Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
たとえ貴方が地に落ちようと - 第18話 う!汗くさぁっ
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ貴方が地に落ちようと  作者: 長岡更紗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/117

第18話 う!汗くさぁっ

「ふうっ! あっちー!」


 そう言って騎士コートを脱ぎながら入ってきたのは、長めの前髪が鬱陶しそうな超絶美形の騎士である。


「ご苦労だったね、デニス」

「全然、なんてことねえですよ。この辺は雑魚ばっかなんで」

「サビーナ、お茶を入れてあげなさい」

「あ、はい!」

「あー、いい、いい。水で十分だからよ」


 そう言ってデニスは自前の水筒をキュポンと開けると、勢いよく飲み始めた。口の端から少し水が溢れ落ちながら、ゴッキュゴッキュと音を立てて飲む姿は豪快だ。


「ップハーーー!」

「……飛びましたよ、デニス」

「あ、セヴェリ様、すんません!」


 勢いで水滴が飛び散り、セヴェリの顔に当たったようだ。すぐにデニスは脱いだコートでゴシゴシとセヴェリの顔を拭き始める。あ、っと思った時にはもうデニスのコートがセヴェリの顔にくっ付いてしまっていて、止める暇もなかった。


「むぐ、やめなさい! 汗臭いですよ、あなたのコートは!」

「え? そうですか?」

「いいから座ってください」

「へーい」


 サビーナは慌ててタオルに少し水を含ませ、それをセヴェリに渡した。セヴェリは無言で顔を拭き、「ありがとう」の言葉と共にサビーナに返してくれる。

 デニスは言われるがままどっかりと座り込み、今度は自分の汗をコートで拭いていた。


「デニスさん、これを使ってください!」

「お? 悪ぃな。サンキュ」


 騎士コートで汗を拭くなど、言語道断だ。新しいタオルをグイッと差し出すと、目を細めてニコッと笑顔で返された。ほんの少し、脈が速くなるのがわかる。

 デニスは細身で身長もそれほど高くはないが、やはり班長という立場なだけあって、かなり鍛えられている体だ。髪の色は銀よりも淡く、白よりも濃い。白銅色とでも言うべきか。

 長めの前髪から覗く目は、少し釣り目だが大きい瞳を持っている。鼻筋は通っていて、唇は薄く、笑うと可愛い。


 誰だっけ、馬鹿な美形ほど手に負えないって言ってたのは……


 不覚にもサビーナは、少し鼓動が高くなるのを感じた。計算でやっていないのがわかるだけに、余計にタチが悪い。

 デニスはゴシゴシと汗を拭くと、ポイッとタオルをサビーナに放り投げてくる。しかしいきなりのことにサビーナはそれを受け取れず、顔面でキャッチしてしまった。

 ばさりと妙に湿ったタオルがサビーナの顔に纏わりつく。そこから匂ってくるのは、彼の……


「うっ! 汗くさぁっ」

「あ? そっかぁ?」


 サビーナはその汗の匂いが染み付いてしまったタオルを慌てて取り払う。視界が開けたそこには、デニスが楽しそうに笑っていた。先ほどの可愛い笑顔ではなく、見るからに悪ガキのする顔で。

