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蜂蜜とミルクティー - 17.フミと圭のシンクロ
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蜂蜜とミルクティー  作者: 暁 柚果
〈 3 〉
17/100

17.フミと圭のシンクロ

コンコンッ


「杏実です…」


木目調の引き戸のドアの向こう側から、「入っておいで~」と軽快な声がする

ここはフミさんとおばあちゃんの部屋

杏実が中に入ると、明るい日差しが入ってくるリビングが目の前に広がる。その奥に見えるソファーから、手招きしているフミの姿があった


あれから一週間経った

杏実は未だ……あのショックから立ち直れずにいる


仕事をしているとき、一人になったとき……フッと脳裏にあの軽蔑を含んだ”冷たい視線”が浮かんで胸が痛くなる

………自業自得だったのだと、わかっている

しかし―――落ち込まずにいることは、まだ無理だった

仕事中はもちろんのこと、なるべく表には出さないように努力してきた

しかし……身内の圭や、身内同然のフミには、杏実の変化は明らかだったらしい

いつものように笑顔を見せない杏実を、見るに見かねてか”仕事が終わったら部屋を訪ねてくるように”とフミが声をかけてきたのだ

杏実はホームに祖母がいるので、なるべく公私混合しないようにと休日の面会時間にしか部屋を訪れないようにしていた

しかし部屋で一人になると、一層悲しくなってきて……気分の落ち込みを自分自身で消化しきれない

大好きなミルクティーも今は……それが原因と思うと美味しく思えなかったりする

重症だ


そのため杏実は、その気遣いをありがたく受け取ることにして、仕事が終わってからここに立ち寄ったのだ


「来たね」

フミが杏実を見て、にっこりと笑顔を見せた

圭もその隣で、杏実が来たことにホッとしているような表情を見せた


「急にどうしたの?……寄ってけなんて」

なんとなく訳は分かっているが、一応聞いてみる

杏実が向かいのソファーに腰かけると、圭が「お茶を入れてくる」と言って、席を立ちキッチンへ向かっていった

それを確認してフミが口を開く


「どうしたの? ってそれはこっちのセリフだよ。杏実ちゃん……ここ一週間元気ないだろ? どうしたんだい?」


ぐっ…


いきなり直球で来たことに言葉を詰まらせる

その率直さはフミさんらしいが、今はこの気持ちをどう説明したらよいものか迷う

フミや圭の優しさに触れたかった

しかし余計な心配はかけたくない……それゆえ迷うのだ


「それは……その…」

「その?」

「……どう説明したらいいのか…」

「なんだい。歯切れが悪いね」

杏実の煮え切れない様子に、フミは顔をしかめる。しかしすぐに何か思いついたのか、ハッと顔を上げた


「ひょっとして―――先輩からいびられてるんじゃないかい!?ほら!!……この前山川さんになんか言い寄られてるただろ!」


ギクッ


あの合コンの次の日、”朝倉と突然帰った後、どうなったのか!?”と山川から問い詰められた

結構な剣幕だったので(正直怖かった)そのことをフミは言っているに違いない

まあ―――あの状況をどう説明したらよいかわからず、「そのまま帰った」と言い切ったが、山川はいまだ疑っているようだった…

時々誘導するような質問をしてくるので、困っている

ほんとに何もないのに……と思う


もちろん山川は怖いが、今回の落ち込みには何の関係もない

しかし一瞬杏実が考える様子を見せたので、フミが確信したように声を上げた


「やっぱりそうかい!?まったく私の大事な未来の孫嫁に………許せないね。上司に言って注意してもらわんと……いやクビ(・・)にして…」

「ちっ……違う違う!!山川さんは関係ないの!」


まったく……というわけじゃないけど(合コンに連れて行った…という点では)


「え? そうなのかい?」

物騒なことを呟いていたフミに、杏実は何度も大きくうなずいた


クビとか、フミさんならしかねないもん…


杏実のことを大切に思ってくれるのはうれしいが―――それは『職権乱用』である


第一……未来の孫嫁じゃないし!


「じゃあ……なんなんだい? 圭ちゃんによると、山川さんに無理やり接待かなんかに連れてかれたんだろ?」


ギクギクッ


その確信めいた言葉に言葉が出ない。するとキッチンから圭が「フミちゃん違うよ。合コンよ!」と叫んだ


「おばあちゃん!!」

まったく……言うんじゃなかった…

情報はいつも筒抜けで困る


しかも徐々に真実に近づいている


「そうか……合コン…合コン……なんか浮ついた響きだね」

聞きなれない言葉なのか、フミは何度か呟いている

何とかごまかせないか考える杏実に、フミはさらに切り込んできた


「もしかして……そこで何かあったのかい?」

「え?」

言いよどむ杏実の前にお茶が置かれる。圭が戻ってきたようだ

圭は動揺する杏実の様子を見て、なにか確信したのか一度うなずいた。そしてフミに向かって言う


「フミちゃん。やっぱり……あれよ!」

「ええ!!圭ちゃんほんと?」

「それしかないわ……この様子は」

二人はそういって同時に杏実のほうを見た。そして二人は再び見つめ合い、うなずいている


『やっぱり…』(シンクロ)


「ちょっと……やっぱりって何よ!?」

思わず割って入る

二人がいつも仲良く意気投合するのはわかっているが、自分のこととなると無視できない

杏実の声に二人は振り向くと、憐れむような目を杏実に向けてきた


なんなのよ!?


