前進
煌々と光る燭台で真昼のように明るくなった地下通路を急ぎ足で進みながら、エイルは考える。
いったい、なにが起こっているのだろう。母さんが殺されて、妹が殺されて、父さんも殺されて。そして今、自分も殺されようとしている。黒騎士はおとぎ話の存在ではなかった、それも、何人もいて、血眼になって自分のことを探している。
いったい、自分にはどんな価値があると言えようか? 自分は、ただの子どもなのに……。
神様――人間を司る女神、トーラ様――はどうして、このような試練を与えたのだろうか? いや、そもそもこれは神のご意思なのだろうか?
そうこうしているうちに、エイルは海岸へと続く崖の中腹にたどり着いた。ここが出口だ。
しかし――。
どうやって、ここから降りればいいのだろうか。
エイルは滑り落ちないように、そっと身を乗り出して、下を覗いた。
切り立った岩場が眼前に広がっており、まともに直進したら、海岸にたどり着く前にすり身になってしまいそうだ。
このままでは進めない……。
立ち尽くすエイルの背中を押したのは、ネックレスに宿る両親の想いだ。ネックレスがひときわ輝くと、ごつごつとした岩場がネックレス由来の魔力を帯びて、次々と変形していき、階段と化したのだ。
「わぁ……」
エイルは純粋に驚いた。このネックレスを身に着けてから、事態は好転する一方だ。父親の形見は、この逃走劇に大いに役立っていた。
足を滑らせないように、エイルは慎重に階段を下りていく。無事に両足が砂浜に着くと、少年は安堵した。