お説教2☆
「………ふう。行ったみたいだな」
レナを片腕でたやすく拘束したパトリシアが、ノック音の聞こえなくなった扉を見つめて、ふん、と鼻を鳴らす。
ドンドンドン!と騒がしく鳴っていた音の代わりに、バタバタとどこかに走り去る足音がほんの僅かに聞こえてくる。扉を叩いていたのはおそらく金色猫耳元王子だろう。
パトリシアは「いったん外に出ることを了承したくせに、往生際の悪いやつだったなー」と少し首を傾げている。
他人同士が共同生活を送る船内客室は、プライバシーを確保するため防音性に優れた造りになっており、ルーカの必死の訴えが室内に届くことはなかった……。
パトリシアの剛腕をレナがばしばしと叩いている。
あわてて扉に向かおうとしたレナはとっ捕まってしまい、たまたま腕の場所が悪く、口を塞がれてしまっていたのだ。
「あ。わるいわるい」
「ぷはあっ」
ようやく口と身体が自由になったレナは、ジトっとした目をパトリシアに向けた。
「さっきのノック……何か事情があったんじゃないかな? 扉を開けてあげたら良かったのに」
「だーめ。今から装備品の確認をするんだし、ここに男がいたら困るじゃんか」
「そうなの?一体、何が披露されるのかすごく気になるんだけど……」
「……まあ、問題のそれは、一番後で出すよ。私もしんどいやつだからさ……」
「ええええ」
自らが望んだお土産を頂けるというのに、パトリシアの反応を見ていると素直に喜べないレナであった。二人とも顔色が悪い。
激しいノック音で起こされてしまった従魔たちが、目を擦りながら、レナの元にのろのろと集まってくる。
床でベッドになっていたハマルがコンパクトなぬいぐるみサイズに戻ったため、錯覚で部屋がかなり広く見えた。
『おはよぉーー……』
『『ふああ。なになにー、アリスがくれた装備品の確認するのー?』』
「そうだよ」
レナが一人掛けのイスをベッドの脇に持ってきて座り、まだ半眠り状態でウトウトしているハマルを膝の上に乗せる。リリーは主人の肩の上にちょこんと腰掛けた。
パトリシアがベッドの上であぐらをかいて、マジックリュックを手に持つ。スライムたちは興味深そうに、リュックの隙間から中を覗き込もうとしている。
『『わ。まっくら!』』
「ふたりとも落っこちるなよー。この異空間の中には空気がないらしいから、生き物にはつらい環境だぞ」
『『窒息死しちゃうのーー!? やーーんっ! あ。レナ、次の狩りの作戦はこれでいっちゃう?どうどう?』』
「んー。敵対した相手によるかなぁ。でも、今後の参考にさせてもらうね。アイデアありがとう」
『『わーーーい!』』
「おっそろしい教育方針だなァ……こうやって、従魔たちの思考がどんどんレナ式に染まっていくのか……」
モスラによる、エンペラー・クラーケンの脳みそ搔き出し空中殺戮シーンをがっつり目の当たりにしていたパトリシアは、思い出し吐き気に襲われてしまった……。
あの空中戦でのしがみつきはもう二度と体験したくない、とうんざり考えている。そこなのか。
大変な思いをさせられたのだし、夕飯では例のイカをこれでもかと食してやらねば気が済まない!と、ここで思考を一区切りさせた。グロさはトラウマになっていないらしい。
▽パトリシアの 食欲が 増進した!
レナと従魔たちがじーーっとリュックに注目しているのをちょっと面白く感じながら、パトリシアはリュックの留め具を外して、かぶせを開く。
ふっ、と遠い目になった。
「男に見られちゃマズイものに限らず、今から出してくのは全部問題ありまくりの品なんだけどなー。うはは」
「ひえっ!?」
レナがビクッと肩を跳ねさせる。
「覚悟しとけよーレナ。アリスってば、めちゃくちゃ気合い入れて呪いのアイテム探してたから……やばいぞー」
「私が頼んでたの、赤い魔法装備なんだけど!?」
「もちろん全部赤いよ。お客の希望条件をアリスが間違えるはずないじゃん。わざわざ呪いのアイテムで揃えたのは、これもアリスのお説教みたいなもんだと思ってあきらめな。きっと精神的ダメージまで計算済みだろうよ」
一体、どれだけの覚悟がいるのやら。
怖気付いたレナが逃げ出す前に、パトリシアはさっさとアイテムを出していった。どれも高性能だぞー、と一言フォローを付け加える。
「まずひとおーーつ…………」
▽パトリシアは 幾十にも封印札が貼られた ”怨嗟の鞭”を取り出した!
