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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 66 夏の思い出
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66 夏の思い出

 千聡が用意してくれていた宿は、湖から少し離れた所にあり。純和風の落ち着いた所だった。


 ヨーロッパ旅行の時。豪華なホテルで俺が落ち着かない様子だったのを覚えていて、配慮してくれたのだろうか?


 それでも、旅館の中にも外にも玉藻さん配下の顔が怖い人達が大勢いて警戒に当たってくれているので、やっぱりちょっと落ち着かない。


 そして、なぜかまた千聡達三人と同じ部屋だ。違いと言えば、今回はシバがいる事くらいだろうか?


 ちなみにシバは玉藻さん達はもちろん、水竜さんにもドン引きされていた。

 大人しくてかわいくて賢いのに、ちょっとかわいそうだ。


 ちなみに今は、リーゼと一緒に仲良く寝ようとしている。


 その光景はほほえましいが、やはり美少女三人と同室で寝るというのはかなり緊張してしまう。


「……ねぇ千聡。あんなに大勢が警戒してくれてるんだから、同じ部屋で寝る必要ないんじゃないかな?」


「玉藻殿は信用の置ける方ですが、それでも100パーセントはありえません。私が魔王様の身をゆだねてもいいと思えるほど信用しているのは、この世界で潮浬とリーゼの二人だけです」


 きっぱりと言い切った千聡の言葉に、リーゼが嬉しそうに顔をほころばせる。


 ……リーゼはともかく、潮浬とかむしろ世界でトップクラスに危険な気もするが。襲われるとしたら性的にだろうから、俺の身の安全という意味では問題ないのだろうか?


 そんな訳で、また大部屋で四人一緒に寝る事になり。寝入りはちょっと緊張したが慣れというのは怖いもので、そこそこ熟睡する事ができたのだった……。



 翌朝。朝食の席で潮浬が『陛下。せっかくここまで来たのですから、夏の思い出に泳いでいきたいですね』と発言し。俺は(昨日泳いだのでは……)と思ったが、どうやらみんなで海水浴がしたいという話らしい。


 湖なので海水浴ではなく湖水浴だが。ともかく潮浬の提案にリーゼは賛成、千聡は俺の意見次第との事で、どうやら決定権は俺にあるらしい……。


「潮浬、男に水着姿見られるの嫌じゃなかったの?」


「『陛下以外の』男には嫌ですね。なので昨日の水竜に話をして、姿を隠してもらうように頼んであります。きり蜃気楼しんきろうを発生させる事ができるそうなので」


 ……どうなんだろう? これまたありえない気がする話だが、魔族という存在が本物かどうかを確かめる、いい機会になるかもしれない。


 それに、夏の思い出という響きも魅力的だ。


「わかった。じゃあみんなで行こうか」


「――ありがとうございます、陛下!」


 潮浬は嬉しそうに満面の笑顔を浮かべ、リーゼも喜んでいる。

 千聡は慌しくスマホを操作しているが、予定の変更に対応しているのだろう。ちょっと申し訳ない……。



 ……そんな訳で、俺達はまた田沢湖に戻ってきた。


 俺もスマホで調べてみたら湖水浴場があるらしいが、俺達が向かうのは逆方向。森の中を通っている道である。


 人気がない所で車が停まって、俺達は道もない斜面を湖へと降りる。足場が悪いので、リーゼがお姫様抱っこをして運んでくれた……。


 ……いやまぁいいんだけどね。この中で一番運動神経悪いのは間違いなく俺だし、俺が転んで怪我でもしたら湖水浴は中止になってしまい。そうなったら楽しみにしている様子のリーゼや、すごく楽しみにしている様子の潮浬に申し訳ないからね。


 湖岸まで降りる途中。急に濃い霧のようなものに巻き込まれて1メートル前を行く潮浬の背中さえ見えなくなったが、ほんの一瞬で霧を抜け、気がついたら湖岸に到着していた。


 俺達の回りはきれいに霧が晴れていて、上を向けば青い空も見えるが。周囲を見ると10メートルほど向こうに俺達を囲むように真っ白い霧の壁があり、ポッカリと開いた穴の中にいるみたいだった。


 幻想的げんそうてきな光景で、潮浬が言っていた通りでもある。

 とても自然には起こり得ないだろう超常現象でもあり、俺の中で千聡達本当に魔族説がいよいよ高まってくる……。


 近寄ってみた湖岸はいそのような岩場で、ビーチっぽさは欠片もないが。水は澄んでいてすごく綺麗だ。

 でも、泳いだり遊んだりするにはちょっと危なそうな気もする。


 ――と、湖をのぞいていた俺の視界に。ゆっくりと巨大な影が浮かび上がってきた……。


「魔王和人様、ようこそおいで下さいました。昨日の無礼のお詫びとして、本日はごゆっくりお楽しみ下さいませ」


 昨日の水竜さんがゆっくりと巨大な頭を浮かばせ。ちょっと控えめな声を発しながら、一度出した頭をまた半分沈める。となりにはもう一匹。二回り小さな竜も一緒だ。


 何回見ても常識外れの大きさで。ゆっくりと動いているのに、湖岸には結構な波が押し寄せてくる。ギリギリ俺にかからないのは、調節してくれているのだろうか?


「今日はよろしくね」


 潮浬の言葉に水竜さんはうなずき、ゆっくりと水に潜っていく。そして尻尾……でいいのだろうか? その部分をまるで桟橋さんばしのように、岸に渡してくれた。


「陛下。行きましょう」


 潮浬はそう言って、当然のように水竜さんの尻尾に乗り。そのまま湖の上に道のように浮いている背中へと進んでいく。


 いいのかなと思って近くにいるもう一匹の竜。多分娘の多津姫たつきさんに視線を送ると、こっちも頭を半分沈めた。


 多分いいのだろうなと俺の中で結論を出して、恐る恐る水竜さんの尻尾に足を乗せる。

 うろこは意外とザラザラしていて、踏ん張りが効いて歩きやすかった。


 ……最初は平均台くらいの幅だった水竜さんの体は先に進むにつれてどんどんと太くなり、しばらく進むと布団が敷けそうなくらいに。

 更に進むと、車でも通れそうなくらいに広くなっていく。


 俺達が通った後は水竜さんの体が沈み、代わりに前に道が浮かんでくる。濃い霧も、ピンポイントで俺達を穴の中心に捉えたままで、ピタリとついてきた。


 潮浬によるとこの霧は水竜さんの力によるもので、更に回りに蜃気楼のような揺らぎを巡らせる事によって、外からはなにもないように見えているとの事だった。


 呆気あっけにとられたまま、50メートルくらい進んだ所で潮浬は足を停め。今度はゆっくりと地面が。水竜さんの体が沖に向かって動きだす。



 ――そしておもむろに、潮浬が服を脱ぎ始めた……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

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