49.危ないところだったよ
なんとかギリギリ間に合わせた俺は、ベッドの上でみんなを何食わぬ顔で出迎えた。
「まさか一ヵ月も眠るとはね~」
「もう二度と起きないかもと思ったのだわ……」
「毎日祈ってたのよ」
「危なかったのです」
シーチャ、エチカ、ディシア、レメリが一斉に喋りかけてくる。
「ああ、そうだね。危ないところだったよ」
本当に危なかった。
もう少しで、俺のパーティ内での地位が底辺まで下がるところだったよ。
しかしそうか、シーチャが言ってたけど一ヵ月も……。
道理で息子がドラゴンになるわけだ。
エチカに抱きつかれた瞬間、理性が根こそぎ吹っ飛んだもんな……。
彼女に《全自動支援》が効いててよかった。
「はい、これです。私が剥いたリンゴです」
「ありがとう、レメリ」
レメリから受け取ったリンゴをもしゃもしゃとむさぼる。
ああ、一ヵ月ぶりの糖分だからだろうか。
めっちゃおいしい。
「まったく……アレスを起こすのに、ずいぶん苦戦したのね?」
「う~ん、そういうわけでもないんだけど」
ディシアが嘆息しつつも、笑ってくれている。
ずいぶんと心配をかけてしまったみたいだ。
「アレス自体は割とすぐに起きたのにね~。屋敷も消えちゃったし」
「そ、そうなんだね」
シーチャの言葉で、ナイちゃんの言ってたことの裏付けが取れた。
アレスは悪夢で跳び起きて、ナイちゃん自身は変身能力を得て身を隠したと……。
「本当に……本当にいっぱい心配したのだわ……起きてくれて、本当によかった。グスッ……」
「エチカ……」
ずっと泣きそうだったけど、エチカはついに大泣きし始めてしまった。
みんなに慰められている。
「みんな。本当にごめんね。たくさん心配かけちゃったみたいだ」
結果的にうまくいったとはいえ、ナイちゃんを《全自動支援》の対象にするのは俺にとってもかなり危険な賭けだったみたいだ。
それまで《全自動弱体化》のおかげで普通でいられたのに、逆にパワーアップさせちゃったんだもんな。
ひょっとしたら、エチカの言うとおり二度と目覚めなかったかもしれない。
「謝ることないわよ。あなたは立派にやり遂げたわ。きっと、この世界の他の誰にもできない偉業をね」
ディシアが素直に讃えてくれる。
「いつもどおりに、自分の心に従って行動してただけなんだけど……」
「それでできちゃうっていうのが凄いよね~」
「本当にすごいです。スラッドは英雄なのです」
シーチャとレメリもたくさん誉めてくれた。
すごいすごいと言われても、活躍スキルが全自動なので俺には実感がない。
こればっかりは今も昔も変わらないなあ。
やっぱり薬草採取とゴブリン退治ぐらいが、自分の力で頑張れてる感じがする。
「スラッドが死ななくてよかったよおおおおおおおおお」
半身を起こしている俺のお腹のあたりにエチカが抱き着いてきた。
胸が股間にあたっているけど、賢者モードなので余裕の笑顔だ。
よしよし、とエチカの頭を撫でてあげる。
「それにしても俺が寝ている間に、いったい何が起きたの? ここは王城みたいだし、それにアレスは?」
エチカがガバッと顔を上げる。
他のみんなも顔を見合わせた。
シーチャがため息を吐き。
レメリが怒りのオーラを発し。
エチカが羞恥に顔を赤く染め。
ディシアの顔から表情が消えて。
しかし、最後には全員同時に頷く。
ディシアが代表なのか、重い口を開いた。
「そうね。じゃあ、順番に話すわね。あれは――」