Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
【13万PV 感謝!】封神闘仙記 〜スキル無しで追放された俺、複数拳法と最強の仙術《封神拳》で無双中〜 - 第38撃:《侵攻》
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/232

第38撃:《侵攻》

一行は鬱蒼とした森を抜け、開けた平原へと歩を進める。目指すは、眼前にそびえる黒き巨城——魔王城。その姿は、重苦しい雲を引き裂きながらそびえ立ち、重厚な威圧感を放っていた。


だが、一行の足は止まらない。誰一人、姿を隠そうともせず、ただ真っ直ぐに、戦場へと向かっていた。


「おいおい……ウソだろ? このまま無策で正面から行くのか……?」


紫音が小さく、しかし焦燥を滲ませて呟く。


その横で、柚葉が震える唇を押さえるように言った。


「あのとき……王宮で聞いた言葉……『使い捨てる』って……まさか、言葉のままの意味だったなんて……」


エルサリオン王国にとって、異世界から召喚された自分たちは、本当に“消耗品”だったのだと、皮肉ではなく、現実として実感する。


だが、この異常な状況に疑問を抱いているのは、紫音と柚葉だけだった。


他のクラスメイトたちは、まるで待ちきれないとでも言うように、興奮と戦意に満ちた表情で足を進めていた。


中には、口の端から泡を吹き、目を見開いて震えている者もいる。明らかに、常軌を逸していた。


いや、“狂っている”と言っても過言ではない。


精神に干渉する何かがあったのか、それとも……。


――そして。


ついに、魔王城の門番が彼らの存在に気づいた。


「……あれは……!? て、敵襲だ―――!!」


鋭い叫びが、静寂を破る。


門番が空へと魔法を放ち、その魔力が大気中で炸裂した瞬間、魔王城全体がざわめきに包まれた。扉が開き、滑るように、多くの魔族たちが城外へと現れる。


「ついに……始まっちゃった……」


柚葉が呆然と呟く。


その横で、紫音が覚悟を決めたように剣を引き抜き、柚葉に叫ぶ。


「ここまで来たらやるしかない! 柚葉、オレが前に出るから、サポートを頼む!」


「う、うん! わかった!」


柚葉は震える声でそう返し、呪文を唱え始めた。


スキルを授かったときから、自然と頭に浮かんできた“戦うための魔法”。


「ブレイヴフォース! シールドヴェール!」


攻撃力強化と防御力強化の支援魔法が、紫音の身体を包むように光を帯びて浸透していく。


力が体に満ちていく感覚。紫音は気合を込め、駆け出そうとした——その瞬間。


彼女の足が止まった。


「……あれ……?」


敵が、攻撃してこないのだ。


こちらが剣を構えても、魔法を放っても——魔王軍の兵たちは、誰一人として反撃してこない。


耳を澄ました紫音に、微かに聞こえてくる声があった。


「やめてくれ! 俺たちは君たちと戦いたくない! 君たちは騙されているんだ! 目を覚ましてくれ!!」


「お願い! 私たちは貴方たちの敵じゃない! 戦いたくなんて、ないの……!」


敵軍の兵たちは、武器を抜いているというのに、その刃は振るわれない。ただ、こちらの攻撃を避け、いなし、受け流すだけだ。


「……なんだよ、これ……」


紫音は呆然と立ち尽くす。


柚葉もまた、信じられないというように、敵の兵たちを見つめていた。


エルサリオン王国の者たちは言っていた。「魔族は人類の敵だ」「対話は不可能だ」「討つべき悪だ」と。


だが、目の前の彼らは、恐れ、叫び、泣いている。


誰一人、嬉々として戦おうとはしていない。


むしろ——こっちのほうが侵略者じゃないか。


紫音の口から、思わず本音が漏れた。


「……これじゃ……オレたちが悪者じゃんか……」


「おかしいって、思ってたけど……でも、こんなの……」


柚葉の頬を、一筋の涙が伝う。


そのときだった。


——悲劇が起きた。


味方の男子生徒の一人が、狂気に満ちた笑みを浮かべながら、剣を振るった。


敵の女性魔族。その胸を、鋭く突き刺す。


「……っ!!」


柚葉が悲鳴を上げ、紫音が目を見開いた。


女性魔族の身体が崩れ落ちる。


「レ、レイナァァァァァ!!」


絶叫が響く。


敵側の男性魔族が、涙を流しながら剣を抜く。


その隣で、女性を刺した男子生徒は、震える手で剣を握り締めながら、言った。


「や、やった……僕が倒したんだ……やったぞーー!!」


その表情には、勝利の実感と興奮——そして、どこか壊れた喜びが浮かんでいた。


だが、次の瞬間。


「よくも……レイナを……妹をっ!!」


男性魔族が怒りと悲しみの剣を振りかざし、生徒に向かって突進する。


「やめろ!!」


紫音が叫んで割って入ろうとする。


柚葉も詠唱を始める。


だが——間に合わなかった。


剣が、生徒の身体を斬り裂いた。


「……え?」


間の抜けた声を漏らし、生徒が自らの胸元を見る。そこからは、おびただしい血が噴き出していた。


「う、うぎゃぁぁぁぁぁっ!! 痛い! 痛いよ! なんで……こんな……っ!」


悲鳴とともに、彼の目から狂気が消え、代わりに純粋な恐怖と絶望が宿る。


もう一度、剣が振り下ろされる。


紫音は咄嗟に駆け寄ったが、ほんの一瞬、遅かった。


生徒の命が、魔族の剣によって絶たれる。


「っ……!」


紫音と柚葉は、地面に崩れ落ちる。


目の前で起きた現実が、頭に入ってこない。


血の匂い、叫び声、絶望。


——戦場とは、こういう場所だったのか?


いや、違う。これはただの、虐殺だ。


柚葉の口から、力なく言葉が零れた。


「こんなの……間違ってるよ……」


紫音もまた、震える声で答えた。


「……全部……嘘だったんだな……」


黒き空の下、魔王城の前で——虚構が崩れ、真実が血に染まって現れる。


この戦いの本質が、ゆっくりと、彼女たちの胸を締めつけ始めていた。


また高評価をしていただきました!

本当に有難うございます。励みになります。

皆様に心からの感謝を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