逆行への覚醒
他サイトで書いていた小説を改訂してアップし直しました。
悪役令嬢シリーズ第二弾です!
是非楽しんでください。
私は恐怖に支配され、ただガタガタと震えることしかできなかった。
逃げることも叶わず、冷たい牢屋の床に座り込んだまま、鎖に繋がれた惨めな姿を晒している。
薄暗い石壁に反響するのは、自分の荒い呼吸音だけだった。
確かに、私にも罪はあるのだろう。
けれど――私にだって言い分はある。
それすら聞き入れられぬまま、すべてを奪われたことが悔しくて。
気づけば、頬を伝って熱い涙が零れ落ちていた。
◇ ◇ ◇
私は伯爵家の長女、カナ・レーランド。
生まれてからこれまで、何不自由ない生活を送ってきた。
六歳の頃、同じ伯爵家の嫡男であるシオンと婚約した。
幼いながらも将来は約束されたものだと、誰もが疑わなかった。
子供同士だった私たちは、すぐに打ち解けた。
シオンは動物好きで、よく森へ遊びに行っていた。
婚約者というより、気の合う友達――そんな距離感が心地よく、私はその日々がずっと続くと信じていた。
転機は、十二歳で大都学園へ通うようになってからだった。
それまで「お嬢様」として扱われ続けてきた私は、
自分の望みはすべて叶って当然だと、本気で思い込んでいた――今思えば、痛々しいほど未熟な子供だった。
我が儘は次第にエスカレートし、それと歩調を合わせるように、私の体型も変わっていく。
取り巻きたちの「可愛い」「綺麗」という甘い言葉を疑いもせず受け入れ、
気づいた時には、かつての面影を失った体を手にしていた。
そして、その頃から――シオンの態度が変わった。
私の誘いをすべて断るようになり、いつの間にか、平民の少女が彼に付きまとっているという噂を耳にした。
何度も注意した。
けれどシオンは、私の言葉に従おうとはしなかった。
そうして月日は流れ、私は十七歳になった。
十八歳で卒業し、正式に結婚する予定だった――はずなのに。
卒業パーティーの夜…
そこで、私の運命は音を立てて崩れ落ちた。
「カナ・レーランド!
お前は、俺の可愛いレイラに嫌がらせをしていたそうだな!」
確かに、嫌がらせはした。
だって彼女は、私の婚約者であるシオンに付きまとい、困らせていたのだから。
「そのみっともない体型と醜い心……俺の気持ちが離れたのも、お前自身の未熟さが原因だ!」
冷たい声が、会場に響く。
「よって、この場をもって婚約は破棄する!
俺は――隣にいるレイラと結婚する!」
「な、何を言っているの……!?
その女は平民よ!身分が違いすぎるわ!」
私の叫びに、レイラは哀れむような視線を向けてきた。
その目に、理性が焼き切れる。
気づけば、テーブルに置かれていた食事用のナイフを掴み、
私は彼女へと振り下ろしていた。
――だが。
「そこまでだ!」
刃は、シオンの手によって容易く阻まれた。
「愚かな……。
嫉妬に狂い、俺のレイラに牙を剥くとは!」
そして、決定的な一言。
「殺人未遂で訴える」
……殺人罪?
この、私を?
たかが食事用のナイフで、あの女が死ぬはずもないのに。
こうして私は、
あまりにも理不尽な裁きを受けることになったのだ。