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毎日朝早くから夜遅くまで働いてた母親が倒れてしまった。
もともと貴族なので力仕事や重労働には無縁だったため、無理がたたったのだろう。
「ジャックには苦労かけてばかりね…」
医者に見せても、働きすぎとしか言われなかった。休ませていても身体が一向によくなることはなく、むしろ弱っていて、ジャックが商家のお屋敷へ働きに出ることになった。
ある程度家事ができたため、下働きをした。
そんな時、働いていたお屋敷でローズマリーが住み込みで執事見習いを募集していると聞き、あの事件のことを思い出した。
「復讐?」
イザベラはきょとんとしていた。
「あぁ、公爵家のせいで俺たち家族は壊された。」
ローズマリー・クロフォードが気付かなければ、父親が捕まることもなかった。
クロフォード公爵家にも不正があるだろう…それを暴き出し、俺達と同じ気持ちを味合わせてやりたい。
「うまくいくかな?」
「その前に、公爵家で働けるようにならないとな。」
イザベラはそうだね!とニッコリ笑う。イザベラはとても純粋で自分に懐いてきてくれた。
イザベラも良いとは言えない境遇で、父親はいなく母親は娼婦で帰りが遅いため、イザベラの面倒を見るのは近所に住んでいるジャックだった。
母親はイザベラの母親が娼婦であることに抵抗はなく、「子どもを食べさせる為には職は選べないわ。」といい、むしろ尊敬の眼差しを向けていたぐらいで、母親同士も仲よくなった。
「通いではなく住み込みで働くことになるけれど大丈夫なのかしら?」
目の前にいるのは、ローズマリー・クロフォード。自分の家族をバラバラにした張本人だ。
外見はすごく綺麗で見惚れてしまう。
この見た目で皆騙されるのか…。
「貴方には病気で床に伏せってる母親がいらっしゃるのでしょう?」
「…はい。ですが、僕はここで働きたいんです。」
歳は3歳しか変わらないのに、ローズマリーからの威圧感は半端ではない。
「そう。わかったわ。」
ただそれだけを呟いて、ローズマリーは目を伏せた。
執事であるセバスチャンに結果は後日手紙を送るとだけ言われた。
あまり期待はしていない。
病気で床に伏せっている母がいるのだから。身軽ではない。
そして、家族を壊した張本人を見て、やはりなんとも言えない感情が湧いた。
怒りなのか、そうじゃないのかはわからないけれど、良い感情ではないことはわかる。
働くことができたとしても、この感情を隠しながら働くことは出来るのだろうかと…。