「ふたあーーつ…………」
「それ番町皿屋敷のやつだーー! めちゃくちゃ恐いっ!」
番町皿屋敷。
皿を割ったと冤罪を着せられ、自殺に追い込まれたお菊さんが毎夜井戸のそばに化けて出て、一枚……二枚……と皿を数える、有名な江戸の怪談話である。一枚たりなぁーーい……!
レナの例えがよく分からなかった皆がきょとんとしていたので、レナが説明すると、「ああ、故郷のね。そういえばレナはたまに聞いた事もない特殊な例えしてたもんな」とパトリシアに返されてしまった。
以前、スライムグミの味について「サイダー」と例えてしまっていたり、レナは結構うっかりが多い。
気を付けなければラナシュに余計な称号を贈られてしまいそう、と反省していた。
面白がったパトリシアが、怪談口調のままアイテムを取り出していく。
「……いつつーー……むっつ……。ん、これで全部だな!」
ベッドに並べられたアイテムは合計6品。
短期間でアリスはよくこれだけ集めたものである。人脈に物を言わせたのだろう。
アイテムを取り出す際、パトリシアは、一流の鑑定人も使用する邪気払いの手袋を着用していた。
万が一アイテムの封印が緩んでいた場合、直接触れば呪われてしまうからだ。
高価で貴重な遺物には元持ち主の怨念が憑きやすいため、一流の鑑定士たちは皆この手袋を愛用している。
呪いのアイテムは、どれもこれもあやしげな呪文が書かれた包帯でぐるぐる巻きにされており、中がどのようなアイテムなのかは鑑定書が無ければ判別すらできない。
かろうじて隙間からチラリと赤色が覗いている様が、血のようにも見えた。
レナがぶるっと震える。どれも恐皇のローブ(故)並みの怨念が宿っていそうだ……。
恐皇程度?
それならば、勝てる。
「アリスはそう判断したんだろーな。じゃ、レナ、頑張れ」
「確かに私の運は天元突破してるけども……! こんなの触るの怖いよー!」
ぐだぐだと展開を先延ばしにしていても、どの道、荷物を受け取らなくてはならない。
嫌な事は早めに終わらせておくに限る。
これから浄化されるであろう怨念たちに対して、皆は静かに合掌した。まるでお通夜のような雰囲気である。
追悼が終わり、さあ、ここからは昇天タイムだ!
「……………………………ええい!」
レナの細い指が、まず”怨嗟の鞭”と札が貼られた荷物にちょん、と触れる。ぺりっ、と包装の一部をはがした。
”ヴヴ……グアアアアアアアアアッ!!“
▽怨霊は 悶え苦しんでいる……
▽激しい怒りの感情で レナを 呪おうとした!
▽幸運による レジスト!
▽幸運の 反撃! 昇天アッパー!
▽KO!
ぶわっ!と黒紫色のもやが封印の包帯の隙間から溢れて、一瞬で儚く消えていく……。消え去る際には、ほんのりとした白い光に変化していた。
今生に執着していた魂は昇天して、救われたのだろうか?
