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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 78 新学期(2)「日常」
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78 新学期(2)「日常」

 新学期がはじまって一週間。千聡達との学校生活もようやくパターンが決まって、安定してきた。


 朝は車でアパートを出て、表向き千聡達三人の住所となっている家へ。

 そこから少し歩いて学校に着き、帰りは逆のルート。


 そして学校の中では、笠井がいい具合に防波堤とアンテナ役を兼ねてくれている。


 俺が『笠井はあまり警戒しなくていいよ』と言ったので、千聡達も警戒心を向けるのを押さえてくれているらしく。今まで通り俺と普通にしゃべっているし、昼食は千聡達も一緒に5人で食べている。


 千聡達はなるべく目立たないようにと、勉強も運動も力を抑えて平均の少し上くらいを維持する方針らしいが。いかんせん三人共すごい美人なので、それだけでもう目立たないなんて不可能である。


 聞く所によると、早くもファンクラブが結成されたりしているらしい。


 だが、直接千聡達に話しかけるのは気後きおくれするようで。かといって俺経由も『あいつに話しかけると悪寒おかんがする』という一歩間違えればイジメな噂が広まっているので、千聡達への接触ルートとして笠井が使われている訳だ。


 まぁ、千聡達に話かけるの気後れするのも俺に話かけると寒気がするのも、千聡達が威嚇いかくしてるからなんだけどね……。


 そして笠井本人は『アイドルの若槻潮浬』一筋であり、千聡達はもちろん変装モードの潮浬にも興味を示さないので、情報を仲介発信するアンテナ役として最適なのだ。


 クラスメイトや学校の人達が千聡達に接触しようとする時の窓口にもなってくれていて、最初の数日は山のような手紙を運んできた。


 その手紙は千聡が三人分まとめて一通ずつ丁寧に返事を書き。悪感情をいだかれないように、それでいてガッツリ心を折りにいく絶妙な文面を返し続けた結果、一週間で全く来なくなった。


 今や学校の生徒達の間では、『千聡達三人は観賞用』という認識が定着しつつある。


 色々と貢献してくれた笠井になにかお礼をと潮浬に打診した所、数日して『抽選で一名様に若槻潮浬の直筆サイン入りCDをプレゼント』という企画が急遽二名様になり。その一人として笠井が当選したらしく、休み時間にそれを知った笠井はテンション爆上げで、涙を流して喜んでいたし、教室のみんなはちょっと引いていた。


 多分だけど、十分貢献に報いる事ができたと思う。



 他に変わった所としては、近くの空き教室に『特別補習室』という場所ができた。


 例によって千聡が手を回したのだろうが、転入生である千聡達三人。特に外国育ちであるリーゼに日本語その他を学んでもらう場所……という設定だ。


 なお、リーゼは日本語ペラペラだし、読み書きも特に問題はない。

 学校では多分ドイツ語だと思う言葉をしゃべっているが、クラスメイトと距離を置くための演出である。


 なので必要性は特にない部屋なのだが、千聡的には必要なのだろう。


 部屋は校長室よりも豪華な作りで、ソファーとテーブルをはじめベッドにシャワー、トイレまで完備されている。


 千聡いわく、いざという時には10日間立てこもれるだけの水と食料も備えてあるそうだ。

 どんな事態を想定しているのだろう?


 そしてこんな部屋を数日で用意できるとは思えないので、かなり以前から。恐らくは俺と出会った直後から準備をしていたのだろう。

 初対面の自己紹介で学校名を出した記憶があるからね……。


 ちなみに俺は、なるべくここのトイレを使うようにと千聡にお願いされている。


 護衛という事で常に最低一人と。大抵は三人一緒にいるのだが、さすがに男子トイレに入ってくるのは問題あるからね。


 部屋のドアには生体認証装置みたいなのが付いていて、俺達以外だと開かないし。勉強をする場所という建前のせいか、笠井が来る事もない。アイツ勉強嫌いだからな……。




 そんなプライベート空間のドアが突然ノックされたのは、新学期がはじまって10日目の事だった。


 三時限目と四時限目の間の10分休み。俺がトイレに行くのになぜか全員付いて来て、ついでにちょっと休憩していた時の事。


『コンコンコン』と軽快なノック音に千聡達の間に緊張が走り、リーゼが殺気を放つ。


 新学期がはじまって数日は何度かこういう事があったが、みんなリーゼの殺気におびえて逃げていった。


 だが今日の訪問者は、少し『ビクッ』とした気配は伝わってきたものの、しばらくしてもう一度ドアをノックする胆力の持ち主らしい。


 千聡がリーゼに目配せをして立ち上がり。黙ってうなずいたリーゼがピタリと俺のとなりに来て警戒に当たる。

 潮浬が慌しく、テーブルに本やノートを広げはじめた。


 学校にそんな警戒しなきゃいけない相手なんていないと思うが、千聡は準備が整ったのを確認すると、ドア越しに訪問者に声をかける。


「どちら様ですか?」


「同じクラスの天川てんかわです」


 訊くまでもなく隣のモニタに訪問者の姿が映し出されていて、間違いなく同じクラスの天川さんなのだが、千聡はあえてドア越しに問いただす。


「ご用件は?」


烏丸からすま君に話があって来ました。なるべく人に聞かれたくない話なので、この部屋に入るのを見てチャンスだと思って」


 その言葉に千聡達の緊張が一層高まるが、こう言われて開けないのも不自然だと思ったのだろう。千聡がゆっくりとドアを開く……。



「お邪魔します」


 そう言って入ってきたのは、長身でちょっとキツい感じのする女の子。

 たしか弓道部だが体術もできて、街で絡んできた男三人をあっという間に投げ飛ばしたという武勇伝を聞いた事がある。


 本当かどうかは知らないが、さもありなんという感じの雰囲気である。


 俺との接点なんて全く心当たりがないが、天川さんはその鋭い目をまっすぐ俺に向け。凛とした声を発する。


「烏丸君。なにか良くないものがいてるよ」


「……はい?」


 なにを言われているのか困惑する俺をよそに、天川さんは言葉を続ける。


「最初に見た時からなんか変な感じはしてたんだけど。違和感程度だったし、体に異常がないみたいだから様子を見ていたけど、夏休みの後から明らかにおかしいよ。さっきも部屋の前で凄く嫌な感じがしたし……なにか心当たりある?」


 真剣な表情で詰め寄られるが、部屋の前の件はリーゼの殺気だろうし。自覚してない事の心当たりといわれても……あ。


 そういえばたしか、天川さんの家は古い神社だと聞いた気がする。そしてこの夏休みにあった変わった事といえば、盛大に心当たりがある。


 ……俺は嫌な予感を覚えつつ。『そういえば、心霊スポット的な所に行ったかも……』と、曖昧あいまいな返事を返す。


 実際に行ったのは魔族の地下拠点だが、ある意味心霊スポットと言えなくもない。

 妖怪と幽霊は違うんだろうけど、なんか人魂っぽい人もいたしね。



 だが俺の返事に天川さんは納得できなかったようで。その鋭い目を更にけわしくして、追求を続けてくる……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

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