父親の帰宅
扉がゆっくりと開かれる。それを形作る木材が軋む音がした。
扉が開いた先には、エイルとティルザが見知った人物が立っていた。その男が、堂々と中に入ってくる。
ロドルフ・ノルデン。エイルの父親だ。
「おかえりなさい。父さん」
エイルが笑顔で出迎えた。母親も息子に次いで、彼を出迎えた。
「ああ。ただいま」
父親の落ち着いた低い声を聞くと、エイルは不思議と精神が研ぎ澄まされていくような感覚を覚えるのだった。
鍛え上げられた筋肉に支えられている父親のがっしりとした体つきは、母親の血を多く受け継いだエイルが羨んでも手に入らないものだ。
ロドルフの腕は、獣や悪人などの外敵を容赦なく捻じ伏せるだろう。
羨ましい。
エイルがそう口にしたとき、父親は、お前は自分の道を歩めばいい、と息子に言った。
無理に同じ道を辿る必要はない、と。無理に私の真似をする必要はないのだ、と。お前の得意を伸ばせ、と。
父親は息子にそう言ったのだ。
ロドルフは、エイルの誇りだ。
エイルが父親のもとへ歩み寄る。
息子は彼を見上げた。
外回りをしてきたのだろう。汗っぽい香りがする。嫌いじゃない。
父親は息子を見た。
期待に満ちた顔。そわそわとせわしなく、何かを待っている様子だ。
ロドルフは、まだまだお子様な息子に向けて、こう言った。
「エイル。来なさい。今日は、お前に渡すものがある」
その言葉で、エイルは、ぱあっと顔を輝かせて、大きな声で返事をした。
「はい! 父さん!」