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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる - 第49話 別の帳簿
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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第49話 別の帳簿

 きっかけは、

 まったく別の案件だった。


「……こちらは、

 関連性のない資料ですが」


 監査局の若手が、

 遠慮がちに言う。


「地方融資の

 返済遅延率について

 確認をお願いしたく」


 改革とは、

 直接関係ない。


 補助金でもない。

 制度改善でもない。


 ただの、

 金の戻りだ。


「……遅延、

 増えてますね」


 誰かが、

 淡々と指摘する。


「特定地域に、

 集中しています」


 資料が回る。


 地図。

 数値。

 推移。


 そして――

 気づく者が出る。


「……これ、

 改革の対象地域と

 重なっていませんか?」


 空気が、

 わずかに止まる。


「偶然でしょう」


 誰かが、

 即座に言う。


 だが、

 誰も頷かない。


 午後。


 別の数字が、

 持ち込まれる。


「失業保険の

 短期利用率が、

 微増しています」


「医療扶助の

 相談件数も……」


 どれも、

 改革の“外”の数字だ。


 だが、

 同じ地域で

 同時に動いている。


 誰も、

 それを“失敗”とは言わない。


 だが――

 成功とも、

 言えなくなる。


「……改革の成果は、

 出ています」


 模倣者が、

 静かに言う。


「ただ、

 周辺への影響が

 想定より早く出ている」


 初めて、

 言葉が慎重になる。


 夜。


 俺は、

 帳簿を閉じた。


 第三者の数字は、

 都合が悪い。


 物語に、

 沿ってくれない。


 だが、

 因果は、

 そちらに現れる。


 補助金は減った。

 事業は締まった。


 だが、

 人は消えていない。


 別の場所に、

 移っただけだ。


 成り上がりは、

 正解を示すことじゃない。


 正解の“外側”で、

 何が起きているかを

 見続けることだ。


 そして今。


 王都の改革は、

 まだ崩れていない。


 だが――

 無関係だと思われていた数字が、

 静かに、

 説明を要求し始めていた。

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