第48話 聞けなくなる理由
会議は、
滞りなく進んだ。
議題。
報告。
了承。
すべてが、
予定通りだった。
「……以上です」
模倣者が、
穏やかに締めくくる。
「何か、
質問はありますか?」
一瞬、
静寂が落ちる。
だが、
誰も口を開かない。
沈黙は、
拒否ではない。
同意でもない。
ただ、
“場を壊したくない”
という感情だった。
「……問題なければ、
次へ進みましょう」
その言葉で、
会議は終わる。
誰も、
異を唱えていない。
だが――
誰も、理解していない。
廊下。
若い事務官が、
小さく言った。
「……聞きたいことは、
あったんですが」
「なぜ、
聞かなかった?」
「……今、
聞く空気じゃなかったので」
それが、
答えだった。
午後。
別の部署でも、
同じことが起きる。
「この地域の停滞について、
理由は――」
言葉が、
途中で止まる。
「……後で、
個別に確認します」
“後で”は、
来ない。
質問は、
場から消える。
夜。
模倣者の最終報告。
改革は、
おおむね順調
現場の理解も進んでいる
理解。
その言葉に、
裏付けはない。
だが、
誰も求めない。
理由を聞くことが、
“後ろ向き”に
見え始めているからだ。
俺は、
資料を閉じた。
数字が嘘をつく時は、
実は少ない。
だが――
質問が消えた瞬間、
数字は無力になる。
誰も、
意図的に隠していない。
誰も、
悪意を持っていない。
それでも、
改革は壊れる。
なぜなら――
検証が、
止まったからだ。
成り上がりは、
正解を出すことじゃない。
正解かどうかを、
聞き続けられる場を
守れるかどうかだ。
そして今。
王都の改革は、
成功している。
だが――
もう、誰も
それを確かめようとしなくなっていた。
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