第二十四話 帝都の前の門。
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グルス家の管理する領内の外壁の前。
僕達はその石を積み上げて建てられた外壁を見上げていた。
高いな~~この防壁。
この防壁は、石材の間に鉛の粉を漆喰に混ぜ込み、石材の固定剤とする事で高く積み上げられている。
この技術はダンジョンの壁の構成を参考にする事で、攻撃系魔術を減退し探査系魔術をも弾く。
因みに【転移】でも壁を超えて中には入れません。
とは言え魔術師のジョブ第四級魔術【飛行】や竜兵士の【跳躍】のような上空からの侵入は防げないが。
あっ……つまり竜騎士や飛行出来る魔物を従えられるジョブ持ちにも対応出来ないか。
そんな奴等は防壁に配備されたバリスタやクロスボウを持った衛兵に打ち落とされるけどね。
本来なら魔道弓兵が適任だ。
だけどそのジョブに就いてるのが隊長しか居ないので一般の衛兵の仕事になったらしい。
まあ魔道弓兵の能力を最大限に発揮させようとしたら金が掛かるからね。
因みに魔道弓兵は魔術金属を使わない普通の矢の鏃も使える。
だがその場合は射程距離が普通の弓兵より少し良くなる程度らしい。
後でサキ姉さんに聞きました。
ガチで知らなかった。(泣く)
何で【世界の英知】に書いてないんだよ。
まあいい。
今、その防壁の門の前に沢山の人が大勢並んでいた。
まるで人の森だ。
「おい。お前は次はどんなジョブに変更する気だい?」
「まあ、次は当然守護戦士だがな」
などなど、そんな会話が聞こえてくる。
獣人も居れば人族やエルフもいるなど様々だ。
彼らの共通点と言えば、全員が様々な鎧や剣で武装している事だけか。
「何でこんなに人が……亜人も居るのかな?」
「あれ? カイル前にここに来た事があるとか言ってなかったがな?」
「うん。でも前はこんなに人が居なかったよ」
「ああ……この季節になると此処はこうなるんだがな」
「なんでまた」
「此処は剣の聖地だからな」
その言葉に僕は項垂れる。
……マジですか。
「どうしたがな?」
僕は全身の力が抜け脱力した。
そのまま泣き出す僕。
「どうしたがなっ!」
「嘘だろうおおおおおっ!」
「おおうがな」
僕の剣幕に驚くクリス。
「どうしたがな?」
「だって……」
「うんがな?」
「普通は剣の聖地のイベントはかなり先の話だろう!」
「はっ?」
僕の言葉に目を点にするクリス。
だってそうだろうっ!
ゲーム内では剣を扱う中位もしくは上位ジョブを極めた者が歯応えを求めて訪れる場所。
それが剣の聖地という場所なのに……。
なんで普通に僕が来れているんだっ!
これは『ダンジョンウォー』というゲームを侮辱する行為だ!
しかも僕は知らずとは言え、二回もここに来てしまっていたのだ!
泣きてええええええっ!
いや既に泣いてたよ僕。
「まあ意味が分からんが、その~~なんだ気を落とすながな」
「うん」
僕の頭に優しく手を置くクリス。
「まあいいか。クリスとのデートだと思えば」
気を取り直して一言僕は言った。
これがいけなかった。
ボン。
そんな音がしそうな程顔を赤らめるクリス。
メキメキッ!
という音が辺りに響いた。
「なああああああああああああっ!」
「いだあああああああああああっ!」
優しく置かれたはずの手は一転。
恥ずかしさの余り赤面したクリスの手はアイアンクローに変わる。
そんな僕達を怪訝な顔で注目する周りの人達。
気を失う直前に衛兵が駆け寄ってくる。
……折檻で気絶するのは初めてだ。
※ 違います。
◇
「いいですかお姉さんっ! 幾ら弟さんが悪戯をしたからといって、気絶するまで折檻するなんて何考えてるんですかっ!」
「すみませんがな」
「女子がいたいけな子供にこんな事をするなんて嘆かわしい!」
「いや、カイルはいたいけな子供じゃないんだが……」
「言い訳しないっ!」
「はいがな」
煩いな……。
気が付いたら僕は何故か正座したクリスに抱っこされてまいた。
場所は変わってません。
太陽の位置から察するに、気絶してそんなに時間は経過していないみたいです。
既に周囲の者達は疎らだった。
すでに殆どの人達が防壁の中に入った後なんだろう。
「あら、気が付いたみたいね」
そう僕に話しかけてくるのは三十代後半の人族の女性。
手に指輪をしているので既婚者と分かる。
青い髪に黄色の肌を持つ黒い瞳の女性。
明らかに異国人との混血だと分かる。
制服とその髪型で先程僕が気絶する前に、駆け寄って助けようとしてくれた衛兵の人だと分かった。
「ご迷惑をお掛けしました」
クリスの柔らかい体から離れるのは名残惜しい。
だがそれでも僕は立ち上がり衛兵の人に頭を下げる。
「大丈夫か」
「うん。クリスにも迷惑を掛けたね。御免」
「いいがな」
僕達の様子に微笑む衛兵の人。
「あら、礼儀正しい子ね」
「いえそれ程でも。クリスの躾のおかげです」
衛兵の人に対して少しでもクリスの印象を良くしようと答える僕。
僕の意図を察したのか、微笑ましそうに表情を浮かべる衛兵の人。
「そう~~お姉さんと仲が良いのね」
「ふえ?」
衛兵の言葉に首をコテンと傾ける僕。
「どうしたの?」
「お姉さんってのは誰ですか?」
「あら違うの? ほらこの人」
などと言いつつクリスを指差す。
僕は指差した方角を見てクリス以外居ない事を確認する。
「違いますよ」
「そうそう。違うがな」
「そうなの~~じゃあ~~貴方達は兄弟じゃないの?」
「そうです」
「そうがな」
「将来僕はクリスの者になるんですから」
僕の言葉に辺りの喧騒はピタリと止まる。
「この人の物になるの?」
衛兵のお姉さん。
顔が怖いんですけど。
何で?
「え……ええ」
「正確には違うがな」
「酷いっ! ちゃんと働いて養ってあげてるのに」
「あのなあ~~がな」
僕の言葉にクリスは溜息を付く。
「君が働いているしてるの?」
ますます険しい顔をする衛兵のお姉さん。
何だろう。僕の言ってる事は正しいはず。
なのに何故か意味が通じていないように感じるんだが?
「はい」
ピシッ。
僕の返事に衛兵のお姉さんの動きが止まった。
否。
正確には大きく息を吸ってる。
「全衛兵集合おおおおおおおおっ! 児童売春法違反でこの女を捕まえろおおおおおおおっ!」
「「えええええええええっ!」」
遠目からも数名の衛兵が走りよってくるのが分かる。
こうして僕たちの鬼ごっこは始まった。
一時間後に誤認逮捕されたクリスだが、僕の証言により無実を証明されすぐに釈放されました。
……頭が痛いです。
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