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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 93 これはデートではない……はず
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93 これはデートではない……はず

 潮浬と二人、車に乗って街へと買い物に向かう。


 ……俺は行き先を知らないから多分街だと思っているけど、いくら潮浬でもこのまま人気ひとけのない所に連れ込んで……とかはないよね? ないよね?


 若干の不安を覚えながら外の景色を見ていると、車は高速道路に乗ってスピードを上げる……あれ?


「……あの、潮浬さん。俺達どこに向かってるんですかね?」


「買い物ですよ」


 それは知ってる……いや、そこを再確認できてちょっと安心した。


「そうじゃなくて、場所。これ高速道路だよね?」


「ああ、そちらですか。京都の郊外です。そこにこういう場合に適した店があるのですよ」


「こういう場合って?」


「お忍びのデートです。普段は撮影などに使う場所で、百貨店だったりデパートだったりショッピングモールだったりと色んな内装を詰め込んだ施設ですが、予約を入れれば人目につかずに買い物をする事もできるのです」


「……映画のセットみたいなもの?」


「その認識で大体合っていますよ。商品はちゃんと置いてありますからご安心を」


「なるほど、アイドルが男と二人で歩いている所なんて見られたら困るもんね。……まぁ、潮浬の変装は完璧だから平気かもしれないけどさ。声からして全然違うし」


「お褒めに預かり光栄ですが、わたしは別に陛下との関係がバレるのを警戒している訳ではありませんよ。むしろ叶うのなら陛下をわたしの恋人として世界中に発表したいくらいですし。陛下がそういうプレイをお好みなら、ステージ上で世界に中継されている中本番行為に及んで、アイドル生命を終わらせたっていいのですよ」


「……さすがに冗談だよね?」


「わたしは100パーセント本気ですよ。陛下との子を産み育てて子孫を繋ぐという唯一の目的に比べたら、他のあらゆる要素は些末さまつな事です」


 ……いくらなんでもとは思うが、目が本気なのがとても怖い。

 そんな事したら潮浬の大ファンである笠井がショック死してしまいそうだ。


「とりあえず、俺にそんな趣味はないから遠慮しておく……」


「そうですか、それは残念です……。ええと、陛下がどんなプレイをお好きかって話でしたっけ?」


「いや、なんで人目を避けて買い物に行くのかって話」


「ああ、そうでしたね。陛下、今日のわたしの服装を見て何か気付きませんか?」


 潮浬はそう言って、立ち上がって両手を広げて見せる。


 肩があらわになっていて、脇の下まで見える開放的な上着。すそも短くて、おヘソがチラリと見え隠れする。そして短いスカートに、足の指まで見えるおしゃれなサンダル……。


 かなり露出が多めだが、家ではいつもこんな格好をしているので特に変わった所はない。外出時やテレビに映る時にはイメージがあるからか、露出を抑えた服だけど……あ。


「そういえば、外に出るのにそんな薄着なのって珍しいね」


 俺の答えに、潮浬は嬉しそうに顔をほころばせる。


「気付いていただけて嬉しいです。陛下以外の男に肌を見られるのなんて嫌ですから、外出はもちろん仕事でも布面積の少ない衣装は断固断っているのですが、今日はせっかく二人きりの初デートですからね。服もこだわりたいなと思ったので、男の目がない場所を選んだのです」


 言われてみれば、潮浬と知り合ってからテレビで潮浬が映ると目を留めるようになったけど、いつもロングスカートやロングドレス。たまに和服だったりで、いわゆるアイドルっぽい服を着ているのは見た事がない。


「……でもさっき、世界中に中継されてるステージの上で本番行為に及んでもいいとか言ってなかった?」


「それは単純な比較で。陛下以外の男に肌を見られる嫌悪感よりも、陛下と繋がる幸福の方が勝るので問題ないのです」


 ……むしろ問題しかない気がするが、今は置いておこう。


「でもいくら貸切にしても、店員さんには男もいるでしょ?」


「その点はご心配なく。今日は若手の女優や事務所所属者から女だけを選んで、店員をお願いしてあります。関係者ですからお忍びデートの秘密も守られますよ……わたしとしては、そこはどうでもいいですが」


 ――そういえば、さっきからデートじゃないって突っ込むのを忘れていたな。

 これが既成事実化と言うものだろうか……恐ろしい。



 俺がちょっと呆然ぼうぜんとしていると、潮浬が言葉をかけてくる。


「陛下。少し早いですが昼食にしませんか? 実はわたし、お弁当を作ってきたのです」


 そう言いながら、嬉しそうに包みを取り出す潮浬。


「あれ、ごはんは付き合ってもらうお礼に俺がおごるって言わなかったっけ?」


「食事をご馳走していただけるとは聞きましたが、今日のとはうかがっておりません。もし願えるなら後日、陛下のお手製おにぎりとか食べてみたいなと思うのですが、お願いできませんでしょうか?」


「おにぎり? そのくらいなら別にいいけど、そんな事でいいの?」


「はい、もちろんです! 他の者が作ったどんな豪勢な料理であっても、陛下が手ずから握ってくださったおにぎりとは比べるべくもありません。陛下は『そんな事』とおっしゃいますが、千聡がいる所でお願いしたら『そのように恐れ多い事!』とか言われて止められるに決まっています」


「ちょ、潮浬顔近い顔近い……」


 身を乗り出して、キスでもするかのような距離まで食いついてくる潮浬をなだめ、なんとかソファーに戻す。


 そして潮浬の声真似は相変わらず上手いな。一瞬本物の千聡の声に聞こえたし、台詞もいかにも言いそうで。光景がありありと目に浮かんだ。



「……と言う訳で、今はこれをお召し上がりください」


 潮浬はそう言いながら楽しそうに包みを解き。中からかわいらしい二段のお弁当箱を取り出した。


 一段目にはご飯が。それも桜でんぶでピンク色のハートが描かれたご飯が詰められていて、二段目にはいかにも女の子らしい。いろどり豊かなおかず類が詰められている……うん、これ完全に恋人弁当だよね?


 これを食べたらもうデートじゃないと言っても通用しなくなる気がするが、かといってせっかく作って来てくれたのに食べないのは申し訳ない。それに、なによりもったいない。


 ……これはもう、俺は完全に潮浬の術中にはまっているのだろう。


「じゃあせっかくだから……」



 そう言って俺は、もう逃れられない事を悟りながらお弁当に箸を伸ばすのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

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