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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 94 せめて心の中だけは
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94 せめて心の中だけは

 千聡の誕生日プレゼントを買うために、潮浬と買い物に出かけた土曜の昼。


 それがなぜか着飾った潮浬の手作り弁当を食べる事になり。もうデートじゃないと言っても1ミリの説得力も持たない状況になってしまったが、せめて俺の心の中でだけは。これはデートではないと強く思い込む事にする。


 そうでないと、なんか浮気をしているような罪悪感に襲われてしまうのだ……。


 もっとも千聡とは付き合っている訳じゃないから、浮気以前の問題なんだけどね……。



 ……それはともかく。俺達は目的地に到着して車を降りる。


 着いた場所は広い駐車場を備えた大きな建物で。いかにも郊外のショッピングセンターといった外見だ。


 駐車場には少ないが車も停まっているし、よく手入れがされていて普通のお店となにも変わらない。


 違うのは店名が表記されていない事と、お客さんの姿を全然見かけない事くらいである。


 定休日のショッピングセンターという感じの建物に入ると。中は普通の店とは違っていて、一・二階はショッピングモールのような吹き抜けの店舗街。三階は昔ながらのデパートのような売り場で、四階は百貨店のようなちょっと高級感漂う内装になっている。


 他に、屋上にはちょっとした公園もあって。色んなシーンの撮影がここだけでできるようになっているらしい。


 潮浬が大まかに中を案内してくれたが。店員さんは本当に女性ばかりで、しかも女優の卵や事務所所属の人達と言っていただけあって、みんな美人ばかりだった。


 ……そして、俺と潮浬を見る目がなんか鋭い。


 潮浬は変装しているからバレていないと思うが、俺達の正体を探ろうとしているのか。


 あるいはこんな所を貸し切れるのはお金持ちだろうから、人脈を作って仕事に繋げようとしているのだろうか?


 ……実際ここを一日貸し切るのって、おいくら万円くらいかかるんだろうね?

 それに店員さん役の人達の日当も……。


 そんな事を考えながら案内を受けていると。となりを歩いていた潮浬の指が俺の手に触れ、そのままうように小指を絡めてくる。


「潮浬?」


「まだ恋人同士ではないので手を繋ぐのは自重しておきますが、小指だけはお許し願えませんでしょうか?」


 ――さっきまでと一転して、しおらしい声。ギャップと言うか、かわいらしさみたいなものを感じて、思わず心臓がドキリとしてしまう。


 でも小指を絡ませて歩くのって、むしろ手を繋いで歩くより恥ずかしくないだろうか?


 ……だが上目遣いで見上げてくる潮浬のうるんだ瞳にはあらがえず。結局小指を繋いで歩く事になった。


 潮浬はごきげんな明るい声に戻って、言葉を発する。


「それで、本日購入のプレゼントはどのようなものをお考えですか?」


「あ、そうだったね……ええと、女の子が喜びそうなものって正直よく分からないから、そこからアドバイスもらえるとありがたいかな」


「なるほど、了解しました。……まぁ、千聡の事ですから陛下からいただいた物ならペットボトルのキャップでも感激するでしょうが。それは別として、陛下の方も『贈った』感があるものがいいですよね」


「う、うん……あ、それとあんまり予算がないから。あまり高くないものだとありがたいかな」


「そういえば、結局千聡に資金を提供させなかったのですね」


「そりゃあね。千聡から貰ったお金で千聡へのプレゼントを買うって、おかしいでしょ?」


「……わたしは全くおかしいとは思いませんし。わたしが差し上げたお金でわたしにプレゼントを買っていただいたら死ぬほど喜びますが、とりあえず今は陛下のお考えを尊重いたしましょう。……ちなみにわたしから貰ったお金で千聡へのプレゼントを買うのは、アリだったりしますか?」


「それも違和感あるかな。て言うか、女の子からもらったお金で違う女の子へのプレゼントを買うって、やってる事が完全にタチ悪い二股男だよね?」


「わたしは本人達が幸せならそれでいいと思いますけどね……好きな人から必要とされるのって、すごく嬉しいですよ」


「いやでも、お金なんてもらう理由がないじゃない」


「『主君だから』ではいけませんか?」


「……俺あんまり魔王とか詳しくないんだけど。普通は王が部下に領地とか俸禄ほうろくとかを与えるもんじゃないの?」


「それはケースバイケースですね。下賜かしされる場合もあれば、上納する場合もあるでしょう……とりあえず陛下の心境は理解しましたので、御心みこころに沿うように対応いたしますね」


「うん……」


 潮浬は一旦立ち止まってフロアをぐるりと見渡すと、文房具店へと俺を連れて行く。


 モデルさんかなと思うような長身の店員さんが、『いらっしゃいませ』と言って丁寧に頭を下げてくれる……。



「これなどいかがですか?」


 潮浬がそう言って渡してきたのは、多分小学生向けだと思う犬のシール。小指のツメくらいの小さい犬が色んなポーズをとっていて、一枚の台紙に10匹以上いて198円というお値打ち価格だ。


「……ちょっと子供向け過ぎないかな?」


「そうですか? わたしはとても良いと思いますよ。まず小分けにできるのがいい。『せっかく魔王様に頂いたのだから、使いたいし使っている所をお見せしなくては』という気持ちと『魔王様に頂いたのだから大切に保存しておきたい』という気持ちを両立できます。そして小さいですから、よく使う小物。スマホやノートパソコンなんかに貼ればいつでも一緒で、暇さえあればながめる事ができます。さらに、モチーフが犬というのもいい。犬は主人に忠実ですからね。千聡がなりたい自分を存分に自己投影できる事でしょう」


 ……予想外に色々考えられていた事に、思わずちょっと感動してしまう。


「なるほど……でも、誕生日プレゼントに198円ってのはちょっと安すぎないかな?」


「陛下は千聡が贈り物の価値を金額で量るとお考えですか? あの子は高価なものが欲しければいくらでも買えるだけの財力を持っているのに、私物は全部実用性だけを考えて揃えていますよ」


 ――言われてみれば、なるほど千聡はそういうタイプだ。


 プレゼントの金額を気にするのは、そこを気にする人だと思っているという事になるので、逆に失礼かもしれない。


 さすが潮浬。千聡の事をよく理解している。


「わかった、じゃあこれにするよ」


「はい、それがよろしいかと」



 ……こうしてプレゼント選びはあっさりと決まり。会計を済ませて店を出る。


 大きな店を借り切ってもらったのに買い物が198円とか。ちょっとどうかと思わないでもないが、まぁこれは一万円だったとしても大差ないだろう。


「潮浬、今日は付き合ってくれてありがとう」


「どういたしまして……夕食には帰る予定ですがまだ早いですね。陛下、せっかくですからどこかに寄っていきましょうか」


 …………あれ? もしかして俺って、どっぷり潮浬の術中だったりする?


 千聡へのプレゼント選びを最短で終わらせて、デートを続行。

 それって完全に潮浬の思惑通りなのでは?



 俺は背筋に冷たいものを感じつつ。また小指を絡ませてくる潮浬に引かれるように、後をついていくのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

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