少女の夢 ~幻のように~
「ん……」
エルエッタが最初に見たのは、親友の腕に抱かれる自分の姿だった。つまり、彼女を見守るシャミィの瞳に映った己の姿を見ていたのだ。
どうやら、ふたりで愛し合っている間に、先にエルエッタの体力が底をついてしまったようだ。途中で、少女は眠りに落ちてしまっていた。
触れ合う肌のあたたかさを通じて、つい先ほどまで共有していた熱っぽい思い出が脳裏によぎり、エルエッタは顔を赤くした。
エルエッタが起きたことを知ると、シャミィは彼女に声をかけた。
「やあ、我が友よ」
「ええ……」
気恥ずかしさからエルエッタはシャミィの視線から顔を外すと、彼女の胸元に顔を寄せて、頬をこすりつけながら心地よさに目を細めた。
猫のように甘える少女の髪の毛をシャミィは指で絡めて弄び、少しの間それを楽しむと、親友の身体を優しく起こした。
「ずっとこうしていたいのだが……そろそろ時間切れみたいだ。見てくれ」
と親友に言われて、エルエッタは顔を上げて、あたりの様子をうかがった。
どくん。どくん。
魔女の世界の大気がうねりをあげて大きな振動を繰り返している。まるで、世界そのものが心臓になって脈を打っているかのようだ。空間の至るところで亀裂が走り、それは浸食を続けている。
この世界の終わりが近い。
エルエッタがこの現象を不気味に思っていると、同様に感じたのか、シャミィが小声で呟いた。
「……妙だな」
それは裸の寒さからか、それとも本能が告げる警告からか。エルエッタは小さく身震いした。
違和感の原因に思い至らなかったシャミィは、努めて明るくエルエッタに声をかける。
「ギベリィが私たちを追い出したがっているようだ! そろそろ到着する頃合いなんだろう!」
服を着よう、とシャミィは提案をした。
ふたりは立ち上がると、体を軽くほぐした。そして、少女たちの全身から色の付いた炎が発すると、それは激しく燃え盛り、彼女たちを呑み込んだ。
炎が消えると、そこには元の服を着たふたりが立っていた。
少女たちが衣類を身に着けた直後に、世界の崩壊は決定的になった。耳を塞ぐ手を突き抜けるほどの大音量の鼓動が鳴り響き、亀裂は蜘蛛の巣のように張り巡らされていく。
やがて、硝子を床に叩きつけたような音がすると、魔女の世界は完全に崩れ去ってしまった。
あとに残ったものはなにもない。全てが霧散してしまった。
「……ここは……?」
夕暮れだ。外の世界は、すでに雨が止んでいた。まだ土の香りが強く残っている。そして、静かだ。鳥のさえずりも虫の声も全く聞こえない。いつの間にか、林を、森を抜けていたらしい。
少女たちは平地にいた。郊外よりもずっと外側だ。人の住むような建物も見当たらない。遠くに森と山が見えるばかりだ。
私たちは、幻でも見せられていたのだろうか――。
そんなことはないとわかっているが、エルエッタは、なにもかもが消えてしまったことに、言い表しがたい寂しさと悲しさを感じた。