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追放令嬢のやさしい平民生活 - 少女との出会い1
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少女との出会い1

 

 リザは知らなかったが、実は王宮の使用人というのは平民たちにとっては憧れの職業であった。

 もちろん要人付きの使用人は貴族から選ばれる。しかしそれよりも下級のメイドたちなら平民でも手が届く存在であり、生活の心配をしなくて済むという点からもかなり人気の職業なのだ。


 故に、王宮使用人の制服を着た、見目麗しく若い娘が、明らかに慣れていない様子でうろちょろしていたらどうなるか。


「なあ姉ちゃん。助けて」

「きゃっ?」


 リザは少年に服の裾を引っ張られた。意外と力が強く、そのまま店の陰になった場所に引きずり込まれた。

 10歳に満たないくらいの薄汚れた少年がリザを潤んだ瞳で見つめている。ぱちくりと瞬いたリザは少年と目線を合わせると、こてんと首を傾げた。


「どうしました? 迷子?」

「助けて……にいちゃんが、病気なんだ。もう何日も水しか飲んでなくて……おれ、おれ、どうしたら……」

「落ち着いて。お父様とお母様は?」

「いない。どっちも、病気で死んじまった」

「……っ」


 ぎゅっと唇を噛み、震える拳を握って耐えるように立ち尽くす少年にリザは息を呑んだ。

 肉親を失い、兄だけがたった一人の家族。その家族すら病で倒れ、命のカウントダウンも間近という。そんな状態で兄を置いて出かけ、生活の糧を得ようとするのはどれだけ不安で勇気が要っただろう。

 リザは健気な少年の行動に胸を打たれる思いだった。

 彼の勇気に応えたい。その一心でリザは懐の財布を取り出し、銀貨を1枚少年の手に握らせた。


「これでいいかしら。お兄様の快復を祈っているわ」

「…………医者のじーさんが、治療には金貨が要るって……」


 少年は手の中の銀貨を見開いた眼で凝視し、やがてぽつりと付け足した。


「じゃあ金貨もね」


 リザは少年の言動に特に違和感を覚えることなく財布から金貨を取り出す。2枚もあるのだから、1枚ならいいだろう。

 増えたお金に少年はリザをまじまじと見つめて……彼女に見えない角度で口角を上げた。紛れもなく悪童の笑みである。


「ねーちゃん、あの」

「ストーップ」


 少年がさらに値段を吊り上げようとしおらしく口を開いたそのとき、落ち着いた声がそれを遮った。

 リザと少年が揃って声のほうへと振り返る。


 そこに立っていたのは小柄な少女だった。

 濃紺の髪を頭の左右でふたつに束ねたヘアスタイルのせいか、それとも夕焼け色の大きな瞳を中心に可愛らしく整った顔立ちのせいか、16歳のリザよりも確実に2つか3つは年下に見える。

 上手く年を判断できなかったのは、彼女の着ている野暮ったい服のせいで雰囲気がちぐはぐになっているせいだ。


「…………なんだよ、あんた。どっかいけよ」

「白昼堂々金品巻き上げようとしてるのを見逃せないでしょ」


 それは違う、とリザは咄嗟に否定しようとした。しかし少女の顔が怒っているように見えて、思わず口を噤んでしまう。

 少女は無造作に近づいてきたかと思うと少年に向かって手を伸ばして――


「アニキーッ!」

「!!」


 少年が助けの声を上げた瞬間、周囲から数人の男がリザと少女を囲むように立ちふさがった。

 経験したことのない状況にリザはおろおろするだけだ。


「え、え? お兄様はご病気なんじゃ、それも、こんなにたくさん……!?」

「そんなわけねーじゃん。おねーさん、馬鹿?」


 初めて言われた罵倒の言葉にリザは頭が真っ白になる。

 一際背の高い男がにやついた顔でじろじろとリザを見下ろしてきた。値踏みするような粘ついた視線だ。


「痛い目見たくなけりゃあ財布ごと渡してもらおうか?」

「……お、お断りいたしますわ。これが無いと困りますの」

「オコトワリイタシマスワ、だってよ!」


 男たちが下品な笑い声を上げる。

 何故そのように馬鹿にされなければならないのか。リザの中にふつふつと怒りがこみ上がってくる。


 ひとしきり笑った男たちは、次の瞬間一転して怒鳴り声をあげた。


「いいから、寄越せ!!」

「きゃ……っ!」


 乱暴に腕を掴まれ痛みが走る。が、リザは悲鳴を噛み殺した。こんな奴らには悲鳴すら聞かせたくない。

 財布を握りしめる指先に力を込めるが、男女の力の差は歴然だ。抵抗空しく財布が男たちの手に渡りそうになったそのとき、不意に空気の流れが変わった気がした。

 視界の端を濃紺が掠めていく。


 ――目を閉じていて。


 小さく、しかしはっきりと囁かれた言葉にリザは素直に従った。


 パァンッ!


「ぎゃああああっ!? め、目がっ、くそっ!」


 何かが破裂する音と男たちが悲鳴を上げてのたうち回る音が同時に聞こえてくる。

 状況を把握するよりも早くリザの腕が引かれ、咄嗟に目を開ければ少女がリザの手を取っていた。


「行くよ、走って!」


 弾かれたように足が動いた。

 少女が誰かも分からない。けれどリザは彼女を信じられる気がしていた。


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