7 偽善者たちの囁き
甘い空気が流れる。クラリスといたときはピリピリした空気が流れていた。
リサが作り出すこの空気感が心地いい。
「こうしてユリウス様といられるだけで私は幸せだわ。クラリス様が何かにすがって生きるとしたら、それはきっとプライドなんでしょうね。私たちには理解できない貴族令嬢としてのプライドってやつ……」
「プライドか……プライドなんて今となっては笑い話だな。婚約破棄された女って肩書きで彼女のプライドは今頃ずたずたに引き裂かれているだろう。しばらくは噂のまとだろう」
「ふふ。今じゃ聖女になったエミリアは幼馴染だから相談をしていたの。エミリアはクラリス様のこといいふうに思っていないし、王宮内でエミリアのお茶会にも誘われないものだから欠陥があると言われているみたい」
「聖女エミリアの友人というポジションは大事だ。使えるものはなんでも使うんだぞ」
聖女もリサも下級貴族で友人関係。聖女が王宮へ呼ばれるまで仲良くしていたと聞く。リサは下級貴族だからクラリスにバカにされていると相談しているし、クラリスの冷淡さ傲慢さを少し盛って相談しているようだ。私がクラリスとの関係にストレスを感じていたから人気の聖女が味方になるのはありがたい。
「エミリアが今度、ユリウス様と親しくしている令嬢としてお茶会に呼んでくれるらしの。でも王宮に着ていくのにふさわしいドレスがないの……」
「私と親しくしているのに、ドレスの1枚も用意できない。と言われたら君に嫌な思いをさせてしまう」
「エミリアは気にしなくてもいいと言うんだけど……ねだっているみたいで恥ずかしいわ」
「気にするな。近いうちにドレスショップで何枚か仕立てよう」
「嬉しいわ。ユリウス様大好きよ」
「当然だ。聖女エミリアとくれぐれも仲良くし良好な関係でいるんだ」
聖女が味方でリサと親友となれば、婚約破棄した側としても許されそうだ。聖女は田舎の下級貴族だけど王宮での発言力もあるし、聖女を通して令嬢たちと仲良くすればこっちのもんだ。
クラリスから仲のいい令嬢の話など聞いたことがない。味方はいないだろう。
「でも、いつか本当のことがバレたら……私たちどうなるのかしら」
「安心しなさい。王宮で働くような人間ほど、噂に敏感で現実なんてどうでもいいんだ。耳ざわりのいい真実が流れればそれを信じて疑わない。ゴシップが大好物なんだ」
そう、私たちは餌を撒いてやっている側の人間なんだから。