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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 61 勇者も楽ではないのです
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61 勇者も楽ではないのです

『あたしもそんなに強く信じられるものがあったら、もうちょっと幸せに生きられたのかな……』


 なにやら意味深な言葉を、しんみりとした口調で言う有紗さん。ちょっと場の雰囲気が変わるのを感じる。


 ……と言うか俺の中での有紗さんのイメージって。昼間からお酒を飲んでばかりでなんの心配事もなさそうな能天気お姉さんなのだが、違うのだろうか?


「もしかして有紗さん、お酒を飲んでいるのはなんか辛い事から逃げるためだったりするんですか?」


「え、お酒は美味しいし、楽しいから飲んでるだけだけど?」


 ……やはりそうか、心配して損した――と思うが、でも一瞬。有紗さんらしからぬ、物憂ものうげな気配を感じたのも確かだ。


「有紗さんは幸せに生きれてないんですか?」


「ん? 今は幸せだよ。お酒おいしいし、この世界は……少なくともあたしの周りは平和だし、お酒おいしいしね」


 三つしかないのに、『お酒おいしい』が二つも入った。

 平和云々うんぬんの所で一瞬詰まっただけで記憶が飛ぶとか、この人酔ってるのだろうか? ……まぁ酔ってない訳ないよね。


 持ち込まれた時よりも10センチくらい水位が下がったウイスキーの大きなペットボトルを見ながら、話を続ける。


「じゃあ、人間不信とかなんですか? 信じられるものがどうのって言ってましたけど」


「う~ん、それはあるかもね」


「もしかして、酔っ払って寝てる所に何かされたとか?」


「それも無くはないわね。聖光石のおかげで実際なにかされた事はないけど、石が反応するって事はなにかされかけた訳で、その回数の多さは軽く人間不信になるわよね……」


「無くはないって事は、メインじゃないんですか?」


「うん。メインは……昔の記憶のせいかな」


 お、これは千聡達にもよくある前世の記憶パターンだろうか? 有紗さんは勇者だったんだっけ?


 一瞬迷ったが、ここは話に乗るべき所だろう。お互いの苦労話とかをすれば、千聡達と仲良くなるチャンスかもしれないし。


「勇者って大変だったんですか?」


 俺の問いに、有紗さんは苦笑を浮かべてコップに口をつけ。少し間を置いて言葉を発する。


「まぁ、大変と言えば大変だったかな。……和人君は、生き物を殺した事ってある?」


 生き物……そりゃやハエくらいなら殺した事があるし、さっき調理したホタテ貝はまだ生きていたから、俺が殺した事になるのだろう。


「虫や食材くらいなら」


「そっか……あたしはいっぱい殺したよ。勇者って、魔族を殺すのが仕事だからさ……」


 有紗さんはそう言って、視線を千聡達に巡らせる。


 千聡達に鋭い緊張が走り、リーゼが腰を浮かしかけるが。有紗さんはそのまま視線をコップに戻し、また口をつけて言葉を続ける。


「和人君は覚えてないかもだけど、魔族っていろんな姿をしたのがいたんだよ。中には人間にそっくりな種族もいた。そして当然だけど、女の人や子供もいたんだよ……」


 有紗さんはコップの中身を一息に飲み干し。トポトポとお代わりを注ぐと、両手で包み込むようにコップを持ちながら話を続ける。


「武器を持って向かってくる相手なら倒しやすいけどさ。逃げ回る相手を追いかけて殺して回るのって、わりと辛いんだよね。それも姿が人間に似ていたり、言葉をしゃべって命乞いされたりしたら、尚更だよ。特に必死に子供を守ろうとしている母親を前にした時なんて、もうね……。結局手を下せなくて、お供の人達にやってもらった事が何度もあったよね……」


 ……なんか、突然すっごく重たい話になってきたな。


「あたしね、15歳までは普通の田舎いなか娘だったんだよ。それが15歳の誕生日に当然勇者の証が浮かび上がったとかで、村中大騒ぎになってさ。お父さんとお母さんはそれはもう喜んだし、王都から迎えの人達が来た時なんか、村中総出で見送ってくれた……。

 それで、王都の近くにある勇者にしか入れないらしい洞窟に連れて行かれて、重そうな扉を押してみたら、これがまた簡単に開いてね。言われるままに中の祭壇さいだんで祈ったら、気付いた時には目の前に聖剣と聖光石があった……漫画みたいだよね」