 サビーナは少々イラッとなりながら、そのタオルを畳んで片付ける。そんな姿を見たセヴェリは、呆れたようにフッと息を吐き出した。


「まったく、あなたは……昔はよく女の子にいじめられて泣かされていたというのに……」

「うっ、セヴェリ様! それはー」

「デニスの子どもの頃は、それはもう可愛かったんですよ。アンゼルード人形顔負けです」

「女の人形に例えんのはやめて下さいっ」


 アンゼルード人形とは、女の子の理想の集大成である愛らしい人形だ。それを比較に出すということは、この美形男子の幼少はさぞ可愛かったに違いない。


「生徒会室に泣きながら避難しに来ていた日々が、懐かしいですね」

「やーめーてーくーれーっ!!  俺の黒歴史ッッ」


 デニスがカーッと顔を赤くして手をわきわきさせる姿に、思わず笑ってしまう。女の子に泣かされてベソをかいているアンゼルード人形のようなデニスが、容易に想像できた。

 サビーナの笑う姿を見て、デニスはますます顔を赤くさせている。


「くそー、セヴェリ様! それは言わないって約束だったじゃないですか!!」

「すみません、つい思い出してしまったもので」


 セヴェリは相変わらずクスクスと楽しそうに笑っている。デニスはふくれっ面で腕を組んでいて、拗ねる姿はまるで子どものようだ。なんだか少し微笑ましい。


「セヴェリ様とデニスさんは、子どもの頃からの知り合いだったんですね」

「ええ、デニスは私よりひとつ年上ですが、幼年学校からずっと一緒だったので。上級学校に入った辺りから、背が伸びて生意気になりましてね」

「生意気になったんじゃなくって、本来の俺に戻れたんですよ」

「ではそういうことにしておきましょうか」


 やはりクスクスと笑うセヴェリに、デニスは悔しそうに顔を紅潮させていた。


 そうして二人の思い出話を聞いていると、馬車はひとつ目の目的地に到着した。ビネルという小さな町だ。

 急ぐ時には馬をここで交換し、夜通し走れば朝までにユーリスに着くらしいが、今回はここで一泊する予定になっている。


「他に騎士を連れてくれば、交代で走れたんじゃないですか? なんで今回はこんな少人数なんすか」


 馬車を降りて、宿に向かう道すがらデニスがセヴェリに聞いていた。


「あまりユーリスで目立つ行動を取りたくないんですよ。ぞろぞろと大人数を引き連れていては、人目を引いてしまいますし」

「ふーん、少数精鋭ってわけか」

「精鋭ではない者も、一人混じっているようですが?」


 リカルドがそう言い、チラリとエセ騎士に視線を送ってくる。サビーナは居た堪れなくなり、数歩遅れて歩くことで距離を取った。


「彼女はここに置いていくべきだと私は思いますが」


 後ろを歩いているのでわからないが、きっとリカルドは無表情で言っていることだろう。そんな彼にセヴェリは首だけを後ろに向けながら、苦笑いを向ける。


「厳しいですね、リカルドは」

「レイスリーフェ様のお気持ちを考えると、他の女性がセヴェリ様の周りにいるのは面白くないはずです。これからユーリスの街に行くのでしたら、そのくらいの配慮はすべきかと」


 ユーリスの街は、そういえばレイスリーフェの住む街だった。きっとセヴェリは彼女に会いに行くのだろう。そう考えると、確かに側に控えているのはマズイ気がする。


「クスクス……優しくする女性は、奥方だけにしておいた方が賢明ですね。シェスカルのようになっては、愛する妻に逃げられてしまいますよ」

「私と隊長を一緒にしないで頂きたいですな」

「おっと、それは失礼」


 いささかムッとした声でリカルドが反論し、セヴェリは相変わらずクスクスと楽しそうに笑っている。


「まぁそう心配しないでください。彼女はユーリスまで連れて行きます。それが私の目的ですから」

「失礼ですが、その目的とは?」

「秘密ですよ。ね、サビーナ?」


 話を唐突に振られて、サビーナは狼狽した。『ね』と言われても、何も聞いていないのだから答えようもなく、曖昧に笑って誤魔化す。

 冷たい視線を寄越してくるリカルドは、なんと思っただろうか。その眼鏡の奥の瞳が怖かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

男装王子の秘密の結婚
せめて親しい人にくらい、わがまま言ってください。俺に言ってくれたなら、俺は嬉しいですよ!
フローリアンは女であるにもかかわらず、ハウアドル王国の第二王子として育てられた。
兄の第一王子はすでに王位を継承しているが、独身で世継ぎはおらず、このままではフローリアンが次の王となってしまう。
どうにか王位継承を回避したいのに、同性の親友、ツェツィーリアが婚約者となってしまい?!

赤髪の護衛騎士に心を寄せるフローリアンは、ツェツィーリアとの婚約破棄を目論みながら、女性の地位向上を目指す。

最後に掴み取るのは、幸せか、それとも……?

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 騎士 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
イラスト/堺むてっぽうさん
ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
その中でルナリーは、一人の騎士への恋心に気がついて──

最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
イラスト/雨音AKIRAさん
行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
キーワード: R15 身分差 双子 吉凶 因習 王子 駆け落ち(偽装) ハッピーエンド 両片思い じれじれ いちゃいちゃ ラブラブ いちゃらぶ
この作品を読む


異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
イラスト/こたかんさん
婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

サビーナは、自己犠牲愛を……彼に捧げる。
キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

失い嫌われ
バナー/秋の桜子さん




新着順 人気小説

おすすめ お気に入り 



また来てね
サビーナセヴェリ
↑二人をタッチすると?!↑
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