争い渦巻く第六領域『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』8
名称:イオ・アガリス
年齢:15(1)
階位:6→8
主職:狩人 副職:忍者
能力値
筋力:C 頑健:C 敏捷:C→B 知力:C 魔力:C→B
主職スキル
弓:C 罠:E 気配察知:C 動植物知識:E 野外追跡:E
副職スキル
隠身:C 軽業:C 薬毒耐性:E→D
その他スキル
短剣C→B 体術:E 魔術:―(E→D相当)
大魔術師の加護:EX 番犬の召喚:EX(5)
大分と悩んだが、ステイタスの強化はこの様に。
ミルノーシェ領域では敏捷と筋力、それから頑健さ辺りを優先的に、平均して上げて来たが、今回は筋力よりも魔力を優先した。
理由は勿論、妖には魔術が有効である可能性が高いから。
まぁでも戦いの最中に力負けしても困るから、多分次は筋力を上げるだろう。
スキルは最も頼りとする戦闘手段の短剣と、お守り代わりの薬毒耐性。
攻撃の手を増やすべく習得した体術を上げるべきかとも思ったけれど、今回はもしもの為の備えを優先した。
次にまた似たような相手に出会った時、同じ失敗は繰り返さない為にも。
ソウ曰く、この十州で出現する妖と言うのは、自然が発する魔力が集まって生まれる存在らしい。
十州は神々が、アルガラード大陸を創造する前に、自らが降り立つ為に生み出した地だとされており、大地が強い魔力を発すると言う。
その魔力に何らかの要素、例えば人々の不安などが影響すると、下級妖等が大量に発生する。
私が先日戦った山姫等は、山の谷間に魔力が溜まって凝縮され、百年単位の月日を経て生まれるそうだ。
実は人が戦う相手である鬼もまた、かつては妖の一種だったそうだけれど、今は封じられし巨人王の加護を得る事で子孫を残せる様になり、一つの種族として成立したのだとか。
鬼が妖を従える、或いは協力関係にあるのは、元々は鬼も妖が近しい存在であるが故にだろう。
ただあの山姫は、この捌の島で発生した個体では決してない。
人が管理する島ではその不安を受けて下級妖が湧き出すのは仕方ないにしても、中級以上の妖が発生しない様に色々と対処はされている。
具体的には定期的に武士達が見回りを行い、下級妖を殲滅したり、魔力が溜まった場所を見付けてはそれを散らしているのだとか。
だからあの山姫は、鬼に支配された島から渡って来た個体でまず間違いがないのだ。
隣接した島と島に掛かる大きな橋のたもとには、侵入を防ぐ為の砦が設けられており、大規模な侵攻はそこで食い止められる。
しかし個別に、例えば小舟を使ったり、空を飛んで渡って来りする妖や鬼も、決して皆無ではないのだとか。
故にそれを防ぐ方法は、伍の島を取り戻し、前線を押し上げてしまうより他にない。
元々、人と鬼が激突する激戦区であった伍の島は、後方である捌の島とは違って鬼や妖への備えが充実していた。
それ等が破壊し尽される前に、鬼と妖が本当の意味で伍の島を手中に収めてしまう前に、それを奪還する事がソウの目的だ。
「イオ殿、改めてお願い致します。領域を移動した直後にも拘わらず厄介な妖を仕留めた、領域踏破者の経験と実力、どうか拙者にお貸し下され」
夕食を平らげてから茶を飲み、のんびりと一服していた私に、居住まいを正したソウが頭を下げた。
私は急に改まったソウの態度に少し吃驚してしまうが、元よりその心算だったのだから否やはない。
但しまず、私はソウに聞かねばならない事がある。
「それは勿論その心算だけれど、豪嵐童子はどうするの? 私はアガリス。鬼側で情報を集めてるだろうゴーラ・アガリスを、討ち取る事には反対する」
