Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
夜行さん - 決戦 6
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜行さん  作者: 原月 藍奈
人喰いの屋敷編
51/66

決戦 6

夜行さん視点です

―夜行さん視点―



 ぴーちゃんが少し先頭を飛ぶ。その後を着いていくが、なかなか退治屋と会わない。全ての部屋を見ているから、見逃したという可能性はない。もしくはエレベーターを使ったかだが。山本さんを追ったのならエレベーターは使わないだろう。


 ……上の階に行ったのか。


 一周回り終わって、地下二階へと続くエスカレーターに乗る。


 それにしても人がいない……。いくら夜とはいえ、客の一人や二人いそうなものだが。そのせいなのか。妖怪の気配は感じないものの、空気がどこか暗い。


 地下二階まで上がって、いくつもの美術品を通り過ぎる。と、一際大きい展示室に出た。飾られている作品は『最後の晩餐』だ。


 俺は慎重に中央に歩いていく。頭にあるのは天狗のことだ。


 ここが天狗が襲われた場所、か。天狗が襲われたのは修正された絵の方だと言っていたが。


 ぴーちゃんが何事かと俺の頭上をくるくると飛び回っている。俺は対面に並んでいる『最後の晩餐』を交互に見て、修正後の方へ目を向けた。


 修正後の方が色がくっきりと出ていて、顔立ちもはっきりしている……ような気がする。


 俺はジッと鋭い視線を向けて絵に近づく。


 天狗が異様な気配がしたと言っていたが。特にしない。それどころか妖怪の気配すらしない。


「ぴい?」


 さすがに心配になったのか。ぴーちゃんが肩に止まって、首を傾げた。


「いや。何もない」


 『人喰いの屋敷』は一体どういうつもりなんだ……。襲う人、場所を選んでいるのか。


 俺はぴーちゃんの頭を軽く撫でた後、「行くか」と声をかけ、慎重に歩き出した。


 地下二階は特に問題はない。また一周回り、エスカレーターで地下一階に上がった。


「!!!」


 地下一階に上がった瞬間、空気が変わった。異様な空気が絡みついている。ぴーちゃんもその空気に気付いているのか、せわしなくバサバサと翼を広げて飛び上がった。

 俺は大刀を構えながらぴーちゃんの後を着いていく。と、ぴーちゃんがとある絵で止まった。


「『民衆を導く自由の女神』?」


 女性が旗を掲げているのが印象的な絵だ。


 俺は目をこらして見るものの、特に異変はない。異様な気配もここが一番濃いわけでもなかった。

 だがぴーちゃんはその場から離れる気配はない。


「この絵に何かあるのか」と問いかけてみる。


「ぴぃ……」


 弱々しい返事が返ってきた。どうやらぴーちゃん自身もよく分かってないらしく、なんとなくこの絵から離れがたいらしい……。


 もう一度絵に集中するがやはり何も感じない。だがぴーちゃんの気の済むまでその場にとどまってみる。

 ぴーちゃんは新しい妖怪だ。退治屋の言霊でできた珍しい妖怪でもある。俺には分からない何かを感じ取っているのかもしれない。


 だが。しばらくするとぴーちゃんは「……ぴぃ」と鳴いて、再び前を飛んでいく。


 結局はよく分からなかったらしい。俺は後ろ髪を引かれながら、ぴーちゃんの後を着いていく。

 いくつもの絵を横目に見ながら歩く。部屋を通るたびに、異様な気配は濃くなっていく。

 大刀をグッと強く握った。


 一番この気配が濃い場所は……。


 とある絵の前で止まる。


「ここか」


 誰でも聞いたことがあるだろう。


 異様な配色をした背景。橋の上に無機質な人間が立っており、両手で頬を抑えながら大きな口で何かを叫んでいる。


 ――――ムンクの『叫び』だ。


 説明文には人間の不安や恐怖、絶望を現す、と書いてあった。


 俺は説明文をチラリと見てから、素早く大刀を絵に突き刺した。陶板なので硬いが、力押しで貫通させる。


 もう一押し。


 グッと大刀を深く突き刺してから、一気に引いた。


 大刀で刺した穴から黒い影が出てくる。


「……」


 俺はなるべく絵画から距離を置く。


 天狗は足元からも影が出て攻撃されたと言っていた。


 足元に注意しつつ、大刀をしっかりと握る。黒い影は何故か俺を攻撃することなく、目の前で漂っている。


 さぁ、どこから来る…………。


「――――り、な」


 黒い靄から何やら声が聞こえる。

 俺は黒い靄に目を凝らす。


「――久し、ぶり、だ……な」

「!」


 その声にはっきりと聞き覚えがあった。


「一体、どういう……」


 そう呟いた瞬間、黒い影に足をグイッと掴まれた。


「!」


 声に気をとられて油断してしまった。


「ぴい!」


 すぐさまぴーちゃんが助けに入る。ぴーちゃんは黒い影を嘴でつつく。黒い影は一瞬怯むが、すぐに足を締め上げてくる。


「クソッ」


 俺は大刀を足元の影に突き刺すが、全く効いていない。それどころか。


「お前、は……。相変わらず、だ、な」


 黒い影から、いや、美術館全体からアイツの声が聞こえてくる。

 俺は鋭い視線を目の前に向けた。黒い靄がどんどんと俺に近づいてくる。黒い靄は徐々に人型に変形していく。

 やがて黒い影は一人の人物をかたどって、白い手を俺の肩に伸ばした。


「ここは、安全、だぞ。ずっと、ここにいる、のも……悪くないんじゃ、ないか。――夜行さん」

「お前……」


 その瞬間、体が床にのめり込んでいく。床には黒い穴が開いていた。いつの間にか黒い影は俺の体全体に纏わりついている。


「お前、一体どういうつもりなんだ。…………田中(たなか) 明愛(めあ)()


 体が徐々に黒い穴に引っ張られていく――。その刹那、眼鏡をかけた男の人がわずかに視界に入った。


ここまで読んでいただきありがとうございます。レビュー、感想書いてくださる方、いつも励まされています。


主人公の陽に引き続き、夜行さんも大ピンチです。果たしてどうなるのか……。ご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