練習だけではないなにか。
イザベルはいくつかの分厚い本を取り出し、ぱらぱらとページをめくる。
そこには魔法の理論や詠唱のコツ、魔力の流れ方など、細やかな記述がぎっしりと並んでいた。
「レイズ君はいま、どこまでできるのかな?」
そう優しく問いかける。
レイズは少し緊張しながらも、胸を張って答える。
「魔力を錬成して、外に出すまではできるようになったよ。それから……基本的な行使も、なんとか身につけた」
イザベルは驚いたように目を見開き、すぐに嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「それなら、次は魔力の持続力を伸ばして……同時に、質を高めていくのがいいのかな」
そう言いながら、窓の外を指差す。
青い空と広がる庭の向こうに、草原が見えた。
「ほら、あそこなら練習にもいいし……一緒に行ってみない?」
その眼差しはただの指導者のものではなかった。
“レイズと一緒に過ごしたい” という温かい想いが宿っていて、レイズは断れるはずもなか
レイズはわざと落ち着いた声で、
「構わぬ。では、ゆくぞ」
と冷静に告げる。
その芝居がかった口調に、イザベルは思わず吹き出す。
「なにそれ、変なの」
くすくすと笑う声は、書斎に吸い込まれるように溶けていく。
こうして二人は並んで歩き出す。
書斎を抜け、屋敷の庭を抜けて――開けた草原へと向かって。
その光景は、どこか懐かしさを帯びていた。
まるでかつて、本当に仲の良い兄妹のように寄り添い合い、語らい合った日々があったかのように。
イザベルの横顔をちらりと見ながら、レイズは心の奥に小さな違和感を抱く。
(……ゲームの中では知らないはずの人物なのに。どうしてだろう。俺はこの光景を、知っている気がする)