戦う事は兎も角、豪嵐童子、ゴーラ・アガリスの殺害だけは、今の段階では賛成出来ない。
仮にゴーラが情報収集をおざなりにし、十州の人間を滅ぼす事に躍起になっている様であれば、私の意見も変わるのだけれど。
出来れば一度、ゴーラに会ってその意思を確認したいと言うのが、私の本音だった。
けれども私の言葉に、ソウの表情は硬い。
「イオ殿には明かしますが、拙者と豪嵐童子は同じ加護を選択しております。そしてその加護は門の加護。故に拙者は少人数なら部隊を連れて伍の島へと転移が可能で、……豪嵐童子も同様に。つまり奪還が成ったとしても、彼奴が健在ならばその防衛はとても難しい物となりましょう」
あぁ、門の加護。
そう言えばそんな物もあった気がする。
成る程、相手もアガリスならば、加護の存在にも気を配らなければならないのか。
……妖精の加護とか、暗殺者が使ったならば最悪の効果だった覚えがあった。
門の加護は、自分が一度でも訪れた事のある場所なら、遠く離れた場所でも一瞬で移動出来る門を、一週間に一度だけ生み出せる効果だった筈。
但しその効果範囲は領域内のみで、仮に私が門の加護を選んだとしても、ミルノーシェ領域のコフィーナには行けない。
確かにソウやゴーラの様に部隊を率いて戦うなら、門の加護は最適の選択だろう。
故に互いに滅ぼし合わなければならないと考えてしまうのも、まぁわかる。
でもそれは、突き詰めてしまえば十州から人間か、鬼が消えてしまうまで戦い続けるこの地の現状と何も変わらない。
封印された神々と巨人王の思惑に、己の意思が押し流されてしまっているだけだ。
この領域の住人がそうであると言うのは、もう百歩譲って仕方がない。
だが元々同じ目的を持ってこのアルガラード領域に降り立ったアガリス同士が、相手が消えてなくなるまで殺し合うしかないと言うのは、どう考えても間違っていた。
「ソウ、でもその危機感は、ゴーラにとっても同じ事。わかった。伍の島の奪還には、協力する。その後はソウとゴーラが互いを滅ぼし合わなくて済むよう、協定が制定出来る様に私は動く」
本人たちがその争いに歯止めを掛けられないなら、私が介入するより他にないだろう。
例えば互いの加護の使用を禁止する協定、或いは一定期間は互いに戦場に出ない等、内容は納得出来る物なら何でも構わない。
一度話し合いが持てたなら、それを継続する事も、同じアガリス同士なら出来る筈だから。
私が伍の島の奪還に手を貸せば、ゴーラはそれを不満に思い、私に敵意を抱くかも知れない。
それは当然の感情だけれど、今の状況は人間側が大きく追い詰められてる。
後方にまで妖がやって来て破壊工作をする様な状況は、流石にマズイだろう。
これは是正しておかねば、そのまま十州の人間が滅ぶ可能性だって、決して低くはないから。
私が吾賀里の領民達や妙子に、死んでほしくないと思っている事も、勿論無関係ではないけれども
もしもゴーラが私の行動に納得がいかず、敵対の道を選ぶなら、その時は改めて殴り飛ばす。
殴って殴って殴って、大人しくさせてから話をする。
それでもやっぱりダメで、ゴーラがどうしても人間を滅ぼしたいと、身も心も既に鬼の豪嵐童子だと言うのなら、その時は私が討つ。
今の肉体を破壊して、魂を依頼人の元へ返し、一度冷静になって貰う。
その後にゴーラがどうなるのかは、依頼人が決める筈だ。
「イオ殿がどこまでもアガリスである事、重々承知いたしました。されど伍の島を奪還する際、豪嵐童子が立ちはだかれば、拙者にその命を気遣う余裕はありませぬ。彼奴は僅か一年足らずで人から最も恐れられる鬼となりました。努々それをお忘れなきよう」
まぁソウの言う通り、一番の問題はそこなのだけれど。