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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 27 想像の上を行く現実
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27 想像の上を行く現実

 いよいよ始まるらしい魔族の集会に備えて、俺が心の準備を整えていると。ステージに立った中年の男性が言葉を発する。


『皆様、本日は私が所有する豪華客船、ルホルバン号へようこそ。今年の会をこの船で開催できる事を、心より名誉と感じます……』


 ……内容は潮浬の同時通訳だが、思っていたよりずっと常識的な挨拶だ。


 カルメ伯爵というらしい小柄な中年男性は、自分の船を自分で豪華客船と言ったり、指には大きな宝石がついた指輪もいくつも嵌めていたりしてちょっとアレな感じだが、挨拶自体は極めて常識的だ。


 豪華客船なのは本当だし、外国人はあまり謙遜けんそんしたりしないと聞いた気もするので、全体的に常識的なのかもしれない。


 なにか電波な発言が飛び出すに違いないと思っていたので、ちょっと拍子抜けしてしまったが。他に驚く事があって、潮浬の通訳がすごく上手いのだ。


 言葉が分からないので翻訳自体が上手いかどうかは不明だが、声を当てるのがとても上手い。しゃべり方や声の質なんかが、ステージ上の男性のイメージそのものなのだ。

 一瞬。本当に潮浬の口から出ているのか確認してしまったくらいだである。


 さすがはアイドル……なのだろうか? 声を出す仕事には違いないけど……。


 ……俺がそんな事を考えている間もカルメ伯爵の挨拶は続いたが、形式的でつまらない話に自慢が混じりだし。潮浬も訳すのが面倒臭そうな表情になってきたので、小声で別の話を振ってみる。


「ねぇ潮浬。この船の名前の『ルホルバン』ってどういう意味なんだろうね」


「さぁ、千聡なら知っているのではありませんか?」


 てっきり魔族がらみの有名な名前なのかと思ったら、違うらしい。

 千聡に視線を向けると、小声での会話が聞こえていたらしく。体をかがめて耳元で解説してくれる。


「元はゲール語。アイルランド語で『小人』を意味する言葉です。この世界で『レプラコーン』と呼ばれる幻獣の起源であり、カルメ卿はその一族です。伝承に伝わるレプラコーンは手の平ほどの大きさですが、実際にはそこまで小さくはありません。存在を秘匿ひとくするために、わざと誤った認識を広めた結果ですね。吸血鬼の『日光を浴びたら灰になる』などと同じです。もし疑われた場合でも、日光を浴びて見せるだけで疑いを晴らす事ができますから」


 ……なんかとてもスムーズに、想定の10倍くらい詳細な解説がきた。


 そして、せっかくの解説なのに耳元で発せられる千聡の声に意識をほとんど持っていかれて、全然頭に入らなかったのはちょっと申し訳ない気がする。


 でも、とても幸せな一時ひとときだった……。



 ――千聡のささやきで俺の頭がほわほわしている間に挨拶は終わったらしく、自由歓談タイムになったらしい。楽団の人達が演奏をはじめている。


 すると間もなく、どこかで見た事があるような人がやってきて。俺の前で西洋風に、片膝かたひざをついて頭を下げる。


『先日はお世話になりました、魔王和人様。おかげさまでわがあるじ、玉藻の病は見違えるように回復しております。さすがに本日の参加は叶いませんでしたが、代わりにこれを。貢物みつぎものとして預かって参りました』


 言葉は例の異世界語かなにかなので潮浬が訳してくれるが、話の内容で思い出した。先日京都に行った時に会った、たしか天狗てんぐさんだ。


 日本語で話してくれればいいのにと思うが、よく見ると会場には何人かこちらに視線を向けている人達がいるので、その人達にも伝わるようにだろうか?


 そんな事を考えていると、天狗さんは小脇に抱えていた風呂敷ふろしき包みを解き。出てきた木箱をそっと開けて、中から紫色の布に包まれたお茶碗を取り出した。


 ご飯を食べる時に使うやつではなく。お茶会とかで使うような、なんか高そうなやつである。


 大切そうに捧げ持たれたそれを見てみると。全体は黒ベースの地味な物だが、内側に光沢のある濃いあい色の模様が浮かんでいて、なんか宇宙空間を写した写真みたいだ。

 ちょっと幻想的なお茶碗である。


耀変天目ようへんてんもくですね』


 千聡の言葉も異世界語なので潮浬が訳してくれるが、一瞬本物の千聡の声かと思った。

 潮浬の声真似、わりと本気で神技レベルだと思う。


『はい。織田信長公と共に本能寺で焼けたとされている品です。焼失直前、玉藻様の命を受けて私が保護しに参りました。玉藻様所有の品でも、最も貴重な物の一つでございます』