レナはなんとなくしんみりした気持ちになる。
「お疲れさん。瞬殺だったなぁ。
えーっと、この鞭に怨念が宿った由来は……っと。かなり昔、戦争があった時代に焼き討ちされた貴族の屋敷から見つかったもんらしい。
だから怨嗟って、その時に焼け死んだ人らの無念がこもってたから名付けられたんじゃないか。
コレは宝箱に入っていたから、燃えてなかったんだって。代々鞭使いの名門一族だったから、家宝だろう……って考察されてる。
素人がこの鞭を持つと、凄惨な火事の光景を脳に直接焼き付けられて気が狂う、とんでもない呪いがかかってたらしい。
だからすっごい高級品だけど、速攻で封印が決まったって」
「そんなの持たされちゃったの!? 私、さっきかなりやばかったんじゃ……アリスちゃあん……」
鞭使いではあるが、腕前はまだまだド素人であるレナは涙目になってしまった。
「今は厳重に封印されてるんだから、触ってもまず間違いは起きないって。
そこんとこはアリスも慎重に判断してるさ。レナを傷付けたいわけじゃないんだから」
「さすがアリスちゃん。……う、一瞬だけど疑心を抱いてごめんなさい」
「おう。今のうちに謝っとけ。内緒にしといてやるから」
パトリシアがくくっと笑うと、レナは鞭を両手で持っておでこの位置で掲げ、ははーーっと敬った。
敬い対象は、アリス大商人様と故人の鞭使いの先輩方だ。
そーっと、包帯の包装を全て解いてみる。
露わになったのは、長年手入れがされていなかったのに美しいツヤを放つ、ハッとするほど鮮やかな赤色の一本鞭。
柄はまるで赤を煮詰めたような黒紅色。金の魔法塗料で複雑な模様が描かれていて、握る時に邪魔にならない程度の小さな宝石がちりばめられている。レナの小さめな手にもしっくり馴染むし、鞭部分のしなりも最高の状態。
呪いのアイテムは原価よりかなり安く取引されているそうだが、これはさぞ高価だっただろう。
原価など考えただけでも恐ろしい。
これほどの品を頂いたからには、運動神経が悪い、と言い訳している場合じゃない。有効活用しなければ、とレナは生唾を飲み込んだ。
「……今回の海上の戦闘では、私、守られてばかりで何も出来なかった。だから、これからはもっと頑張って、鞭の練習もする!私だって仲間を守りたいもん」
きりりと表情を引き締めて、言い切る。その眼差しには愛情が溢れていた。
「おう、張り切ってんなー。えらいぞ。
でも、従魔たちは確かに幼い希少種だし、ヒト姿も美形だから狙われやすいけど、主人に守られるほど弱くねーだろ。
何も出来なかった、って言うけどさ。レナはそもそも”魔物使い”なんだから、魔物を使役して戦う今のスタンスでいいんだぞ? ……その顔、納得してねーな。強情なやつ……」
「だって。皆の事が大切だし」
『『ああーーん!レナ様ぁーー!あいらびゅーー!』』
『好き、好き、大好き……!』
『従えてぇーーっ』
▽レナは 魔物まみれになった!
▽主従の 絆が 深まった。
「み、みんな!応援ありがとう……!私、頑張るからね!」
『『『『ほどほどにね!』』』』
張り切る主人に対する従魔たちの返事は、満場一致で”無理すんな”だった。
これでもかと注がれる愛情はとても嬉しいが、主人のドジっ子具合はよく把握している。
頑張りすぎた結果、怪我をしてしまいそうでとても心配だ。
自分たちは十分強いから、守られるより、今以上に頼ってもらいたいくらい。レナが落ち込みそうなので口には出さないが、従魔たちはこのように望んでいる。
まだ幼いとは言え、レナに見せていない強かな一面だって持っている。
ヒト族としての前世を持つクーイズなど、あざとさには特に定評がある。
『『レナが一人で抱え込まなくても、みんな一緒に頑張ればいいのよーー!仲間なんだもん、ね?
従魔たちにだって、見せ場は欲しいもん。頑張るから、レナにいっぱい褒めてほしいのー!』』
「上目遣い可愛すぎるよ!もう最高!……そうだね、ごめん、ちょっと暴走してたかも。……みんな一緒に、だよね。
焦らず、鞭はほどほどに頑張る事にします」
『『それがいいよー。一緒にゆっくり強くなっていこうー?』』
頑固な主人の心のツボを上手くくすぐって、クーイズはあっけなく思考を望ましい方向に誘導してみせた。ゆっくりってなんだっけ。
レナの変わり身を見たパトリシアが肩を震わせて、こっそり笑いを堪えている。
レナが持ち直した所で、怨念の昇天作業に戻ろう。
「次はこれ。”究極のビスチェ”。
とにかく服が大好きだった婦人が、大富豪の夫に離婚を申し出られるくらいに財産をつぎ込んで作った特注品。
届いた品を着用しようとした所で見つかって、そのまま追い出されたから、一度も着用できずに生涯を終えて、めちゃくちゃ悔しかったんだろう。
すんごい怨霊になって取り憑いてる。
えーと、これを着ようとした婦人の腰を締め付けまくって殺す呪いがかかってるって。うわあ」
「えい」
”ギィエエエエエエエ……!!”
▽幸運の 昇天アッパー!
▽怨霊を KO!
