遺品
再びどこかへと導き始めたネックレスの動きに従って、エイルは波打ち際の砂浜を歩いていく。一人分の小さな足跡が砂の上に刻まれて、やがてそれは波に呑まれて消えていった。
「あれは……?」
少し歩いたところに、それはあった。
崖側の入り組んだ場所に、岩陰に隠すように小舟が鎮座している。乗れるのは、せいぜい三人程度だろうか。手漕ぎの小さな船だ。
それを目撃したからだろうか。ネックレスが熱くなった。
「父さんは……これに乗って逃げろって言いたかったのかな?」
ネックレスに語りかけてみるが、当然返事はない。しかし、明滅する光が、そうだ、と言っているように思えた。
「よいしょっと……」
エイルが小舟を引っ張り出そうとする。……が途中で疲れてしまった。小型の舟だが、少年一人の力では少々重かったようだ。
「はあ……」
腕をぷらぷらと動かして疲れを取ろうとするエイル。とそこで、少年は小舟の中に荷物が置かれていることに気がついた。
「これは……?」
上品な装飾が施された、まるで宝石箱のような洒落た小箱だ。中に入っているのは、まさか非常食ではないだろう。
少年は留め具を外して、そっと蓋を持ち上げた。
中に入っているのは……。
「手紙と……なにこれ?」
エイルがそっと持ち上げたのは、大きめの硝子の筒だ。中には赤い液体が入っており、硝子は魔法によって補強が成されていることが触れることでわかった。つまり、そう簡単には割れないだろう。
この硝子の筒の正体に思い至らなかったエイルは、考えるよりも先に、手紙を読むことにした。