 お、なんか俺も知ってる名前が出てきた。

 出てきたけど、織田信長って……。


 本能寺の変っていつだったかな? たしか語呂合わせで覚えた記憶がある。『イチゴパンツで本能寺襲撃』だから、1582年か。400年以上も前の計算だ。天狗さん、そんなに長く生きてる設定なんだ……。


 そんな事を考えていると、お茶碗の披露ひろうは終わったようで。再び丁寧に箱へと戻されて、千聡の手に渡る。


『玉藻殿がお元気になられたようでなによりです。忠誠の証を嬉しく思うとお伝えください』


『はい、必ずや』


 千聡と話をしていた天狗さんは、最後に俺に向かって深々と頭を下げ。会場の人混みへと消えていく。


 話は千聡と天狗さんの間で終わったようで、俺は別に口を挟む事もなかったので普通に聞いていたが。年長者に頭を下げられるのは、小市民の俺としては微妙に居心地が悪かった。


 まぁ、劇でシンデレラをやる時とか。主演の人を端役はやくの人がイジメたりするので、その類のものだと思って納得する事にしよう。


 そう自分の中で結論を出していると、千聡は貰った風呂敷包みを俺の足元に置き。潮浬とリーゼに俺の事を頼んで、挨拶回りに出かけて行った。


 たまに人を連れて戻ってきては紹介をしてくれるが。最近千聡達の話についていくべく幻獣や妖怪の勉強をしている俺でも聞いた事がないような、小部族のおさ達らしい。

 ちなみにさっき出てきたレプラコーンは、ギリギリ名前だけ知っていた。



 やはり年長の人に頭を下げられるのは慣れないなと思いながら、挨拶に来る人達と魔王を演じつつ対面して時間を過ごしていると。不意に千聡の案内ではなく、五人の黒スーツに身を固めた一団がこちらにやって来るのに気がついた。


『魔王を名乗っている新参ってのはおまえか』


 潮浬の通訳によるとそう問いを投げてきたのは、身長二メートルはありそうな、ゴツイ体格をした大男である。


 筋肉隆々の体に怖い顔。室内なのにサングラスをかけたその風体ふうていは、完全に危ない人である。

 後ろの四人も負けず劣らずの大男揃いで、しかも揃って顔が怖い。おまけに、自動小銃っぽいものまで肩に下げていらっしゃる。


 ――マフィアのコスプレ……とかだろうか? すっごく完成度高いけど。


 そんな事を考えていると、異常に気付いたらしい千聡がすばやく戻ってきて俺と大男達の間に立ち。言葉を発する。


『いかにも、この方は魔族を統一された偉大な王。魔王和人様であらせられます。無礼な物言いはお控え願いましょう』


 見上げるような大男相手に、一歩も引かない千聡の言葉。

 五人のボスなのだろう男は一瞬千聡を見たが、すぐに俺へと視線を移す。


 男は背が高いので、間に立つ千聡越しに俺と目が合った。


 ぶっちゃけ顔だけでかなり怖いのだが、千聡にお願いされている手前精一杯魔王らしく。ソファーに座ったまま平静をよそおって、視線を合わせる。


『フン、こんなヒョロっちい奴が魔族の王だと? 頭イカレてんじゃねぇのか?』


 ……うん、俺が全然魔王っぽくなくて弱そうなのも。言い方はちょっとあれだけど、妄想癖などが若干心配になるのも同感だ。


 意外な事に、今まで千聡達経由で関わった人の中で一番共感できる言葉ではあるが。惜しむらくは、なにやらとても高圧的な事である。


 今の言葉を訳してくれた潮浬は、声を真似るのも忘れてしまったのか冷たい無感情な声だったし。リーゼはいつでも刀を抜けるように、こしを落としてギターケースに手をかけている。



 急速に不穏な空気が漂いはじめたパーティ会場で。俺はこれも演出の一環で演技だったらいいなと、心の底から祈るのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.11%(西日本と小さな拠点がいくつか+小勢力三つ)


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%(カンスト)

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― 新着の感想 ―
[一言] 千聡さんの囁き、羨ましいですねw
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