 有紗さんはそう言って弱く笑うが。その笑顔には明らかに影が射していて、これから先の話に不安をいだかせる。


「それから一年、勇者としての訓練を受けたんだけど。剣術の他に勇者の心得こころえって言うのかな? 教会で勉強もした。勉強って言っても文字も読めない田舎娘だから、勇者の使命とか魔族がいかに残酷で悪いやつらかって話を、偉い人から聞くだけだったけどね。

 それで、その話は正直ピンとこなかったんだけど、ある日孤児こじ院に連れて行かれてさ。そこにいるのは、魔族に親を殺された子供達だって説明されたんだよ……」


 お、なんかきな臭い話になってきたぞ。


「……あたしもその時はまだ15歳で半分子供だったけど、それよりもっと小さい。10歳にもならないような子供達が大勢集まってきてさ、あたしの服をつかんで泣くんだよ。口々に、『勇者様、お父さんとお母さんのかたきを取ってください……』って言ってね。

 ……今思えはちょっと出来過ぎな気もするけど、当時のあたしは純粋な少女だったからさ。その場にしゃがみ込んで子供達を抱いて、一緒に泣いたよ。そして、『うん、絶対仇を討ってあげるからね……』って、何回も約束した。正直教会の偉い人の話なんかよりも、あれが一番効いたよね。絶対にこの子達の両親の仇を取って、魔族を滅ぼして平和な世界にするんだって。使命に燃えたよ……」


 千聡がものすごくなにかを言いたそうな表情をしているが、気持ちはわかる。

 俺の頭の中にも『ヤラセ』という言葉が浮かんでいるが、有紗さんもちょっと察しているみたいだし。100パーセント嘘ではなく、魔族に親を殺された孤児だというのは本当で。演出が過剰なだけという可能性もあるから、突っ込むのは難しい。


 微妙な空気の中、有紗さんはまたウイスキーを口に運びながら話を続ける。


「ご大層な決意を持って旅立った訳だけど。実際現場で魔族の子供を見て、あたしの心は揺れた。魔族を滅ぼすっていうのが具体的にどういう事なのか、よく分かってなかったんだろうね。

 でも、一緒についてきた人達はあたしが魔族を殺すとめてくれたし。魔族の集落を一つ滅ぼすたびに、『これでまた世界平和に一歩近付きましたね』って言って喜んでくれた。

 正直辛かったけど、村の人達に声援と共に送り出してもらった手前、任務を放り出して逃げ帰る事なんてできなかったし。泣きながらあたしにすがりついてきた子供達を思い出して、今あたしが頑張ればこの先ずっと世界は平和になるんだって信じて、剣を振り続けたよ……」


 有紗さんは不意に伏せていた顔を上げ。まっすぐ俺に視線を合わせる。


「でも多分、あたしの心は限界に近かったんだと思う。和人君と……魔王と対峙たいじして聖剣を掴まれた時。剣を振れば多分魔王の腕を切り刻めたし、そのまま倒す事だってできたと思う。でもあの時、あたしは剣を振らなかった……振れなかったのかもしれないね。ただぼんやりと、光と音を発しながら魔王の腕を焼く聖剣を、じっと見ていたんだよ……『このまま聖剣が折れてしまえばいいのにな』って、勇者にあるまじき事を考えながらね……」


 有紗さんはそう言って、コップに入ったウイスキーを大きくあおり。千聡達に視線を向ける。


「結局あたしは人間のために魔族を滅ぼすっていう使命を、最後まで信じ抜く事ができなかったんだよ……。だから一旦終わりを迎えて、生まれ変わってもまだ魔王を信じ続けていられるあなた達を見ると、うらやましいし、まぶしいよね……」



 どこか寂しそうにそう言いながら。有紗さんはコップに残っていたウイスキーを、一息でのどへと流し込むのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.19%

・西日本の魔族と小さな拠点がいくつか

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『勇者の話が本当なら、魔王様は魔族だけではなく勇者自身をも救った事になる。どこまで偉大なお方なのか……』忠誠度上昇

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一人一人のキャラが立っていて凄くいい。量産型主人公好き好きヒロインと違って好感が持てる。 [気になる点] 勇者との初対面の時に性別が変わっても、と口にしているのに勇者の過去語りの際に田舎娘…
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