Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~ - 焔の大盾
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
3章 聖なる山に向けて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/42

焔の大盾

 焔刃の焔が空気を炙りあげるようだ。

 それは俺の気持と連動し、強い心を描き出す。

 しかし盛り上がる気持ちとは裏腹に、不平の声を奏でている場所があった。


「ちょっと腹……減ってきたな」


 それは自分の腹の虫だ。

 この焔刃の能力を使うことで、腹減りバロメーターが減っていくということ。

 つまりはMPシステムなんだけど、いまいち俺の中で掴み切れていない。


(まだまだ倒れてしまうってことは無さそうだけど。強い力を使ったらわからないな)


「へい! 相棒。こうなったら一気に行ったれぃ!」


 チラッと肩に乗ったグリューンに目を移す。

 ボクシングのファイティングポーズを取りながら、嬉しそうに頷いている。

 焔刃を信じるしかない。


「エレノール! サポートに回ってくれ。フィリナ、ベルガ! 一気に古代狼を叩き切るぞ」


 焔刃を構える。

 息を腹の底に入れ込むようにして溜め込む。

 さっきランガンを炙り切ったようなイメージだ。

 強い焔が生まれ出されることを願うんだ。


「させはせぬぞ!」


 しゅるしゅると凍てついた風を切り裂くような速さで触手が伸びてくる!

 先端が槍のように尖り、そのギザギザが体を引き裂かんと伸び縮みを繰り返す。


『ガキィィィン!!』


 ベルガがまるで大斧を小枝のように軽々と扱いながら、素早く触手をいなしていく。


「ワシの身体に棲みつき、好き勝手しよって! 心の隙間に付け入るとは言語道断!」


 フィリナも伸びてくる触手を拳に込めた魔力で弾いていく。

 エレノールの次の詠唱が凍り付いた世界に響き渡る。


敏捷性向上(アジリティ)


 俺達の身体が淡い翠色の光で包まれた。

 それはまるで、背中に強い追い風が吹き抜け、一気に自分の身体を押し上げるような感覚。軽い! 体がふわふわと浮いているようだ。


「直接魔導が効かなくても、やりようはいくらでもあるわ」


 エレノールの声に古代狼の舌打ちが重なる。


「こざかしい魔導師め」


 にやりと奴がその真っ黒い瞳で笑った。

 何かをする気だ。

 俺は焔刃の剣先を奴に向け、一気に間合いを詰める。

 自分に向かって飛んでくる触手は、全てベルガとフィリナが受けてくれる。

 取りこぼしを左右に摺り足で躱す。

 遅い!


「突く!!」


 風に乗るように、一気に焔で喉元を刺し貫くように!

 だがそれは奴の強靭なる前足の爪で防がれる。

 焦げるような臭いが立ち込める。

 やはり……焔刃の攻撃は効くんだな!


 そう思考した刹那。

 古代狼の、雪崩を引き起こすかと思われるほどの大きな咆哮が響き渡る!

 傍にいたフィリナやベルガがたまらずに耳を押さえる。

 俺の耳はグリューンが咄嗟に抑えてくれていたが、そうなるとグリューンが自分の耳を押さえられない訳で。くらくらと頭を回している。


「はははは! 我が配下のアイスウルフを呼び寄せた。あと半時とせずにこの村に駆けつけてこようぞ。どうする焔刃の使い手よ」


 狼の顔の中央のひとつ目が得意げに笑った。

 しかし。

 俺は奴のその瞳に突きつけるように、焔刃を構えなおす。

 軸足にゆっくりと力を込める。


「だってさ。どうするフィリナ」


 フィリナの両手に纏われし魔力が更に輝きを増す。


「半時もせずにということは、まだ半時の時間があるということね」


 フィリナが意味ありげに奴の言葉を言い直す。

 ベルガが大きく頷く。

 俺達がまったく焦る様子を見せないことに、古代狼が明らかに狼狽する。


「そうだなフィリナ。お主の考えた通りだ。半時もあれば充分だな!」


 ベルガの両足の筋肉が通常の二倍ほどに膨れ上がる。白い体毛は全て逆立ち、分厚い鎧を着こんでいるかのように錯覚を起こす。


「女神シャウザ・ニークよ! 我に力を。かの者を地に伏せ、死の淵に誘う事を許し給え」


 祈りの声が響き渡った。


「き、貴様ら! まさか半時もあれば我を倒すことが可能などと、そんなことを考えているのではあるまいな」


 ベルガとフィリナは何も答えない。

 エレノールが口笛を吹いて自分の短杖を下ろした。

 ミンミがカバンの中に欠伸をしながら顔をうずめる。

 それが合図だった。

 ベルガの足の筋肉が激しく脈動し、一気に古代狼との間合いを詰めていく。

 それはフィリナも同様だった。

 エレノールの増幅魔法によって風のような速度で懐に飛び込む。


「こしゃくな! これでも喰らえ!!」


 目の前の古代狼が二人目掛けて口を開ける。

 そこには霧のような、紫色をした毒素が集結しつつあった。

 しかしそれも俺には計算済み。

 にやりとグリューンに目線を投げかける。

 そう。すでに頭の中で思いついていた言葉を空気中に吐き出した。


焔の大盾(ファイア・シルト)!』


 フィリナとベルガを包む、真っ赤なドーム状の透き通るような壁。

 それは古代狼の発した凶悪な毒素の息を真っ向から受け止めた。

 大気が焦げ付くような嫌な匂いが辺りに立ち込めた。


「バカな! 我の毒息を受け止めただと! ありえん!!」


 その奴の一瞬の硬直を二人は見逃さなかった。

 ベルガが大きく跳躍し、古代狼の大きなひとつ目に粉砕の斧を振り下ろす。

 フィリナがありったけの息を吐き出し、みぞおちに拳を叩きこむ。

 苦悶に歪む狼の顔。

 うめき声が降りしきる雪の勢いを一瞬鈍らせたようだ。


「トラジ! 今よ。奴の魔力壁の硬度が弱まっているわ!」


 エレノールの緑色の瞳が更に色濃く映りこむ。

 よし、頃合いだな。


「焔刃。俺に力を貸してくれ」


 優しい微笑み。

 それは刃なのか女神なのか。

 軸足に少し後に引き、吐く息を力に変える。

 エレノールの魔導の力で、跳躍するかのように古代狼のとの間合いを瞬時に詰める。

 そのまま焔が空気を掻き切るように、焔刃が奴に向かって振り下ろされた。

 吐ききった息が凍り付いた瞬間、目の前の狼の首と胴は永遠に分かたれていた。


『……これほどまでとは。だが我を倒してもこの戦いは止まらんぞ。既にヒサメ様は全軍を率いてこの地に向かっておるのだ。この村が血で染まるのは時間の問題……』


 捨て台詞に重ねるように、斧と拳が奴の身体にめり込んだ。

 古代狼の瞳がゆるりと陰る。

 どぉぉぉんという倒れる音が、静かな雪を鈍く揺るがした。


「……腹が減ったな」


 焔刃からゆらりと光る火の粉が上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