婦人の霊はおぞましい声を残して、強制的に成仏させられてしまった。
さくっと手を触れたレナはもう吹っ切れている様子。
呪いのアイテムはまだまだある。
あとでまとめて包帯を解くとして、さくさく進行していこう。
「これは……出処は不明だな。”呪いのフリルワンピース”。
呪いのアイテムって、いつの間にか裏市場に流されていたものが多いんだよ。
さっきの皿屋敷の話で例えると、お菊さんに罪を被せたやつってバツが悪いわけだろ。お菊さんの遺品なんかを売り払う際に、出処や事情をごまかしたりもする。 そーゆーこと。
単純に”呪いの”って名称が付けられてるやつはだいたいそういう事情持ちだな。
じゃ、触ってみて」
「そりゃ」
▽幸運ビンタ!
▽怨霊は 昇天した!
「次。”呪いのロング手袋”」
▽幸運キック!
▽怨霊は 昇天した!
「”呪いのブーツ”」
▽幸運ボディブロー!
▽怨霊は 昇天した!
もはや流れ作業である。幸運さん無双が止まらない。
「お見事! じゃ、これで最後だなー。”愛のハイヒールパンプス”」
「愛?」
『踏まれたい……』
ハマルがうっとりした目になったので、レナはバスローブを頭に被せておいた。冷静になってほしい。
「これにはちょっと特殊な由来があるんだよね。
昔々、ある所に、とても優秀な靴職人がいた。その腕を買われてどこぞの女王の専属職人になったが、あまりにも素晴らしい靴を作るので、彼の作る靴を独り占めしたくなった女王は、靴職人を城の地下に監禁して、自分のためだけに靴を作らせ続けた。
その職人はいつかは家に帰れると信じて頑張ってたけど、身体を壊して、城で秘密裏に処刑されることになった……。
手にかけられるくらいならいっそ、と自殺しちゃったんだけど。
その人が最後に作った靴が、このパンプス。
職人には娘がいた。妻とともに家に残してきた幼い娘が、成人を迎えた時の光景を想像してパンプスを作ったんだ。
赤色が好きだった娘のために、とびきり上等な赤の魔物皮で。ドレスを着こなす淑女にふさわしいハイヒールパンプスを。
職人の出身地では、裕福な家庭に嫁入りできるようにって、成人女性にハイヒールの靴を贈る習慣があったそうだ。
靴のサイズが分からないから、どんな人が履いてもピッタリになる魔法がかかってる。辛い話だよなぁ……。
んで、当然そのパンプスが娘の手元に渡ることはなかった。
職人が亡くなって、小部屋を掃除した際にパンプスが見つかったと聞いて、女王は大喜びしたそうだ。
いざパンプスを履いて歩こうとした時、呪いが発動して……足を滑らせて頭を打って死んだ。
その女王はかなりの嫌われ者だったから、遺品は親族の手で売り払われて、使用人を介して呪いの由来が判明したとか」
『それで……愛の、ハイヒールパンプスなの……』
『不純ですみませんでしたー……』
「そうなんだ。そんな大切な品を私が所有していいのかなぁ……昔の話なら、もう娘さんに履いてもらうことは叶わないんだろうけど。パンプスに憑いた靴職人さんの念まで浄化しちゃうわけだし……」
「このアイテムに関しては、アリスから伝言を預かってる。
”レナお姉ちゃんの運で、靴職人さんの霊をもう解放してあげて。怨霊で居続けるのだって辛いはず。あの世で娘さんに再会できたらいいね……”だって」
「アリスちゃんさすがすぎる……!
