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Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~ - 死闘
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Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~  作者: 加藤大樹
第一章

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死闘

 先に動いたのはエイルだ。少年は迷うことなく、全力で後ろへと走り出した。無防備な背中が敵にさらされることになるが、構うものか。

 エイルが一心不乱に走る。


 ――逃げるつもりか?


 少年の行動を見て、魔の者が思案する。それは牙をむいてエイルを嗤った。

 まだ未成熟な少年の体躯では、己に敵わないと悟ったのか? 今更? だが、もう遅い。見逃してやるものか。


 魔の者が四つ足に力をこめる。

 楽しい、狩りの始まりだ。

 魔の者が駆けると、あっという間に、エイルとの距離を詰めてしまった。

 少年の倍以上はある体躯が、鷹にも勝る速度で迫りくる。


 あとたった一跳びすれば、少年のやわらかい首筋にかぶりつくことができる。

 魔の者は狩りの成功を確信した。

 獲物に噛みついて地面に引きずり倒してやろうと、それが口を大きく開ける。

 この子の血は、どんな味かな――?


(――今だ!!)


 エイルは、迫りくる魔の者との距離を肌で感じ取っていた。

 おそろしい。気を抜けば、へたり込んでしまいそうだ。一歩間違えば、即、死に至る。

 だが、エイルは恐怖に屈しなかった。それを仕留めるつもりだ。


 エイルが自身のすぐ後ろに光の破片を投げた。……と同時に、振り返って、魔の者と対峙した。


 ――なんだ?

 魔の者は、少年がただ逃げようとしていたわけではないことに気がついた。しかし、気づいたときには、もう遅い。


 それが、目の前に散り広がった光の破片に気を取られる――と、突如、それらが爆発した。

 熱い――!


 光の破片は、自然界における火山の力を内包している。

 エイルが投げた光の破片は、熱く燃え盛る榴弾となって、魔の者の体を焼き、削り取っていく。

 当然、エイルもただでは済まない。氷の魔法で全身を守っていたが、それでも負傷は必至だ。

 だが、攻撃を仕掛けた張本人にして、あらかじめなにが起こるのかを知っているエイルは、火山の魔法の余波に決して怯まなかった。

 エイルは振り向きざまの勢いを利用して、父親から譲り受けた剣に渾身の魔力をこめて、魔の者の首に狙いを定めて、剣を薙ぎ払った。


 エイルが勝利を確信する。――が、事態は少年の予測を上回った。


 魔の者が、エイルの渾身の一撃に対応したのだ。首を振り、口で剣を受け止める。――と、それを一瞬で奪い去って、遠くへと放り投げてしまった。


 少年は、魔の者を屠ることはできなかった。


 エイルの見当違いは、致命的な隙となった。

 負傷しながらも、次の一手を考え続けていた魔の者は、迷うことなく、無防備になった少年の首元に噛みつかんと、大口で迫った。


 エイルが咄嗟に片腕を突き出す。

 次の瞬間、魔の者の大きな鋭い牙が、少年の細腕を易々と突き破った。


 エイルの悲痛な叫び声が、大穴に響き渡る――。


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