贈り物
エイルは、父親に連れられて、近くの物置小屋に足を踏み入れた。
昨日は大雨だった。土の香りがまだしている。足元がぬかるみ、気を抜くと足を取られてしまいそうだ。葉が濡れている。
父親が扉に手をかける。
ぎいっと木が擦れる音がして、ゆっくりとそれが開かれた。
いつもの見慣れた倉庫だ。
だが、注意深く見ると、その中にひとつだけ、見慣れない、真新しい収納箱が置かれている。鍵がかけられていて、厳重に鎖まで巻かれている。
なんだろう……?
疑問に思うエイルだが、実は少年は、中身に薄々感づいていた。
期待で少年の胸の鼓動が早まっていく。
父親が収納箱の封印を解くと、中身を取り出した。
「エイル。今年で十一歳だな。お前は、もう立派な大人だ」
父親は、誕生日おめでとう、と言うと、それを息子に手渡した。
エイルは、期待に震える両手で、そっとそれを受け取った。
金属の光沢が、薄暗い倉庫の中で煌めいている。打ったばかりであろう質の良い刃だ。
……本物の剣だ!
持ち手を握ると、吸いつくように、それは少年の手の中に収まった。
「うわぁ……!」
剣が放つ妖しい輝きに思わずエイルは見惚れてしまった。
「この日のために、エリアンと何度も話をした。奴の酒に付き合うのは苦痛だったが……彼に会ったら、感謝を伝えておきなさい」
エリアン――鍛冶屋の粗暴な男だ。
彼は性格に問題があるが、腕は一流という話は本当だったのだ。
エイルのために作られた特注の剣は、文句ひとつ浮かばない、完璧な仕上がりだった。
父親が息子を誘う。
「さあ、狩りに行こうか。お前の腕前を見せてくれ」
エイルは目を輝かせて、彼に応えた。
「はい!」
父親は、狩りに備えて小さめの槍と弓矢を手渡した。どれもエイルの背丈に合ったもので、真新しい。革の胸当て、背の弓、腰の狩猟槍、矢筒を背負った自分が、ほんのちょっぴり背伸びをしたように思える。
エイルは、まだ汚れひとつない鞘に剣を収めると、それをベルトに括り付けて、誰よりも早く倉庫を飛び出した。
興奮に弾む声で、息子は母親に声をかける。
「母さん! 狩りに行ってきます! 今夜はごちそうになるからね!」
エイルの大声で泣き出してしまった妹をあやしながら、事前に全てをロドルフから聞いていたティルザは息子を叱ることなく、優しく、行ってらっしゃい。どうか、気を付けて。と言った。