説明しようとした圭を、フミは静止し「ここはあたしが…」と説明し始めた


「杏実ちゃん…」

「は……はい?」

「ズバリ……失恋だろ?」


なんでわかったの?


杏実はその言葉にびっくりして言葉を失う

その言葉に、再びあの時の朝倉の言葉が脳裏に浮かんできた………涙が浮かんでくる

あらためて他者から言葉にされると、現実を突き付けられたようでショックも大きかった


「杏実ちゃん…」

そんな様子の杏実に、フミは思いやりのある表情を向けた



「フミさん…」

杏実が何か言わなくてはと口を開いたとき、横から圭の声が響いた


「違うわよ! フミちゃん」


え?


思わず圭のほうを見る

圭は口に笑みを浮かべて、きっぱりとフミに言い放った


「失恋はもう二年前の話よ。言ったじゃないの~」


グサッ


「ええ?そうだったかい?」

「そうよ。ほら……喫茶店の…」

「ああ。あの長~い片思いの相手だね~……結局会えないわ、告白もできなかったわで、落ち込んでたんだったね」


グサ……グサッ

なんでフミさんがそんなこと知ってるのよ!


「そうよ~。やっと忘れてきてたんだから蒸し返しちゃダメよ!」

「そうだったね……失言失言。このことは口に出しちゃいけない! ……って言われてたの忘れてたよ~」

そう言って、フミは恥ずかしそうに圭に笑いかける


……思いっきり今、口に出してますけど…


朝倉のことは圭にちらっと言ったことはあった

しかしまさか……このようにフミと話されていたとは、と愕然とする


「あれ? じゃあ圭ちゃん今回は?」

怪訝そうに顔をかしげたフミに、圭は得意げに話し始める


「……フミちゃん。合コンよ? ほら……新しい恋に決まってるじゃないの!?」


なっ?!


「ああそうか! なんじゃ~」

「そうよぅ~」

再び解決したとばかりに、にこやかに二人はほほ笑みあう

杏実は唖然となり、とっさに声が出なかった

二人はそんな杏実に気にすることはない。話は進んでいく

いわゆる完全に無視…


「え……でも困るよ。杏実ちゃんが新しい恋したら、孫の話はどうなるんだい?!」

「あら? そうだったわねぇ…」

「そうだよ。失恋して大分たったし、そろそろ頃合いと思って、あたしゃいろいろ計画を…」

「大丈夫でしょ。杏実この通り落ち込んでるし、大方うまくいかなかったのよ」

「ほんとかい?」

「大丈夫大丈夫! この通り杏実ってば、ファーストキスもまだ(・・)のお子ちゃまよ?自分でなんとかできるような器量があるわけないじゃない!」

「それもそうだね~……気にすることなかったね」

「そうよぅ~計画通りやっちゃえばいいのよ~」

『うんうん』……と二人はうなずいて………


「ちっ……ちがーう!!!」

杏実は、あわてて二人の間に割って入る

もう限界…

野放しにしていたら大変なことになる


「違う違う違う!!!」

とにかく必死で否定する。二人ともきょとんとしてこちらを見ていた

圭にいたっては「あら……居たんだったわね」と飄々としている。まったく動じていない


「ちょっと……二人とも勝手に話を進めないでよ!?」


「あら? 何か間違ってた?」……と圭

「失恋してただろ~」……とフミ

「……まあそれはそうだけど」………と杏実


『ほらほらぁ~!』

二人は同時にうなずく


もうやだ…


自分の過去を露見された恥ずかしさと、この馬鹿にされている感……顔は真っ赤だった

いつものことだが、この最強コンビには勝てた試しは……ない

でも自分のことだけに、ここは負けていられない


「とっ……とにかく、新しい恋なんてしてませんから!」

ここだけは自信を持って言えるので、情けない反論だが必死で訴える


「あら?そうなの?……でも杏実。落ち込んでたのはそのことが原因でしょ?」

圭は不思議そうにそう言う


「うっ…」

それは否定できない


「まさか……―――――なにかされたの?」

言いよどむ杏実に、先ほどと打って変わって真剣な表情で圭が訪ねてきた

その表情から、杏実を真剣に心配していることが伝わってくる


「そうなのかい?」

フミも心配そうにしている


「それは………」



コンコンッ


どう答えようか迷っていた時、杏実の後方から―――控えめなノックの音が響いてきた


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