そ、そうだよね。もともと優しいお父さんだったんだし、怨霊のままこの世に囚われてるなんてあんまりだよね……。よし。昇天して頂こうか」
「それがいいよ」
皆は苦笑して顔を見合わせて、一際しっかりと封印包装されているパンプスに注目する。
「……いくよ」
レナが、靴職人の心の平穏を祈りながら、そっと封印の包帯に触れた。
ゆっくり包帯を解いてくと、隙間から黒紫色のもやがどばっと溢れ出てくる。
もやがゆらりと揺らいで、柔らかい光へと変化していく様子を見て、どうか救われますように、と皆で強く念じた。
レナの幸運もさすがに自重したようで、早く向こうにいっちまいな親父さん!と背中 (イメージ)をバチンと平手打ちするに留めたようだ。
▽怨霊は 昇天した。
全ての呪いのアイテムの浄化が完了した。
封印が解かれた赤いアイテムの見た目について、簡単に説明しておこう。
・究極のビスチェ……莫大な費用が投入され作られた、最高級のビスチェ。
身体のラインが美しく見えるよう計算され尽くした設計、随所に施された優美な装飾が女性らしい魅力を極限まで引き出す。
素材は幻獣ユニコーンのなめし皮など。[魅力強調]の魔法がかけられている。
・フリルワンピース……出処不明。重ね着を前提として、上半身はすっきりしたデザイン。スカートは前が短く後ろが長いフィッシュテールシルエット。幾重にもフリルが重なったふんわりボリュームが存在感抜群。
・ロング手袋……出処不明。上品な光沢のある淑女の手袋。シンプルで細身。
・ブーツ……出処不明。ふくらはぎまでを覆う編上げ型のブーツ。ローヒールで底が厚く、歩きやすい。赤のリボンがポイント。
・愛のハイヒールパンプス……腕の良い靴職人が、愛娘の幸せを願いながら作り上げた家族愛のこもったパンプス。
艶やかな赤色の魔物皮が使用されている。細いハイヒールは約10cmもあるが、転ばず歩けるように[身体能力補正(微)]の魔法がかけられている。
このような感じ。
いろいろな組み合わせが楽しめそうだ。
出処不明アイテムの追加効果は分からないので、また後ほどルーカに確認してもらおう。
恐皇のローブと比較すると、付与されている魔法効果がささやかに感じるが、アリスは今回、デザインと着心地を重視してアイテムを選んだらしい。
[透視]スキル持ちの商人と組むことで、包帯まみれの中身も抜かりなく確認している。
”祝福の装備”となった時点で何らかの追加効果が発動するだろうし、と考えたようだ。
幼女にしてこの手腕、末恐ろしい。
ベッドに並べられた赤色装備を、レナがしげしげと眺める。
「見事に真っ赤な装備ばかりだねぇ。私が頼んだんだけど。これを一度に全部装備するとなると……うーん、街中を歩くには目立ちすぎるなぁ」
『赤の女王様が目立つのは必然?』
『ふぉっふぉっふぉ。運命運命』
「やめて!」
「普段は普通の服と適度に組み合わせたらいいじゃん。
フルコーディネートするのは緊急時だけ、って決めておいてさ。
高価な装飾保存ブレスレットを買えば、何通りにも着替えられるし。クリーニング機能ついてるのもあるらしいぞ」
「そんなのあるんだ! 便利だねー。でも、さぞお高いんでしょう?」
「ここでコレの出番ってなー。金貨ー」
「ひゃーーーーっ!!?」
▽パトリシアは ずっしり膨らんだ金貨袋を取り出した!
▽レナに 渡そうとした。
▽レナは 受け取り拒否!
▽拒否権などない。リュックに放り込まれた。
がっくり項垂れたレナが、受け取るからもう一度袋出して、確認させて……と懇願する。
みっちり詰まった金貨を見て冷や汗を流す。
「な、何これぇ!? 確か、金貨って貴族か大商人くらいしか使わないって聞いた…………大商人……」
「大正解。アリスがこれでいい装飾保存ブレスレット買えってさ。
あ、これスチュアート家の紋章入り身元保証書な。それがあれば高級店でもきちんと対応してもらえるはずだぞ、失くしたら大騒動になるから保管はしっかりしときなよ」
「……等価交換、だよね。この金貨袋の対価は……?」
「さすがに、こないだのスタージュエルだけじゃ足りないそうで」
パトリシアは笑顔で、レナに手のひらを差し出した。
まるで闇業者の取り立てのようだと、レナは思った。
どの道使い所のなかったスタージュエルを大人しく渡した。
「うし。これで用事の半分は終わったぜ。……そんな目で見ないでくれよ、私だって金貨だの宝石だの運ぶのは負担なんだから。
ったく、レナやアリス相手じゃなきゃこんな仕事絶対請け負わないし!花屋であって、運搬業者じゃないんだけどなぁ。……あ、これは私からレナに」
立派な運搬業者である。ついでのように渡されたお届け物は……
▽レナは 超速 鈴生りミニマッチョマンの種を 手に入れた!×3
大人しく受け取っておいた。
それでは、男性には見せられない例の荷物の確認に移ろう。