二がカットして真白の攻撃を断ち切った。
「カウンター!!」
瞬時に与一が叫ぶと桜見は速攻に出る。
真白の選手達は後ろの選手達が相当上がって、守備が手薄な状態。
絶好のカウンターチャンスが早くも巡ってくる。
『闇坂から指令塔の鈴本、右の霧林と繋いで海東に渡る!』
影二のパスを受けて楽斗が霧林へ渡すと、彼はダイレクトで海東に出す。
ボールはトライアングルのような形で前へ繋がっていった。
「(見えたぁ!)」
パスを胸でトラップして、真白ゴールを見ればシュートコースが見える。
大柄な大木が迫る前に海東は右足で狙う。
バシィッ
放たれたシュートがゴール右上に行くも、真白の守護神こと赤松が両手でしっかりとキャッチし、海東のシュートを通さない。
『真白GK赤松、桜見のファーストシュートを防ぎました!』
『冷静にキャッチしてましたね。海東君としてはもう少しスピードが欲しかった、といった所でしょうか』
「向こうはカウンター中心だ! 気を抜くなよ!」
赤松が味方の選手達に声を掛けてから、右足のパントキックで高く蹴り上げた。
「(まあまあ出来るGKみたいだなぁ。だから両サイドとかセンターは思いきって攻撃参加に行けるって訳か)」
今みたいな甘いシュートは通さず、キャッチで自分達のボールにする。
このチームの強さは赤松の存在が大きいと、輝羅はセービングを見て確信していた。
『真白、今度は左サイドから攻める!』
左サイド波木が上がり、田中との連携で左サイドを駆け抜ける。
次は囮を使う事なく、今度こそ得意のサイド攻撃を使ってきたようだ。
『(中央に8番来てる!)』
『(了解!)』
声を出さずに双子がテレパシーで会話し、桜見のゴール前に長身ボランチの山岡が上がっている。
ボールを持つ波木が一瞬チラッとゴール前を見た後、西村に阻まれながらも左足で高いクロスを送った。
そこに合わせて山岡が跳躍からヘディングを狙う。
「おわっ!?」
急に山岡の目の前からボールが弾き飛ばされ、驚いてしまう。
弾き飛ばしたのはゴールから飛び出した輝羅で、右手のパンチングを使ってヘディングより前にボールをクリアする。
『神明寺輝羅が飛び出してパンチング! セカンドを闇坂が拾ってキープする!』
『エリアギリギリでGKとしては飛び出すか迷うボールではありましたが、輝羅君は迷いなく行ってましたね』
「(迷いの無い大胆なプレー……無失点記録は伊達じゃないって事か)」
今のは赤松も飛び出すのか迷いそうな場面だった。
低い身長を補う跳躍力と状況判断の速さ、何より迷わない。
それが最大の長所なのかもしれないと、赤松は輝羅のGKとしての強みをプレーが途切れたタイミングで考える。
「(上等だ。このままPK戦になってもやってやるよ……!)」
改めて倒し甲斐があると、赤松はPK戦も視野に入れて戦い続ける事を決めた。
その後、互いに攻め続けるが両チームの守るゴールを割る事は出来ない。
灼熱の太陽の下で行われている試合は時間だけが過ぎていく……。
与一「珍しく両チームのGKが活躍する話になったねぇー」
輝羅「たまには主に守護神がスポットライトを浴びても良いでしょ? GKは基本的に目立っちゃ駄目だけどさ」
神奈「相手の赤松さんも好セーブしてて、ゴールを奪うのが簡単じゃなさそうな雰囲気するね」
輝羅「次回も続く桜見と真白の関東大会準決勝! PKまで行くのかな〜?」
与一「本音言うと行く前に決めたいー!」