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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 55 平和なアパートの日常(多分)
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55 平和なアパートの日常(多分)

 千聡達にプレゼントを渡した翌日。予定通りイリスさんがアパートにやってきて、103号室の住人となった。


 イリスさんはシバを一目見るなり『まさかブルハルシュだったとは……』とドン引きし、『和人様信じてください、知っていて勧めた訳ではないのです!』となにやら必死に言い訳をしていたが、どうやらよほど凶暴な魔獣という設定らしい。


 だが実際のシバはとても大人しいし、人懐っこくてかわいい柴犬だ。


 今もリーゼと散歩に行った後。執務室の上が芝生敷きの中庭みたいになっている事を発見したので、そこで一緒に遊んでいる。


 リーゼはもちろん、なぜか千聡と潮浬にイリスさんもついてきて後ろで見ているが。シバは賢い上に運動神経もよくて、野球ボールを山なりに投げると見事に空中でキャッチし、くわえて戻ってくる。


 戻ってきたらめてでてあげて、また投げるのをくり返していたら、リーゼが『閣下、自分もやりたいです!』と言い出したのでボールを渡してあげたら、『え?』みたいな表情をして、首をかしげられた。


 ……しばらく考えて一つの結論に思い至り。無言でボールを投げてみたら、シバとリーゼが同時にスタートを切り。双方見事なジャンプ力でったが、リーゼが背面跳びで見事にボールをキャッチした……口で。


 人間の口の構造的に、野球ボールなんてくわえるだけでかなり難しいと思うのだが。リーゼは咥えたまま戻ってきてボールを俺に渡し、犬みたいにおすわりのポーズで見上げてくる……。


 目がものすごく『褒めて』と言っていたので、頭を撫でて『えらいえらい』と言ってあげたら、すごく嬉しそうに輝くような笑顔を浮かべた。

 かわいいけど、なんか変な気持ちになるな……。


 競り負けたシバも戻ってきて、『体が大きい分ずるい』みたいな目でリーゼを見ていたが。リーゼは俺に撫でられながら、シバに向かって満面の笑みでドヤ顔をキメる。犬相手に大人気ない事の上ない。



 リーゼは二回目もやって欲しそうにしていたが、人間相手にやる遊びではない気がしたので、そこで終了にして話を変える。


「ねえ千聡」


「ワン」


「え?」


「あ――も、申し訳ありません。はい、なんでしょう魔王様?」


 ……今、明らかに『ワン』って言ったよね?


 千聡が顔を真っ赤にしている所に、潮浬がニヤニヤしながら近付いて行って肩を叩く。


「わかるわかる。自分も陛下の犬になって、命令されたり褒めて貰ったりしたいわよね。首輪もつけてもらったりね」


「…………」


 潮浬はちょっとアレな事を言うが、千聡は耳まで真っ赤にして視線を逸らすだけで、なぜか否定しない。


 あれ、これだとなんか認めてるみたいなんだけど……?


 なんか不穏な気配を感じたので、誤魔化すように話を打ち切り。部屋に戻る事にした。


 イリスさんの口が途中から半開きだったけど、呆れたのだろうか……?




 そんなこんなで、イリスさんが来て数日。新しい生活にも馴染みはじめたが、一人だけ馴染んでいない人がいる。


 それは潮浬で。なんと言うか、イリスさんとの仲が死ぬほど悪い。


 さっきも仕事から帰ってきたとたん。イリスさんの姿を確認するや、


「陛下、今日も暑いですね。湿度も高くて不快指数が高いです」


「そうだね、まぁ8月だから」


「ですね……そういえば不快指数が高いで思い出したのですが、最近イリスルビーレ卿を見かけませんね」


「ワタシここにいるけど……」


「あら、いたのですか。全然気付きませんでした。まぁそんな事はどうでもいいですが、陛下……」


 という、大変刺々しい会話をした。


 ちなみにこの形式のやり取りはこれが初めてではなく。一昨日は『昨夜部屋に蚊が出たのですよ、害虫はうっとうしいですね……害虫はうっとうしいで思い出しましたが、最近イリスルビーレ卿を(略)』だったし。


 昨日は『明日はゴミの日ですので、なにか捨てるものがありましたらお申し付けください……そういえば生ゴミで思い出しましたが。イリス……『ちょっと、いま生ゴミの話なんて出てなかったでしょう!』というやり取りだった。


 なお、全てイリスさんの目の前での会話で。イリスさんがいない時にはイリスさんの話題は全く出ない。完全に悪意100パーセントだ。


 まぁ、イリスさん本人は気にしていないようだし。むしろ苛立いらだつ潮浬を見て楽しんでいるようですらあるので、今の所放置してある。


 千聡も『放っておけば良いと思います』って言ってたしね……。




 ……そんなこんなで、更に数日が過ぎる。


 アイドルの若槻潮浬が手首につけたアクセサリーを『大のお気に入りです』と発言した事でキーホルダーが一瞬で売り切れ。あっと驚く値段で転売されたりもして、危うく俺も自分のを売りそうになったが。リーゼが悲しむだろうなと思って自重するなどの事件はあったが、他はおおむね異常なく過ぎている。


 キーホルダーも、透明な樹脂で覆われて保護され。千聡のは首から下げられてネックレスになり。潮浬のは細い鎖をつけられて手首に巻かれ。リーゼのは剣にドラゴンが巻きついたやつと一緒に愛用のギターケースにつけられ。シバのは首輪につけられと。全部揃っているので転売した人はいないらしい。


 ちなみに、正規の用途であるかぎに付けているのは俺だけだ。



 そんな感じで多分穏やかなのだろう日々が過ぎていたが、それを揺るがす事件が起こったのは、8月も半ばのお盆を過ぎた頃。


 俺のスマホに『ヤッホー、和人君元気? 今日そっちに帰るからお土産期待しててね!』と、204号室の住人である高宮有紗さんから連絡が入った時からだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.16%

・西日本の魔族と小さな拠点がいくつか

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を配下にしたかも?


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『シバをまるで犬のようにあしらい、あのイリスルビーレ卿さえ呆然とさせる魔王様の圧倒的な御威光。やはり偉大なお方だ』忠誠度上昇

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